第八話 決着!!
朔矢も刀を取り出す。
朔矢の刀は形状としては普通だが、刀の柄から切っ先にかけて真ん中が空洞の刀だ。
獣人が朔矢の刀に対し疑問を唱えようとした次の瞬間ーーーーー
ブワッッ!!
質問には答えないとばかりに朔矢は能力を展開する。
刀の空洞から先程の斬撃と同じ青白い光が三角の翼状となって現れる。
その姿はどことなく紙飛行機にも見える。
僕たちの世界では、それぞれ個人の強い思いや願い、強烈すぎる体験などが具現化されて刀の形状として表れたり、特異な能力が宿ったりすると言われているが、一体朔矢は幼い頃に何を願ったのだろうか。
朔矢は刀を上にして構える。
「俺の能力が見られるのは次で最後だ。とっととくたばりやがれサル野郎!!!」
その言葉が言い終わると同時に朔矢は刀を素早く振り下ろすし、獣人に目がけ斬撃を放つーーーーーー!!!
ビュンッーーー!!!
強い風きり音と共に翼の斬撃が獣人を襲う。
「二度も同じ手を食うかよボケ!!」
獣人は左にステップを踏み素早く避ける。
しかしーーーー!
「何っ!?」
斬撃は小さく弧を描き、獣人に向かって行ったのだ。
朔矢の斬撃は獣人に対して追尾機能が付いていて、発動と解除は朔矢の任意。一発目にわざと追尾機能をつけずに外し、直線攻撃だと油断させて二発目で仕留める、朔矢の得意パターンだ。
獣人はとっさの事に回避が追いつかず、斬撃を右大腿部に喰らう。
「クソっ!!!!」
そしてそのタイミングを待っていたとばかりに雪嶺が走り出し、バランスを崩した獣人の懐に一気に入った ーー!
「喰らいなさい!!!!」
雪嶺は獣人が状態変化しなかった胴体に向かって力いっぱいに斧を振るう!!
「ぐっ!!!!!」
しかし獣人も辛うじて反応し、腕でガードに入るが、制御し切れず、後ろに大きく吹き飛んだ。
「クソっ......クソっクソっクソっ!!!」
獣人はまだ立っている。敵ながらハンパないスタミナだ......。
だけど、それでももう終わりだーーー!
「澁鬼!!決めて!!!!」
雪嶺の言葉に合わせ澁鬼が剣の切っ先を獣人に目がけ構える。
次の瞬間ーーーー
ゴッ!!!!!!
「ぐあっ......!!!! なに......が..!?」
獣人は理解が追いついていない様子だった。
それもそのはずだ。澁鬼はモーション無しでいきなり獣人に吸い寄せられるかの如く超高速で移動したのだから。
澁鬼のコの字に凹んだ切っ先は獣人の首に入り、更には獣人の身体は後ろの大木と刀で挟んでいる形となり、完全に身動きが取れなくなっている。
「バカな...あの距離からどうやって......」
獣人は訳が分からないとばかりに聞いた。
澁鬼は獣人を一睨みしてから答える。
「俺の能力は、刀で斬りつけたものに『磁力』を与える力だ」
澁鬼は更に続ける。
「生物 無生物関係なく、俺が斬ったものは磁力が帯びるようになる。そしてお前の真後ろの木は、さっき俺が立ち上がった時に斬っといた木だ」
「!!!?」
獣人は目を丸くしている。
そう、先程 澁鬼が立ち上がる時に剣を杖のようにして木の根元に刀をつけたのは、木に磁力を付与することが本当の目的だった。
そして朔矢と雪嶺の攻撃の間に自分と獣人と木が一直線上に重なる場所へ移動し、磁力を発動させる。
すると刀と木が互いに引き合うが、根を張った木は動かない。その代わり刀が澁鬼ごと木に吸い寄せられ、その間にいる獣人を捕らえたという訳だ。
「チィッ!......クソったれがぁぁ!!」
獣人はまだ自由が聞く両腕を動かし、澁鬼に攻撃を試みるーーーー!!!
しかしーーーーー
「ガッ.....クソっ!どうして......!?」
獣人の両腕は木に張り付いて動く気配が無かった。
「言ったはずだ。俺は斬りつけたものに磁力を付与する。俺の斬撃を、お前はどこで受け止めた?」
「!!!!!!」
獣人は全てに気づいた顔をした。
そう、最初に澁鬼の攻撃をそれぞれの腕で受け止めていたため、初めから磁力が付与されていたのだ。
獣人にはまだ磁力が付与されていない部位として足が残っているが、既に朔矢と雪嶺がそれぞれ刀と斧を構えて、獣人の足の位置に刃を向ける。
少しでも動けば斬り落とすと言わんばかりの圧を込めて。
澁鬼は再度獣人を見て告げる。
「勝負あったな獣人。お前はここを朝食会場にするつもりだったようだが、生憎ここはーーーーーお前の墓場だ」
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