最終話「その後」(愛花side)
はぁ。
裕子が死んだ。
あの後、ワトソンによってすぐに警察が来たが、その場で死亡が確認された。
私たちは事情聴取を受け、その際に一連の事件が全て野間裕子によるものだと説明した。
警察はその後、何をしているのだろう。
あれからワトソンから連絡がない。
忙しいのかな。
気を遣っているのかな。
私の友人が、焼身自殺した光景を目にして心を悼んでいることを。
はぁ。
これからどうしようかな。
大学に行こうかな。
今なら、間に合う。
一限の開始が午前九時。
今は午前八時三十分。
ここから電車に乗っていけば、間に合う。
うーん。
あさひは、どうしているんだろう。
行っているのかな。
あさひのことだから、きっと行っているに違いない。
自分の心に問いかけよう。
私は胸に手を当て、瞼を閉じる。
深呼吸をする。
――よし。行こう。
ベッドから起き上がり、鉛のように重くなった身体を柔らかくするように伸びをする。
鞄を持って、家を出る。
「・・・・・・ワトソン」
家の門に立っていたのは、ワトソンだった。
「どうしたの」
「実は、愛花に伝えたいことがあってな」
「・・・・・・というと?」
「野間裕子が、捕まった」
私は思わず驚く。
「えっ、そ、それはどういう」
「実はな、僕たちが倉庫で見ていたあの遺体も浮浪者だったんだ。しかも、若い女性の」
「若い女性の・・・・・・」
「野間裕子は素直に自供したよ。全て自分が仕組んだことだって」
「・・・・・・あ」
「どうした?」
「死亡届って、あれってどうなったんですか」
「あぁ、あれか。あれはだいぶ前に役所が虚偽の文書として受け入れなかったらしい」
「な、なるほど」
「それじゃあ、またな」
そう言うと、ワトソンは道を歩いて行った。
私はその姿を一瞥した後、駅に向かった。
大学。
少し遅延して間に合うのか、不安だったんだけど、何とか間に合った。
私は門を潜り、授業が行われる教室に入る。
そこに、あさひがいた。
驚かせてやるか。
私はあさひにそっと近づき、「わっ‼」と大声を出す。
あさひは椅子から転げ落ち、「いたた」と尻餅をつく。
「なにさ~、もう~」
あさひが頬を膨らませながら、話す。
「ううん。何でも無いよ」
「何でも無いならやめてよ~」
「え? 何でも無いのに、してきたのはどっちなの?」
「だからさ~」
他愛の会話が続き、私たちは今日という一日を過ごした。
彼女は一体、何者?【完結済】 青冬夏 @lgm_manalar_writer
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