今日は何回できるかな?

北森青乃

今日は何回できるかな?

 



「またホテル? ちょっといい加減にして! 前々から思ってたけど、マジで体目当てじゃん。最低っ! やっぱヤリ男って噂本当ね。もう嫌、別れましょ」


 付き合って2ヶ月。

 そんな彼女とのデートの最中。最後を飾ってきたホテルの前で、俺は振られた。


 人はそこまで多くはないけど、公衆の面前で振られるのは結構恥ずかしい。

 ただ、彼女……いや元彼女の言った事もある意味間違ってはいない。だからこそ、が嫌な元彼女を追いかける事は出来なかった。

 もう修復は無理だと、過去の経験から察せるから。


「はぁ……」


 <ヤリ男……か……>

 その言葉に、少し悲しさを覚えていた時だった。


「おいおい、いい加減にしろって」


 数メートル先から、男性の大きな声が耳に入る。思わず目を向けると、向かい合う男女の2人組。どうやらカップルらしい。


「またホテルかよ?」


 しかもデジャブな様な言葉が飛び出し、俺はその訳ありカップルから目が離せなかった。


「えっ……でも……」

「でもじゃないって、毎回毎回最後はホテルだよな? それにお前、何回やっても満足しないから疲れるんだわ。気持ち良さより辛さが勝るんだって。あぁ、マジでヤリ子じゃねぇか。今日はカマ掛けてここまで来たけど、毎回とかあり得ないって。もう無理。お前には付き合いきれないよ。別れようぜ? じゃあな」



 <ヤリ子?>

 その呼び名には聞き覚えがあった。大学の別の学部に、そういうあだ名の子が居るとか居ないとか……男子学生の間で、そういう噂が立っていたから。


 <確か、男だったらなりふり構わず誘って食うヤバい女。ただ、抜群のスタイルで胸もお尻も大きいからその魅力に世の男は骨抜きにされる。ただ、食われたら最後。しゃぶられるだけじゃぶられて、文字通り裸一貫にされるって噂だ。マジでヤリマンじゃないか>




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「またホテル? ちょっといい加減にして! 前々から思ってたけど、マジで体目当てじゃん。最低っ! やっぱヤリ男って噂本当ね。もう嫌、別れましょ」


 それは、デートの最後を飾るホテルへと来た時だった。せっかくの高揚していた気持ちを、冷ましてしまう女性の声が耳を通った。

 反射的にその声のする方を見てみると、向かい合う男女の2人組。どうやらカップルらしい。


 (ヤリ男?)

 その呼び名には聞き覚えがあった。大学の別の学部に、そういうあだ名の子が居るとか居ないとか……女子学生の間で、そういう噂が立っていたから。


 (確か、女の子をあの手この手で誘って襲う獣。そのやり方は手段を選ばず、元々の容姿で堕としたり、お酒や脅迫なんでもあり。それでいて従順になった子には貢がせて、ホテル代なんかも相手持ちは当たり前。妊娠したら突き離して知らん顔。サッサと捨てて次の女に行く……文字通りの屑男って噂だよね? ただのヤリチンじゃん。やだ……実際に目にするのは初めてだよ。まっ、私には関係ないけどね?)


「ねぇ? 早くホテル……」

「おいおい、いい加減にしろって」


 (えっ?)


「またホテルかよ?」

「えっ……でも……」

「でもじゃないって、毎回毎回最後はホテルだよな? それにお前、何回やっても満足しないから疲れるんだわ。気持ち良さより辛さが勝るんだって。あぁ、マジでヤリ子じゃねぇか。今日はカマ掛けてここまで来たけど、毎回とかあり得ないって。もう無理。お前には付き合いきれないよ。別れようぜ? じゃあな」


 人はそこまで多くはないけど、公衆の面前で振られるのは結構恥ずかしい。

 ただ、彼氏……いや元彼氏の言った事もある意味間違ってはいない。だからこそ、が嫌な元彼氏の背中をただ見ているしか出来なかった。

 もう修復は無理だと、過去の経験から察せるから。


 (ヤリ子……? まるでヤリ男と同類みたいな呼び方じゃん。あんな人と一緒にしないで)




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 俺の性へ目覚めはごく一般的だった。小学校で習った保健体育の授業で興味を持ったのが始まり。

 そこからクラスの男子内で、一人で致す方法やらが噂となり……何気なく家のトイレでしてみたら、あっけなく開通した。


 そりゃ最初はその快感がたまらなかったよ。ただ、そんな気持ちに変化が現れたのは、中学生になってから。初の彼女が出来て、そして見事初体験を終えたけど……その行為がとんでもなく良かったんだ。


 裸になり、互いを抱擁し合って感じる温かさ。そして迎える快感と、2人で感じる余韻。

 その全てが心地良く、快楽以上の充実感を味わえる。

 好きな人とこういう事が出来るなんて最高だと思った。


 今思えば、その時からその行為にハマってしまったのかもしれない。

 遊びに行っても、最後は必ずそういう事をした。もちろん、するからには相手にも気持ち良くなってほしくて、スマホなんかで勉強して……同意のもとに色々試した。回数も段々と増えていって、それはそれは幸せだったよ?


 勿論、好きという感情が第一。むしろ、好きだからこそそういう行為がしたいと思った。何度でも何度でも。

 けど、そんな関係は長くは続かなかった。


『毎回してばかりして嫌』


 初彼女に振られた時の言葉。

 ショックだった。それになんで好きだからする行為が嫌なのか……理解出来ずに、何も言い返せなかった。


 そんな初彼女の別れ。でも、俺は……今後も好きになる人が出来た時の為に努力をした。

 その行為の時間を増やす為には、何度も出来る体力が必要だと思って、朝にはランニング。重要とされる下半身を重点的に筋トレし、アソコのトレーニングにも励んだ。食事にも気を付け、スナック菓子等は控える様になった。

 自分本位じゃダメだと思い、そういうサイトで女性を喜ばせる為の動作を学び、身だしなみにも注意した。


 もちろんそれに掛かるお金を、親に出してもらうのは申し訳なかったから、新聞配達のバイトをして極力親に負担を掛けないようにした。


 なんて事をしているうちに、中学生のうちにまた彼女が出来た。もちろん何度もデートをして、互いの気持ちを確かめ合って付き合ったんだ。

 そして何度も体を重ねた。自分だけじゃなく、相手にも気持ち良くなって欲しくて色々試したよ。


 けど……結局その子とも長くは続かなかった。


 こうして、中学を卒業し高校へ入った俺。ただ、やるべきこ事は変わらない。

 幸い告白される事も多くて、デートを重ねてお付き合いしてから体を重ねる。初めての子には優しく、相手のして欲しい事は重点的に。

 あぁ高校生になると、する場所は自然とホテル。本当はダメらしいけど、安心して致せるってのが良かった。新聞配達の他にコンビニのバイトも始めて、ホテル代やコンドームの用意は自分がしたよ。だって自分が誘う行為だ。自分がお金を出すのは当然だろ?


 好き同士が行う行為だからこそ、相手が気持ち良くなることは大前提。

 雰囲気の作り方や、喜ぶ仕草、もちろんキスも丁寧に。

 前戯も時間をかけて、相手が望むがままに。後は今までの経験を生かして、その人が求める事をして、求める場所を責める。


 そして最後には抱き合って……その余韻に浸る。それは最高で、好き同士だからこそ出来る行為。体験できる幸せ。何度だって経験したいモノだった。

 もちろん、避妊だって必ずしてたよ。責任が持てないのに無責任な事は出来ない。忘れたりなかったら、絶対にしなかった。相手を大事に思って……けど、そんな俺の気持ちを最後まで理解してくれる子は居なかった。


 2回目を断られたり、毎回の行為が嫌だと言われる。

 こんなにも好きなのに、どうしてなんだろう? 振られるたびにいつもそう思った。


 友達からは、なんでお前……そんなすぐ振られるんだ? いや、彼女出来るのは羨ましいけど……顔も良いし細マッチョだし、男の俺達にも優しいのにさ? やっぱその外見から想像できない性欲か?


 なんて、よく言われたっけ。

 まぁいつからかな? 男友達はみんな優しくて、俺の気持ちを理解してくれる。

 ただ、女子には凄く嫌な顔されるようになった。


『優しいけど、ヤル為の罠』

『絶対体目的』

『手あたり次第声掛けてやってるんでしょ?』

『ただのヤリチン……いや、ヤリ男だよ』


 そんな噂も耳に入った。

 手あたり次第なんてしてないのに。体目的でもないのに。

 ただ、それを女子に話したところで、何も変わらないと思って……スルーしていた。


 こうして大学生になっても、その嚙み合わなさは健在。友達に紹介して貰った子にも振られ、さっきの子が大学生になって4人目だった。


 <優しくて、結構行為にも寛容だったんだけどな。流石に甘えて、毎回2回はダメだったのかな……でも、ヤリ男はないだろう。あの目の前にいるヤリ子と一緒にしないで………………えっ?>


 そんな怒りにも似た感情を抑えながら、何気なくヤリ子へ視線を向けた時だった。タイミングが悪く、目が合ってしまう。ただ、その顔が目に入った途端……一瞬呼吸が止まった。


 <黒髪ロング。二重に……泣きぼくろ? やばい……ドストライクなんだけど?>




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 私の性への目覚めは、ごく一般的だったと思う。小学校で習った保健体育の授業で興味を持ったのが始まり。

 そこで何気なくあそこを触ってみたら、ムズムズして止められなくなって……ベッドの上であっけなく果てた。


 それからはその快感がたまらなかったよ。流石に毎日とはいかないけど、夜にこっそりしていたっけ。ただ、そんな気持ちに変化が現れたのは中学生になってから。先輩と付き合って、初めての彼氏が出来た。そして見事初体験を終えたけど……その行為が凄く良かったんだ。


 裸になり、互いを抱擁し合って感じる温かさ。そして迎える快感と、2人で感じる余韻。

 その全てが心地良く、快楽以上の充実感を味わえる。最初は少し痛かったけど……好きな人とこういう事が出来るなんて最高だと思った。


 今思えば、その時からその行為にハマってしまったのかもしれない。

 遊びに行っても、最後は必ずそういう事をした。もちろん、するからには相手にも気持ち良くなってほしくて、スマホなんかで勉強して……先輩がして欲しい事も色々した。回数も段々と増えていって、それはそれは幸せだったよ?


 勿論、好きという感情が第一。むしろ、好きだからこそ、そういう行為がしたいと思った。何度でも何度でも。

 けど、そんな関係は長くは続かなかった。


『わりぃ。高校で好きな子できた。それにお前とヤルのも飽きたんだよな』


 初彼氏に振られた時の言葉。

 今までしてきた行為が全部偽物だって分かって、ショックで仕方なかった。


 そんな初彼氏の別れ。でも、私は……今後も好きになる人が出来た時の為に努力をしたよ。

 相手に飽きさせない様に、そういうサイトで男性を喜ばせる為の動作を学び、Vラインや他の部位の身だしなみにも注意した。

 筋トレでシャイプアップして、そそられる体づくりもした。アソコのトレーニングだって欠かさなかった。


 そうしているうちに、中学生のうちにまた同級生の彼氏が出来た。もちろん何度もデートをして、互いの気持ちを確かめ合って付き合ったんだ。

 そして何度も体を重ねた。自分だけじゃなく、相手にも気持ち良くなって欲しくて色々試した。


 けど……結局その事も長くは続かなかった。


 こうして、中学を卒業し高校へ入った私。ただ、やるべきことは変わらない。

 幸い告白されることも多くて、デートを重ねてお付き合いしてから体を重ねる。初めての子には優しく、相手のして欲しい事は重点的に。

 あと、高校生になると……する場所は自然とホテルが多かった。本当はダメらしいけど、安心して致せるってのが良かったんだ。その時には喫茶店のバイトも始めて、ホテル代やコンドームの用意は私がしたよ。だって私がしたい行為だもん。自分がお金を出すのは当然でしょ?


 好き同士が行う行為だからこそ、相手が気持ち良くなることは大前提。

 雰囲気の作り方や、喜ぶ仕草、もちろんキスも丁寧に。

 前戯も時間をかけて、相手が望むがままに。後は今までの経験を生かして、その人が求める事をして、求める場所を責める。


 そして最後には抱き合って……その余韻に浸る。それは最高で、好き同士だからこそ出来る行為。体験できる幸せ。何度だって経験したいモノ。

 あっ、でも避妊は必ずしてたよ。私も相手もまだ責任が持てる年齢じゃないのに無責任な事は出来ない。忘れたりなかったら絶対にしなかった。それで大きな声を出されたり、殴られた事もあったけど……そこは譲れなかったんだ。相手を大事に思って……でも、そんな私の気持ちを最後まで理解してくれる人は居なかった。


 2回目が無理な人。自分勝手な行為をして、果てちゃう人。そして毎回の行為が嫌だと言われる。

 こんなにも好きなのに、どうしてなんだろう? 振られるたびにいつもそう思った。


 友達からは、なんでそんな直ぐ振られるの? いやぁその顔だからモテるのは羨ましいけど……顔も良いしスタイルも抜群で、明るくて私達にも優しいのにさ? やっぱその外見からは考えられない性欲?


 なんて、よく言われたっけ。

 まぁいつからかな? 女友達はみんな優しくて、私の気持ちを理解してくれる。

 ただ、男子には凄く嫌な顔されるようになった。


『可愛さを売りにして、誰とでもヤル』

『裸一貫にするらしい』

『手あたり次第声掛けて貢がせてるんだってな』

『ただのヤリマン……いや、ヤリ子だよ』


 そんな噂も耳に入った。

 手あたり次第なんてしてないのに。お金が目的でもないのに。

 ただ、それを男子に話したところで、何も変わらないと思って……スルーしていた。


 こうして大学生になっても、その嚙み合わなさは健在。友達に紹介して貰った子にも振られ、さっきの子が大学生になって4人目の子だった。


(男らしくて、運動部だったって事もあって体力には自信あるって言ってたんだけどなぁ。流石に甘えて、毎回2回はダメだったのかも……でも、ヤリ子はひどいよ。あの目の前にいるヤリ男と一緒にしないで………………えっ?)


 そんな怒りにも似た感情を抑えながら、何気なくヤリ男へ視線を向けた時だった。タイミングが悪く、目が合ってしまう。ただ、その顔が目に入った途端……一瞬呼吸が止まった。


(黒髪に緩いパーマでツーブロック。二重に……泣きぼくろ? やばい……めちゃくちゃタイプ……)




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 <……って、目が合ってしまった。めちゃくちゃ気まずい。とりあえず視線をそれとなく外そう。ただ、問題は最寄りの駅があの人の方向なんだよな>


(……って、思いっ切り目が合っちゃった。どどっ、どうしよう。とりあえず自然に視線を外して……でもどうしよう。家に帰るバス停があの人の方向なんだよね)



 互いが視線を外し、なんとも言えない空気が漂う中……俺は意を決して歩みを進めた。するとそんな俺と同じタイミングで、ヤリ子も歩き出す。


 視線は横を見つつも、その姿は何となく分かる。

 徐々に近付く距離。それと同時にハッキリとして行くその姿。



 <ヤバい。近付くと、その可愛さがマジでハッキリ分かる。しかもやっぱりめちゃくちゃタイプだ。けど、噂のヤリ子だぞ? ヤリマンだぞ? しゃぶるだけしゃぶってポイする女だぞ? ただ……なんだ? この感覚……>


(どっ、どうしよう。近付くにつれてその格好良さがはっきり分かっちゃう。しかもやっぱりめちゃくちゃタイプ。もう顔が熱いよ……けどヤリ男だよ? ヤリチンだよ? どんな手使っても堕として、ヤルだけヤッてポイする男だよ? でも……なに? この感じ……)



 <どうする? このまま通り過ぎて良いのか? ドストライクな女の子だ。そんな子が近くに……1対1の状況。けど、ヤリ子……>


(いいの? このまま通り過ぎて。めちゃくちゃタイプな男の人だよ? そんな人が近くに……1対1の状態だよ? でも、ヤリ男……)



 <どうする?>

(どうしよう……)


 それは、丁度ヤリ子とすれ違う瞬間だった。


「「あのっ!」」


 悩みに悩んだ葛藤の末、思いきって声を掛けると……女の子の声と見事にハモった。

 そしてまたしても目が合う。その距離は、さっきとは比べ物にならない至近距離。

 その近さに一瞬息を飲んだけど……頭の中は、正直ヤリ子の事で一杯だった。


 <やべぇ……マジで可愛い。なんだあの唇、プルプルし過ぎだろ>

(やっ、ヤバいぃ!! 格好良過ぎ! 肌と化清潔感の塊じゃん。その甘いマスクで囁かれたら……想像するだけでキュンキュン)


 <けど、今日会ったばっかだぞ? 良いのか? 俺……>

(でも、今日会ったばっかりだよ? 良いの? 私……)


「えっと、その……」

「あの、その……」


 <……いってしまえ!>

(……いっちゃえ!)



「「もっ、もし良かったら…………」」






 ★






「……はぁ……はぁ……はぁ」

「ハァ……ハァ……ハァ……」


 2人の息遣いが響く部屋。

 汗にまみれた体も、濡れてしまったシーツもお構いなしに……俺達は体を寄せ合っていた。


「……はぁ……はぁ」


 <げっ、限界……ここまで動けないのは初めてだ。胸もお尻も最高で、全部が上手いから無我夢中だったよ。もう復帰出来る気がしないし、出せる気がしない……>


「ごめん……はぁ……もう無理だ……」


 <大体、アソコがヤバすぎる。噂に聞くミミズ千匹か数の子天井か……どっちにしても、入口のキツさと奥の密着加減はとんでもない。最初に2分も持たなかったのは始めてだ」


「ハァ……ハァ……」


(もっ、もうダメ。全部が上手くて意識失いそうだったよぉ。腰がガクガクしてる……頭の中がフワフワしてる……)


「ハァ……わっ、私も……もう無理だよぉ……ハァ……」


(アッ、アソコが凄すぎるよ。その大きさにも驚いたけど……全部私の気持ち良いところを通って、奥までピッタリなんだもん。7回目からは覚えてないよ……」



 <これが体の相性



「ここまでしたの初めてだ」

「私も……だよ?」


 そう言いながら、自然と互いを見つめあう俺達。

 そして、


「んっ……んんっ……」


 どちらからという訳もなく、何度も何度も唇を重ねていた。


 <やばい……付き合ってない子と、初めてしてしまった。それにしても噂通り……いや、それ以上の凄さだ>

(どうしよう……付き合ってない人と、初めてしちゃった。それに、噂通り……うぅん、それ以上の凄さだよ)


 <でも、それだけじゃない。この子と居ると安心する。その容姿はもちろんだけど……初めての行為だってのに物凄い充実感と愛されている感覚で包まれてた>

(でも、それだけじゃないよ。この人と居ると安心する。その見た目はもちろんだけど……初めてなのに、凄く温かくて愛されてるって感覚で包まれてたよ)


 そんな事を感じながら、ゆっくりと唇を離していく俺達。そして顔を見合わせると、互いの口が同時に動いた。


「なぁ」

「ねぇ」


 驚いた顔を見せるヤリ子。たぶんあっちも、驚いた俺の顔を見てるに違いない。

 そして、多分同じ事を言おうとしている。直感的にそう思った。だからこそ、次に零れたのは笑顔だった。


「「よかったら……」」


「付き合わないか?」

「付き合ってくれませんか?」


「……ははっ」

「……ふふっ」


「あっ、ごめん。そう言えば、まだ名前言ってなかった。俺の名前は井上いのうえ……










 ★











 ベッドに横になりながら、俺はある人が来るのを待っていた。

 こちらに背を向けながら、ベビーベッドを見ている女性。そのネグリジェの上からでも分かるスタイルの良さは……健在だ。


「よいしょっ」


 すると、一仕事えたのか、女性がこちらを振り返り……ベッドへと近付いて来た。


「お待たせ。彩夏さやかグッスリ寝たわよ? ……ん? どうしたのそんなまじまじ見て……」

「いや、相変わらず良い体だと思って。子どもを産んでからますます色気が増したよ」


「ふふっ。ありがとう。そう言ってもらえると……いつになっても嬉しいものね。産後のダイエットや整体を頑張って良かったわ」

「やっぱり、最高の妻だよ」


「もう……そんな事言って、あなただって昔と変わらない引き締まった体。うぅん、昔よりもたくましいじゃない」

「1人だけ変わるのは嫌だからなぁ。それに、努力を怠らない君を抱くには、それ相応の体で応えないとダメだろ?」


「ふふっ。ホント、サラッと言葉で惹かせるの上手よね。最高の夫様? そんな事言われたら……ねぇ?」

「ん? 良いぞ?」


 久しぶりに見た、その蕩けた表情。それに応える様に、俺は肩を抱き……こちらへ引き寄せる。

 そしてゆっくりと唇を重ね、何度も何度も絡め合う。


「はぅ……んっ……んんっ……」


「はぁ……流石に皆寝たわよね?」

「だな。それに明日は休みだし、寝坊くらいいだろ」


「そうよね? じゃあ……」

「あぁ。楽しもうか?」

「ふふっ。彩夏が起きるまで……」




「「今日は何回できるかな?」」



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今日は何回できるかな? 北森青乃 @Kitamoriaono

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