第5話「急展開」(あさひside)
次の事件が発生した。
場所は私たちの大学から少し離れたマンションにある、ゴミ収集場で見つかったという。被害者は男で、持ち合わせていた学生証から阪田純一、高校一年生だと判明した。これまで通り、被害者には心臓を鋭利な物で一刺しにされた可能性が高く、死因は失血死ではないか、というのが警察の見通しだった。
ワトソンさんの勧めで、特別に私と愛花は現場を見ることができた。
現場は閑静なマンションということだけで、特別なことはあるように思えなかった。
「どう? 何か見つかった?」
愛花が言う。
「うーん。あまり特別なものは見つかっていないような気がするんだよね・・・・・・」
「だよね。これまでと同様の手口をしているし、遺留品を大量に残しているし・・・・・・」
私たちは腕を組んで考える。
すると、野次馬たちがざわめく声がした。
私たちはそっちに目線を向けると、脚立に乗ったマスコミたちが沢山いた。多分、そのトラブルでざわついているんだろう。特に気にせず、目線をマスコミたちから外す。
「・・・・・・ねぇ」
「なぁに、愛花」
「何か、見間違いかもしれないんだけど」
「何でしょう、言ってみて」
「・・・・・・私の友人がいた」
「え、どこ?」
私は愛花が見つけたという、友人を目で探そうとするが、野次馬が多くてどこにいるか分からない。
すると、一人だけ帽子の唾を深く被った女性がいた。
――まさか。
「ねぇ、あの人のこと?」
そう言って、私はその人のことを指差そうとする。
だが、その人は既にいなくなっていた。
「ん。どこにいるの? いないけど」
「うーん。気のせいだったかな」
私は頭を掻くと、同様に愛花も同じような仕草をしていた。
大学内にある食堂に来ていた。
内装は明るめであり、日の光がよく通っていた。
「じゃあ、さっきのことをまとめるね」
愛花がそう言うと、私と、その隣にいたワトソンさんが頷く。
「今日発生した事件、被害者は阪田純一、高校一年の男子。現在警察が調査中のものの、これまでの事件と同様、大量の遺留品を残し、鋭利な物で心臓を一刺しにしている。また、学生証からこれまでの被害者と同様、同じ学校の生徒だと分かっている、ということ」
愛花が話し終えると、ワトソンさんが話し始める。
「その、阪田純一について何だが、警察によれば、元交際相手がいたということ。名前は米山要子。同じく高校一年生で、女性。今も警察が詳しいことを調べている」
ワトソンさんが話し終えると、お水を飲む。
「うーん、まだ進展が見られないね・・・・・・。あ、でも」
「うん? なに、あさひ?」
「そう言えば、さっきの現場に死んだ《ありんこさん》がいたような気がするんだけど」
「蟻? まさか、たまたま死んでいるだけだと思うけど」
愛花が苦笑いする。
「でもなんか、ブルーシートに覆われた被害者をちょろっとだけ見たけど、なかなか綺麗だったよ」
「綺麗? でも、死亡推定時刻が昨夜未明になっているから、綺麗なんじゃないの?」
「確かにそうだけど・・・・・・。何か、ありそう」
「何それ、あさひの勘?」
愛花がそう言うと、私は何となく頷く。
「まあ、その蟻について僕が回収して調べて貰うとするよ」
ワトソンさんが言うと、「ありがとうございます」と私が言う。
「とりあえず、この事件についてここまでにしておこう。また事件が起きても、おかしくはないからな」
そう言い、ワトソンさんは食堂を後にした。
あの後、愛花と一緒に授業を受けた後、大学門で別れ、自宅へ帰路についた。
やっぱり、一人暮らしは寂しいな、と思う反面、自分が導いたことだ、そう思いながら部屋の電気をつける。ベッドに座り、手提げ鞄をその傍らに置く。
スマホを見て、SNSをチェックして友人の動向を確認。
思わず笑いかけてしまう投稿もあったけど、大学生活を満喫しているんだなって思う。
まあ、私もなんだけどね。
そうスマホを見てニタニタしていたら、あるポップアップ表示に目線がいく。
その情報を見て、私は驚いた。
一連の事件の犯人と思われる人が、出頭した。
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