第15話
校舎から少し離れた広場。
数十名の人間が武器を振り回しても余裕のあるスペース。
その近くには小屋と言うよりは大きな建物があり、様々な武器が立て掛けられている事から武器倉庫だと推測出来る。
辺りを見渡せば、準備運動を始めている同学年の生徒達。
少し早く訓練場に移動してきたアイン達だが、何人かはそれよりも早くこの場所に来ていたようだ。
これから強くなる上で魔法とは別に武器に関する技術の向上も大切だ。
アインは、自前の剣に手を掛けながら友人達の武器を確認する。
ソフィア。
言うまでもなく彼女は二振りの刀を帯刀している。
剣と呼ぶには反りが大きく、そのしなやかな刀身は一種の芸術作品の様でもあった。
彼女の剣技は実際に見たことがあり、その強さは疑いようもない。
彼女の技から学べる事があるはずだ。
シルバ。
彼の得物は大剣だ。
最強の魔大剣使いを目指す彼に相応しいほど大きな刀身。
並大抵の者ではその重量に耐えられず、武器を構えることすら叶わないだろう。
その点、大柄な少年はそれを扱えるだけの力があると予測出来る。
どのような戦い方をするのか楽しみだ。
ベネット。
彼女は一振の剣を持参した。
その得物は特に変わった点はなく、極々普通の剣と言えるだろう。
正直ベネットが戦っている所を想像出来ない。
彼女はどのような戦い方をするのだろうか。
それも、もうすぐ分かる事だろう。
実習開始の時間も迫り、生徒達の数も増えてきた。
彼らは各々の武器を携え、実習の開始を待つ。
そんな中、武器庫から訓練用の武器を背負ったグレー髪オールバックの男が姿を表した。
「私はグレイル・ラージハルト。この魔法武器実習を担当するものだ。得手不得手はあるが基本的にどの得物も扱う事が出来る。今日は他学級と合同で実習を行う事になったが、気になる事があれば是非声をかけてくれ。質問等なければすぐに始めたいと思う」
グレイルが訓練用の武器の中から剣を一本掴み、生徒達に分かる様に構える。
「まず魔法武器と言うのは武器自身に付与魔法をしたものだ。付与魔法を纏った武器は通常とは違った特性を帯びる」
グレイルが目にも止まらぬ早さでソーク流剣術の型をなぞる。
その剣捌きに生徒達から感嘆の声が上がる。
「これが速の付与だ。身体強化魔法だけではこの様に早く剣を振るう事は出来ない。イメージとしては武器自体の質量を限りなく小さくする感じだ。しかし、これだけでは決め手に欠ける。そして......」
力のこもった重い一振をするグレイル。
先ほどとは違った重量感のある風切り音が、生徒達の鼓膜を揺らす。
「これが重の付与。武器を振り下ろす瞬間の衝撃を強くするための付与だ。基本的にこの速と重の付与魔法を混合させた武器術を魔法武器術と言う。一般的な呼び方をすると、剣なら魔法剣、槍なら魔法槍、斧なら魔法斧と言った感じになる。君達にはペアを組んで実習形式でこれを学んで貰う」
剣を鞘に納めながらそう語るグレイル。
この場に用意された全ての武器を扱う事が出来ると言うのだから恐ろしい。
彼もディオラスで教え導く教師の名に恥じない傑物なのだろう。
「魔法剣と魔剣の違いって何なんですか?」
一人の生徒が疑問を述べる。
グレイルは頷きながら生徒の質問に答え始めた。
「良い質問だ。魔剣は魔法剣とは違い色を付与した剣の事を差す。ここで色と言っても赤や青と言った色ではなく、感情の色と言った方が適切かもしれない。要は己の願望を武器に込めた技であり、唯一無二の秘奥とも呼べるだろう」
「感情を込めて武器を振るえば魔剣になるって事ですか?」
「ただ感情的に剣を振っても効果はないだろう。魔剣とは己の限界を越えた先に習得出来るもの。教師の俺が言うのもなんだが、口で説明出来ない事の方が多い。訓練の果てに使えるようになることもあれば、ふとした戦いの中で使えるようになることもある。一つ言えるのは魔を冠する武器は本来の姿とは変わった形を取る事ぐらいだ」
「先生は魔剣を使えるんですか?」
「魔剣は使えないな。他に質問がなければ早速始めてもらう。持参した武器を使う場合は安全を考慮して、不断の魔法を掛けるよう注意しろ。不断の魔法が使えない者や質問がある者は随時俺が対応しよう。では、始め!」
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