第7話 第二章 陽子のアイデァ

(ここから掟破りですが一人称から三人称に切り替えます)


第二章


陽子は友人を救った事で気持ちの整理もついた、さらに四人の友情も深まって失恋同盟から、とりあえず四人同盟と改めた。吉野統子は復帰出来たが陽子と他の二人は無職、新しい仕事を見つける事が先決だ。陽子はせっかく無理を言って二週間の休暇を貰ったし簡単に辞める訳には行かない。

ともあれ一生懸命働いた。コンビニの仕事は予想以上に面白く、陽子自ら数々のアイデァを出して売り上げに貢献した。そのアイデァの一つはこのコンビニの場合午後十時に賞味期限切れる弁当類が沢山出る、会社の規則で賞味期限が過ぎた物は廃棄処分しなければならない。

 勿論コンビ二が割引なんて許される訳がない、そこで陽子は店長に訴えた。

「では店長、売れ残ったものは捨てるのですか」

「仕方が無いよ。規則なのだから」

「では割引も認められないのですね。廃棄処分料も払わなければならないし、馬鹿げた規則ですね」

どうもこの店長、気が弱いのだろうか、やや小太りで顏はふっくらとしている。それに加え煮え切らない部分がある。店長も分かっていた。割引しても完売した方が儲かる事を。陽子は納得いかないと、しつこく食い下がるものだから店長も重い腰をあげたが一人では心もとない。迷っていると陽子はヒントを出した。

「店長、一人じゃ相手にされないでしょうから、他の店長数人に声を掛けたらどうです」

そこで他の店長等に意見を求めたら、やはり同じ思いのようで賛成してくれた。彼等数人と本社に出向き掛け合った。驚く事に特別に許可を得た。元々廃棄処分は問題になっていたし良い機会と思っていたらしい。但し上手く行かない場合、従来通りにすると。

そこで陽子の提案で午後九時三十分に二割引で売った。これが噂になり午後九時三十分には人が集まり十時には全て売り切れてしまった。勿論それを見込んで弁当を増やしたが、客は弁当だけ目あてで来ないから他の商品も売れるようなった。廃棄となれば廃棄処分料まで取られるが二割引の効果は絶大だった。

自然と売り上げが伸びて、これまでの売り上げ一.三倍にまで伸びた。それから半年、更に売り上げが伸びて行った。コンビニはバイトの入れ替わりが早く知らぬ間に陽子は古株にとなり店長に次いで店を仕切るようになっていた。陽子は背が高く口は達者、言いだしたら引かない強気の性格は店長でさえ逆らえない。いまや陽子の天下だ。居心地は良いがやはりいつまでもバイトは出来ない。

ここまでくれば恩義も返したし、そろそろ本職を見つけようとしていた。そんな時、店長に声を掛けられた。


つづく


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