第5話 パワハラ課長へ制裁作戦
「よし今日は無礼講で俺のおごりだ。じゃんじゃん頼んでいいぞ」
「課長ごっつあんです」
飲み会が始まり三十分が過ぎた頃、やがて酒も廻って来たか。次々と本音が飛び出す。酒が廻って来ると、島課長は部下の悪口を始めた。すると男子社員と女子社員は、また始まったと思った。しかし誰も止める事ができず、もはや課長の独壇場。
「近頃の若い奴は根性がなっとらん」
すると若い女性二人が本音を吐いた。
「そりゃあ課長、あれはやり過ぎでしょう。吉野統子さん大人しいから虐めやすかったですか、あれはパワハラですよ」
「馬鹿野郎。ちょっと気合いを入れてやっただけだ。あれくらいで辞めるなら根性がない証拠だ」
「でも、役立たず。お前なんか給料泥棒だなんて言いすぎですよ」
慌てた男子社員は女性二人に向かって、止めろと首を振る。
だが女子社員も一歩も引かない。男子社員が割って入ろうとしたが課長も女子社員も止まらない。
「おまえら、人におごっておいてもらっているくせに。なんだ、その言い草は首にするぞ。上司に楯突くなんて百年早いんだよ」
「それって酷いじゃないですか。無礼講って言ったじゃないですか。本当の事を言われて怒るなんて。課長のパワハラは酷すぎます」
あわてて二人の男子社員が口を挟む。
「課長まぁまぁ、落ち着いて飲みましょうよ」
「五月蠅いおまえたちは口を挟むな。黙れ! 貴様等。課長の俺に向って云う言葉か。明日から来なくって良い。ついでに懲戒解雇にして退職金も出ないようにしてやる」
この女性たちもストレスが溜まっていたのだろう。無礼講と言う言葉に乗せられ不満をぶちまけたのだ。
こりゃあ、もはやとんでもない事態になった。二人の男性もあたふたするばかりだ。酒の席とは言え暴言の数々、私達三人はニンマリと笑った。もう聞き取り調査も必要ない、バッチリ録音してある。あの女子社員も鬱憤が溜まっていた事だろう。無礼講と言われ酒が入った事で怒りをぶちまけたようだ。二人は泣きながら居酒屋を飛びした。私達三人も慌てて二人の後を追った。
「すみません。ちょっとお待ちください。先程の話の意味を聞かせてくれませんか」
「誰。貴方たち?」
「私達、吉野統子さんの友人です。彼女の話を聞き黙っていられなくて、その島課長という人に制裁を加えてやろうかと。協力して貰いますか」
二人の表情はパッと明るくなった。
「酒の席だから本当の事を言ったのです。他の人達の代弁を買って出たのです。少しは止めてもらえるかと思ったのに。まさかクビ宣言までされるとは思わなかった」
「じゃあ訴えたらどうです。大丈夫、他にも数名パワハラ被害にあっているそうですから。それと失礼ながら先程の会話、録音させて貰いました。貴方たちの悪いようにはしません。どうか協力をお願います」
「本当ですか、もし上手く行ったら解雇されずに済むのですか」
「経営者が常識の分かる人ならね……それでも課長を庇うなら、むしろ価値のない会社でしょう。こちからクビにしてやれば済むのです」
つづく
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