第16話
グレイルの声で動き出す生徒達。
各々がペアを組み、実戦形式の訓練を開始する。
「アイン、俺と組もうぜ!」
「あぁ、僕もシルバと戦ってみたいと思ってたんだ」
シルバの声かけに答えるアイン。
どうせ組むのなら、ソフィアかシルバ、ベネットの誰かが良いと思っていたので好都合だ。
シルバと組むとなるとソフィアとベネットが余ることになるが......
「それじゃベネットは私と組もうか!」
「私がソフィアさんと戦うんですか!? ムリムリムリムリ! 無理ですぅ~!」
「大丈夫、大丈夫。骨は拾ってあげるから」
「ひぃ! それ冗談ですよね? その笑顔がすご~く怖いんですけど! 冗談ですよねぇ!?」
どうやらベネットとソフィアで組むことになったらしい。
どんな戦いになるのだろうか?
ソフィアの戦いは見たことがあるが、ベネットに関しては未知数だ。
そもそもベネットは戦えるのか?
「なぁ、ソフィアって強いのか?」
「強い。少し見ただけだけど、かなりやる」
「まじかよ! そりゃ気になるな」
「僕も気になるな。少し様子を見てみようか」
アインとシルバは少し離れた位置から二人の試合を観戦することにした。
向かい合うソフィアとベネット。
ソフィアが懐から二刀を抜いた。
右手の刀を上段、左手の刀を中段に。
ケルベロスとの戦いでも見た構えだ。
構えが整うのと同時にスッと紫紺の双眼に力が入る。
まるで刃先のように鋭い視線。
スイッチが入ったソフィアはまるで別人だ。
対するベネットも急いで剣を抜き構える。
構えは一般的なラドス流の構え方。
ラドス流剣術は攻撃的なソーク流剣術と違い攻守のバランスが取れた構え方をする。
派手な技や華のある剣術ではないが堅実で応用が利く。
魔法貴族には好まれない剣術であるが、最も人口の多い流派でもある。
見つめ合う事数秒、ソフィアが地を蹴った。
振り落とすは上段の刃。
ベネットは何とか剣の腹で受け止める。
されど、攻撃は一撃にあらず。
二本目の刃がベネットのがら空きの身体を襲う。
「ひぃ~~!」
ベネットはそれを何とか回避。
仕切り直す為に距離を取った。
しかし、体勢を整える隙を与えないソフィア。
すぐに距離を詰められ対処に追われる。
ソフィアが一方的に攻めて、ベネットは攻めるに攻めれない状況。
誰がどう見てもソフィアが優勢だった。
「すげぇ攻撃だなソフィア!」
「あぁ。ベネットに攻撃させる隙を与えてないね」
「こりゃすぐに決着が着くな」
「それはどうだろう。良くベネットを見てみて」
ベネットは戦闘開始からずっと守りの構えを続けている。
それはラドス流の一般的な防御の技だ。
ベネットに剣の才能があるかと言われれば素直に頷く事は出来ない。
良いわけでもなければ、特段に悪いわけでもない。
数年ラドス流を鍛えた一般的な練度。
そう言って差し支えないだろう。
対するソフィアは一線を超える使い手。
普通に打ち合えばすぐに決着が着くはずだ。
しかし、決着は未だに着いていない。
「無理無理! 無理ですってー!」
構えの外側から仕掛けるソフィアの攻撃を紙一重で躱すベネット。
最早、ラドス流の構えは役割を為していなかった。
なのに決まらない。
「なんだ? なんつーか、当たりそうで当たらないって言うのか? ソフィアの方が攻めてるのは確実なんだけどな」
「ラドス流だから耐えてるってわけでもなさそうだ。多分彼女の才能──ベネットは特段に目が良いね」
「目?」
「うん。駆け引きの中で多少攻撃は受けているけど、ここぞっていう一撃は全部目で見て躱しているね。攻撃に関しては皆無だから分からないけど、避ける事に関しては普通の粋を越えていると思う」
攻防を続ける両者。
そこには多少疲れの色が出ている。
そこで仕掛けたのはソフィア。
一気にギアを上げてベネットに切りかかる。
ベネットはソフィアの攻撃を目で捉え、身体を動かそうとする。
しかし、自分の目に身体がついて来なかった。
流れる様に刀がベネットに吸い込まれ、当たる直前にピタリと止まった。
「勝負あり、みたいだね」
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