第四幕 別れの予感と、理法と
「それでねっ、ハナちゃんのトト様は旅商人でねっ」
ハナの父親は
その直後からイチヨは新たな友が出来た嬉しさからハナと話した事を語り続けている。
話す前はどうすればハモンの
北の村で世話に成っていた時に近い彼女の様子にハモンも胸を撫で下ろした。
ハナの事も有り彼女には年の近い友が必要だと分かる。分かるがハナの父は旅商人、帝都に向かう自分たちと
「どうした?」
「ハナちゃんと、ここでお別れしなきゃだね」
「……悪い」
「んーん」
ハモンに
肩が震えてる。口が堅く閉じられている。
村の大人たちから逃げる様に旅立って始めて出来た友人だった。
ハモンは規則的にイチヨの背を叩きながら何度も頭を撫でる。
「ハモン兄様」
「どうした?」
「兄様は、ウチを置いて行かないよね?」
「ああ。自分はお前を最後まで見ているよ」
口約束だという自覚は有った。
村で山賊を
頭を撫でる手を止め、ハモンはイチヨを抱き寄せる。
母どころか父ですらないハモンの鼓動でイチヨの心が落ち着くかは分からないが他に思い付かなかった。
ただイチヨはハモンに頭を擦り付けながらも体から少しずつ力が抜けていくのが分かる。
見下ろしてみれば
まだ夕食を食べていないのだが
無理に起こしてしまうのも
もし起きなければ夕食は保存が効く物だけ女店主に残して貰い、保存が効かない物は自分が食べると決めてハモンはイチヨの頭を撫でる。
そんなハモンの決意は夕食が運ばれて来た時に直ぐにイチヨが起きて
ハモンの膝の上に座るイチヨが
「
「頂きます」
宿の仕事が残っている事とイチヨが恥ずかしがる為に直ぐに退出した女店主の背をイチヨが
少しだけ感情豊かに成った彼女が嬉しくてハモンは
イチヨはハモンが上機嫌な理由が分からずに首を
「ウチも、
「む……使える、とは思う」
食事を終えて再びハモンの
使えないと言い切る訳でも無く、使える可能性は有るという。ただハモンにしては
「理法についてどこまで知っている?」
「
知っているかと問われたイチヨも答えていく
村での最後の夕食で母から卵焼きの作り方を習う時を思い出したらしい。母に教えて貰った様な具体的な
「ふむ。まず、理法を使う為には
そう言ってハモンは自分の左手中指の鎧を
「りそう?」
「そうだ。
「あ、理装」
「前から思っていたが、読み書きができるのか?」
「お店、読み書き
「嫌な事を思い出させたな」
子供が読み書きを覚えるなら両親の影響だと想像は付く。
無神経な事を言ったとハモンは
「理法を
「じゃあ、ウチも理装を持てば」
「そうなのだが、理装は数が少ない。遺跡の奥深くで
そもそも遺跡が何か分からないイチヨが理解できずに困っている。安心させるように頭を撫でて説明を続けた。
「ずっと昔、自分たちと似た姿の、しかし全く異なる、神としか言い様の無い者たちが大地に居たらしい」
「神様っ」
「そうだ。その神が使っていた家、のような物が遺跡だ」
「じゃあ、理装は神様が作ったの?」
「恐らく」
ハモンの知識もこの程度だ。
顔に雷の
彼らは理装を当たり前に持ち、理法を当然の様に
「えと、
「そうだと言う学者が居る。自分も遺跡を見た事は有るが確かめる手段が無くてな。とても信じらん」
「そうなんだ」
「理装が有れば理法が使えるのは事実だ。自分が理法を使う時、理装は
「理装が無いと?」
「理法が使えない」
理装が無くとも理法が使えるかと言われるとハモンも答えられない。
理装は理法を使う補助器具で、料理に
ハモンの自信無さげで仮説の多い説明にイチヨも困っている。
助けてくれたハモンを疑いたくは無いが確かな事が無い為に信じて良いのか判断に困っているようだ。
「何かの
「う、うん」
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