閑話 ある山賊たちの話

 動物、虫が冬眠する時期、雪山にアジトを構える山賊たちも食料の確保に苦心くしんしていた。山と森が雪に閉ざされる前に大規模な襲撃を成功させていた為に何とか生き延びる事ができた。

 ただあと十日もすれば餓死がしする者が出ていただろう。


 雪解けが始まり、やっと近隣の村に襲撃を掛けられるという時に成って、冬眠していた虫たちも起き始めた。

 アムリならば十人以上の集団である山賊でも対処できる。

 だが問題は巨虫きょちゅうガムリだ。


 討伐とうばつするなら丸太のような木の盾と槍のような長物が必要に成る。

 あわや餓死による全滅を覚悟した山賊たちだが、木の実を拾いにアジトを離れた一人が慌てて帰って来た。


「ガムリが、ガムリが狩られてる!」

「何!?」

「角が剥ぎ取られてた! 間違いねえ!」


 これで森の中を自由に歩ける。さらった村娘が悲鳴を上げてもガムリの脅威におびえなくて良い。

 雪が本格的に降る前に襲った村は廃村はいそんに成っているだろう。新しい獲物が必要だ。


 普段は行かない方角、ガムリのむくろの有る方角には確かに村が有る。

 村には巨虫を狩る程の手練てだれが居るのは分かっている。

 それでも空腹と性欲が山賊を突き動かした。


 村の正確な場所は分からない。

 まずは偵察し、村の男を優先的に殺し、あとは奪えるだけ奪うだけだ。

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