第五幕 赤茶少女の心中
ハモンが
別にやりたくて始めた仕事ではない。それでもハモンの
「イッちゃん、これ何て読むの?」
「『アザカ』だよ。だから後の文を読むと『アザカが笑った』って読めるの」
そんな風に勘定計算の合間に同年代の子供たちに読み書きを教えている。
「イッちゃんイッちゃん、
小窓から勘定場の娘の手元を見る。
半額も不足している。
勘定場の娘も勘定計算に慣れた者ではあり怪しんでいる。ここまで堂々と勘定を誤魔化そうとする相手は珍しいので念の為にイチヨに計算を頼んだらしい。
「全然足りないよ」
イチヨが不足額も含めて伝えると勘定場の娘がおどおどし始め、ハモンが口を
「
そう言ってハモンが男を
男の方も誤魔化す事は無理だと理解したらしく直ぐに
「い、いや済まんな。最近は耳が遠く成って
「そうか。聞き取り辛ければ字で示そう」
「いやいや、それには
イチヨは直ぐに
見送りに来た
「むぅ。あからさまなのに」
「まあまあイッちゃん。色町で
読み書きに
ただ不満を持っていないのは
イチヨは自分よりも幼い
「あ、イッちゃんまたハモン
「うん。
「あれれ? ここは『そ、そんな事無いよっ!』って言うところじゃな?」
「そうなの?」
「うん。お姉ちゃんたちが読んでくれる
そう言って彼女が取り出したのは読み書きの勉強にと言われて手渡された糸で
娘がハモンを見るイチヨを見て嬉しそうに笑うのも納得がいく。これでは恋物語の再現に成ってしまう。
「イッちゃん、ハモン
「うん。ウチを助けてくれたのが
「キャー! 恋物語! 禁断の恋模様!」
ハモンが人に評価される姿は我が事の様に嬉しい。
同時に彼が遠くに行ってしまう様で少しだけ
ハモンに
なので仕事終わりにスイレンを捕まえた。
「どしたんえ、イチヨちゃん?」
「その、お願いが有って」
「うん? 何でも
「わ、分かった。ハモン
「……ふむ」
東の空が
スイレンは仕事終わりで疲れているだろう。定食屋を
だから考え込むスイレンに断られれば別の
「本気の様ね」
そう言ったスイレンがイチヨの
「あら、ワッチはついに
「にゃっ!? ちが、ちょっと恥ずかしくなっただけだよ!」
「あっはは! そうでありんすねぇ、
「お、願いします!」
そうは言ってもスイレンも仕事終わりで
男を喜ばす
きっとハモンも喜ぶ内容を教えて貰えるのだろうと期待してイチヨはスイレンと別れハモンの待つ自室に戻った。
自室の
「帰ったか」
「うんっ。やっと寝られるね」
「ああ」
赤茶のショートジャケット、白いワンピース、黒タイツ、ショーツを脱いで
少し体温の低いハモンの硬い体が
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