第五幕 商人と、旅支度と
イチヨの友人であるハナも
元々買い足す物は少ない。
まずは
「ようよう、白革羽織の
「馬鹿を言うな」
調子の良いギンジであるが昨日の様子からもイチヨの顔は正しく覚えているようだ。彼女を見た瞬間に悲しそうな目をしたが即座に笑みで本心を隠したのをハモンは見逃さなかった。
「あ、旅商人さん」
「おう。ギンジってんだ。事情は
「え、えっと、良いの、かな?」
「選んでやってくれ。そして旅商人の父上の品より良い物か
「は? お
まさか名前も知らぬ少女ハナの父親が同業だとは思いをしなかったのだろう。混乱を顔に張り付けたギンジの視線をハモンは
「男に
「と、当然だろい。俺は帝都一の大商人に成る男、
少し涙目に成っているのが面白くハモンは少女二人にギンジの広げる商店から好きな物を選ぶように
ただ自分は当初の目的通り旅に必要な小物や役立ちそうな物を探す。
「おっと、忘れる所だった。
「
「昨日の夕暮れ時に職人の所に顔出したらもう
手渡されたのは巨虫ガムリの牙で作られた脛当だ。鉄の様に硬いのに木板の様に軽く、上下の
「良い品のようだが、本当に貰って良いのか?」
「おう。本当なら木の脛当の五倍だったぜ。商人の目で見ても
「
「おうとも。
口数が多いだけで中身が薄いのが商人だと思っていたハモンだがギンジと話して考えを
足元ではギンジが広げた商品をイチヨとハナが選んでいる。二人とも一品だけ貰えると言う事で再会した時に互いが分かる様な物を探しているようだ。
そんな少女たちの
客足が途絶えない状況にギンジの
信用はもう少し後だと考え直しハモンは商売の邪魔に成らない様に
イチヨとハナは
揃いの品が嬉しいと笑みを浮かべる二人の頭を
ギンジの商店にだけ寄るのは
「ハナ? ああ、これは剣士様。すみません、娘を見て貰ってしまうとは」
「イチヨの友への礼だ。
ハモンが父親と話している間にハナが父親に抱き着いた。
周囲の商人たちも二人の事は知っているらしくハナを邪魔に見る者も居ない。大人の感情に
「旅支度に少し見せて貰っても構わないか?」
「ええ、ええ。見てってください。確か帝都に向かわれるんでしたな。我々も先日まで帝都に居たので今の
そう言ってハナの父が
「あ~、イッちゃん、良いな」
「えへへっ」
胸元と背中の羽模様がよく見える様に手を広げてイチヨが回るように舞う。
帝都に行く為に流行り物を買ってやったつもりだったハモンだが揃いの物を買った事に気付く。
父親が今気付いたのかと少し
「剣士様はジゴロの
「む……そう、か」
確かに
女は妻だけと考えるハモンにしてみればあまり良い話ではない。
気まずさから気分を切り替えようと大通りに目を向ければ、
数人の部下らしい軍人を連れ歩き、その背後には遠目にも
大男は軍人や
「少しの間、イチヨの面倒を願えるだろうか?」
「はい? まあ、ハナを見て頂きましたし後で時間を見て宿に返すくらいは出来ますが」
「感謝する」
ハナの父親が
「済まないが少し外す。ハナの父上の言い付けを守って貰えるか?」
「や……うんっ」
小さい
ただ先日のガレアとの会話を思い出せばこの場にハモンが居るだけで彼女を危険に
一度強く
ハモンを見つけたらしいガレアたちも走り出したのか背後が騒がしくなった。
予想通り
白革羽織。
軍人たちからそう聞こえた瞬間に小走りを始めた。
街中で
だが相手は
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