第九話 仮面を被りし者

「ぐっ......!!」


獣人は悔しさを全面に出し、澁鬼を睨みつける。


「気に食わねぇ...」


獣人は半ば諦めが混じったようなそんなやや小さく低い声で呟いた。


澁鬼がその言葉を意味を聞こうとする前に、獣人は声を荒らげた。


「テメェら人間が気に食わねぇ!!俺らを当然の如く忌み嫌い斬りやがって!!何ゆえにだ!?俺たちが人間を喰らうからか!?自己防衛のためか!?俺らをこうしたのはお前ら人間だろ!!?ふざけやがって......!!なのにテメェらは誰からも頼まれていないのに殲滅だの町の平和だの思い上がって殺戮を繰り返す!!俺らが人の仮面を被った獣だァ?テメェら人間こそが人の仮面を被った悪魔だろうが!!そんな野郎共が、俺を殺す理由を後付けでいくらでも正当化しようなんざ薄汚いーーーー」



長きに渡る獣人の怒号はそこで潰えた。


澁鬼が刀を押し込み、獣人の喉に当てたのだ。


澁鬼は話にならないとばかりの憐れんだ表情を軽く浮かべるも、すぐさまいつものキリッとした顔に戻る。


「お前を斬る理由に正当性も理由も要らねぇよ」


澁鬼は言葉を続ける。


「俺の仲間たちを無差別に殺そうとした......。お前を斬る理由など、それだけで十二分に足りているーーー!!」


そう言い澁鬼は刀を強く前に押し込んだーーーーーーー。










ゴキンッ!!......ボトッ............










僕は澁鬼が恐らくしたであろう光景に目を向ける事は出来ず、思わず目をつぶって顔を逸らした。










澁鬼の言葉が終わった後、何か球状の、重たいものが落ちる音がした......。











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ねぇ、貴船。獣人ってどうやって生まれるんだろう...?」


僕はさっきの獣人のセリフが気になって仕方なかった。


獣人が生まれる理由は人間......?誰かが裏で糸を引いているのか、過去に事件があったのか、もしかして元は人間だったんじゃないか。



考えれば考えるほど新たな疑問が浮かび、考えが一向に進まない。


僕の疑問に貴船が答える。


「どうだかな。ホントかもしれないが、あの状況から見て、一部都合のいいようにアイツが言い換えてる可能性もあるからな。それは俺たちが追っている人たちが何かもっと知っているかもな」


貴船もどうやら深くまでは知らないようだった。


「皆お疲れ。ほい、これ飲み物な」


祐葉は戦闘に参加した澁鬼、雪嶺、朔矢に飲み物を手渡す。


三人とも一気にぐびぐび飲んでいく。


普段は僕と祐葉は前線には立たず、上記三人が基本的に戦闘を行う。そして万が一の場合に備えて僕たち二人を守るために恵里菜と貴船がいる。


その万が一が起こった事は今まで一度も無いが、それでも僕たちも何かしてあげたいけど何も出来ないもどかしさがある。


守られるだけじゃなくて、守れるだけの強さが欲しい。


次は前線に立たせてもらえないか皆と交渉する計画を僕は立てる事にした。










余談


ちなみに獣人との戦闘中、貴船と僕と祐葉は戦況を見つめていましたが、恵里菜は、暇だしどうせ襲われないだろうからって言って寝ちゃいました。


.........緊張感無いなんてレベルじゃないですよ......あなたホントそのハートの強さの源はどっから湧き出てるの......?







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る