第8話 陽子、コンビニの本社勤務
「東野さんのおかげで売り上げが伸びて本当に助かっているよ」
「そうですか、それは良かったです。でも私も余り若くないし、いつまでバイトしている訳にも行かず転職を考えている所なのですよ」
「それは困る、君には何度も助けられた。君みたいな優秀な人間を手放したら私が首になるよ。ここの店舗はフライチャズ店と違い本社直属の店舗で言わば模範となる店舗なのだよ」
「はぁそれは知りませんでした。まぁどちらにせよバイトと言う訳には行きません」
「それならどうかね、我が社の本社勤めは」
「ええ~~私がですか?」
「そうだよ。弁当の件だってそうだが君の後押しがなかったら本社にも掛け合ってくれなかった。君のアイデアは凄いよ。弁当だけでなく色んな事を提案してくれたじゃないか。本社でも誰がこんな企画を思いついたのかと、問い合わせがあってね。出来れば本社に来て欲しいそうだ」
なんかおかしな方向に話が進んで行った。まぁ正社員になれるならと陽子は本社に赴いた。
本社に行くと総務部に案内された。流石は日本でも有数の一流企業。貸しビルではなく自社ビルで三十階建て、いったい何千人の人が働いているか。こんな所に務めるのかと思うと武者震いがする。出迎えてくれたのが総務部長、あの店長とは違い貫録がある。普通の人なら萎縮してしまいそうだ。だが陽子は違う、元々物怖じしない強気の性格である。
「やあ君が東野陽子さんか。店長から聞いているよ」
「いいえ、特に褒められる様なことはしていません」
「いやいや奇抜なアイデァを次々と生み出しているそうじゃないか」
「それは光栄です、それで私の仕事はなんでしょうか」
「そりゃあ営業部だよ。君の発想は面白い。是非力になって欲しい」
「お褒め頂き嬉しいのですが、私はバイトですかそれとも社員ですか」
「そりゃあ当然社員さ。それと営業部は歩合制でね。売り上げに貢献すれば給料は何倍にも膨れ上がり、但し功績を上げなければ基本給しか支払われない厳しい部所でもあるが」
それを聞いて陽子の表情が変わった。厳しい世界は当然のこと。性格は強気で言いだしたら一歩も引かない頑固な所があるから自分に向いている。望むところと意欲が湧いてきた。本社に招かれてもバイトか社員かと問う。意に合わなければ辞める覚悟が出来ている。あの失恋した時の情けなさは何処にもない。
やるからは徹底してやる。ただこれまでの割引は特例で通用しない。そもそも割引はコンビニではタブーであった。だが本社でも廃棄処分も問題があると思っていたが誰も文句を言えない。だが店長が勇気を出して規則よりも損得で考えて下さいと訴えたのだ。それを後押ししたのが陽子である。
づづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます