第四話 夕食の楽しい一時?

調理が終わって盛り付けも完了した所に僕はやってきた。


今回は捕らえた鹿で焼肉をすることになった。野外で食べる豪快な食事も僕は嫌いじゃない。


既に火の消えた薪を僕らは丸く囲み座っている。


「あの〜......何で僕は食事準備の際毎回見張り番なの......?」


雪嶺たちが捕らえた鹿の肉を食べながら僕は問う。


すると雪嶺はうーんと軽く天を見てから再度僕の方を向き答える。


「佐斗葉は周りの警戒力が皆よりあるからね。適材適所ってやつ?」


「ものは言いようだなぁ...」


「立派な仕事じゃないの。今日もお勤めご苦労様」


そう言って雪嶺は僕に肉を一つ渡した。




が、





「......雪姉ぇ、この生の肉をもらって僕はどうしろと...?」



「............えと、私のために後で焼きなさい」


「労いからの下僕扱い!!??」


「じょ、冗談よ。ちょっと反応が見たかっただけ」


そういって雪姉ぇは僕に渡した肉を元あった場所に戻す。


鹿肉の量が割と多かったから、一部は保管して後日干し肉にでもして食べようって事で、別の場所に置いたのを雪姉ぇは誤ってそこから取ってしまったのだろう。


しっかりした雪姉ぇはたまにこういうおっちょこちょいな面を見せるので、それはそれで可愛いのだが、本人の前で言ったらきっと顔を真っ赤にしてしばかれそうなので言うのは止めておいた。


ちなみに僕は雪嶺の事を雪姉ぇ(ゆきねぇ)と呼んでいる。本当にお姉ちゃんみたいなのと語呂の良さも相まって個人的にはお気に入りの呼び方。


こう呼ぶのは僕の他には恵里菜ぐらいかなぁ。






ん......恵里菜....?







あ、ヤバい......。



そう思ったのも束の間、恵里菜は僕が抑え込んでた言葉を口にした。






「あ、佐斗葉 今雪姉ぇの失敗見て可愛いなぁって思ったの?」





的確に地雷踏みやがったーーーーー!!!




「なっ......!!」


雪姉ぇは突然の事に動揺し、頬が赤く染まる。



まずい...早く恵里菜を止めないと......!


「いやぁ〜分かるよ佐斗葉!普段凛とした感じの雪姉ぇがたまに犯すドジな感じと、それを誤魔化すバレバレな嘘と、その嘘を突き通そうとする見栄っ張りな所は正にギャップ萌えだよね!!」



アンタ1回口閉じろーーーーー!!!!!




雪姉ぇの様子を確認すると、もう顔全部が真っ赤っかになり、肩を震わせている。





あれ......?何か雪姉ぇの顔だけじゃなくて背後にまとっているオーラまで心なしか赤いような......。



メンバーを見ると我関せずと言った様子で視線を逸らす祐葉 朔矢 澁鬼。




見捨てられたーーー!!!



こうなったらとりあえず僕一人で恵里菜を抑えてからじゃないと状況が改善しない......。



「恵里菜!雪姉ぇの方見て!!」


「はにゃ?」


そう言って僕は雪姉ぇに目を向けさせる。


今にも怒りだしそうな雪姉ぇを見れば流石に恵里菜も反省してーーーー




「雪姉ぇ 佐斗葉に可愛いって思われて照れてるの?」





悪化させやがったーーーーー!!!!






何でこの状況でそんなセリフ出ちゃうの恵里菜さん!?


恵里菜の危機感の無さと空気の読めなさ具合いは一級品レベルだけど、巻き込まれる当事者としてはたまったもんじゃない。



あぁ......雪姉ぇの赤いオーラがついに全身をまとってきた.....。




これは流石に周りに助けをーーーー









あれ!?皆いない!?









気がついた頃には祐葉、朔矢、澁鬼の三人はこの場から逃げ出していた。




待って待って待って!!この状況はいくらなんでもーーーー








「......なさい」


「えっ?」




雪姉ぇが何か言ったような気がしたけど...聞き取れなかったなぁ......。



と思ったその瞬間、雪姉ぇ持ち武器である自分の背丈と変わらない戦斧を構え、そしてこちらをキッと力強く睨みつけてきた。


その顔は瞳は軽く潤み、歯を思いっきり噛み締めていて、今にも羞恥心に押しつぶされそうな顔だった。


そして大きく息を吸い、怒りと羞恥が入り交じった大きな声で叫んだ。






「アンタ達いっそくたばんなさーーい!!!!!!!!」




「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!」













静かな夕食の一時は雪姉ぇの怒号で幕を閉じたのだった。



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