第10話 リーダーは坂本一成と陽子

 陽子を加えた企画会議が開かれた。誰もが度肝を抜く企画で驚きの声が上がる。

まだ採用された訳ではないが、反対する者は居なかった。そこでこの企画をどう成功されるかプロジェクトチームが決定された。そのリーダーは坂本一成と陽子を含む五人で結成された。そんなある日、坂本から声を掛けられた。

「君がこの企画書を提出したそうだね。課長から聞いているよ。面白い子が入ったと聞かされていたが、確かに面白い企画だね」

「はぁそう思って貰えれば嬉しいです」

坂本は三十二才、将来の有望株らしい。そんな人に目をかけて貰える事は嬉しい限りだ。

それとなかなかの男前、まぁ天下の美女と言われる私、陽子なら釣り合うかも知れない。

 まぁそれは冗談だが、不気味な笑みを浮かべる陽子であった。

プロジェクトチームが発足されてから三週間が過ぎた。やっとゴーサインが出た。

リーダーの提案で今夜は成功を祝って飲み会が開かれた。飲み会と言うと思い出させるのが、あの日の事だった。酒に酔って箍(タガ)が外れてしまうのか、つい本音が出てしまうものだ。陽子に取って屈辱的な出来事だった。そう、以前付き合っていた元カレだ。なんとその飲み会で別な彼女が居る事が判明した。しかも目の前で一緒に飲んでいる。事もあろうに陽子と親しくしていた同僚であり友人だ。その元カレが二股掛けて居た事が分かった。陽子はもう飲み会どころじゃなかった。いきなり席を立ちと元カレの側にあったビールのコップを取り上げ頭から浴びせてやった。最後の決め台詞は『馬鹿にしないで、貴方とはこれっきりよ』陽子はこれで彼と友達を同時に失った。本当はビール瓶で頭を殴ってやりたかったが流石にためらった。そのまま家に帰り翌日に退職届を出した苦い経験がある。それがトラウマとなって蘇った。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る