episode 021
今回は至近距離からになるので、氷針を吹き矢のようにターゲットに打ち込むことにした。
これもCIA特製の武器で、筒はスティックのりのような直径2cm程、長さは13〜4cmの円柱状で端には万年筆のようにクリップが付いている。
クリップを引き上げて氷針をセットし、中心部から自転車の携帯空気入れのように押し引きすることによって空気が圧縮され、クリップの先端を押すと氷針を発射することができる。
もちろんCIAグッズなので、威力は抜群で5m以内であれば、少々の衣服なら貫通して皮膚に達することができる。
その割に氷針が細く小さいためターゲットは一瞬虫に刺された程度のチクリとした痛みは感じるが、氷針は突き刺さったあと体温で瞬時に溶けるため当たったあたりを手で撫でるくらいのことであまり気にせず過ごしてしまう。
が、この氷針もCIAグッズなので、専用の保存容器にさえ入れておけば溶けることはない上に、CIAが人を殺すために昆虫の毒から作り出した猛毒を凍らせてできている。
なので、ほんの少しでも皮膚を掠めれば、ターゲットは15秒ほどで確実に死に至るという代物だ。
植え込みの裏に身を潜め、バックパックからAirPodsケースに似た入れ物に入った氷針をピンセットで取り出し、筒に装填し空気を圧縮した。
私の前を通り過ぎるのをじっと待ち、通り過ぎた瞬間にスーツ姿の町田の首筋を狙って筒から氷針を発射した。
とその時、町田のすぐ後ろを歩いていたSPの一人が、何を思ったか町田の横に進み出た。
手で何かを払おうとしているところを見ると、虫でも追い払っているのだろうか。
その結果、町田に命中するはずの氷針はSPに命中してしまった。
SPは特にリアクションもなく、そのまま何事もないように歩き続けた。
どうする。
瞬時に判断しなければ。
SPは10秒程で倒れる。
町田ももうひとりのSPも必ず、倒れたSPに駆け寄り隙きができるはずだ。
その時に、横を通り抜けざまに町田にもう一度氷針を発射する。
急いで氷針を再び装填し、植え込みの陰から歩道に飛び出した。
5〜6m先をゆく3人を確認しながら歩き出した。
数秒後SPが倒れ、もうひとりのSPがしゃがみ込み、倒れた同僚に名前を呼びかけている。
苦しまずに急に倒れ込んだので、脳溢血かくも膜下出血をうたがっているのだろう。
スマートフォンを取り出し救急車を要請しようとしている。
町田はその横で倒れたSPを見下ろしながら、何をするでもなくただただオロオロしているように見える。
私は町田に歩み寄り、通り抜けざまに町田の首筋を狙って氷針を発射した。
その時、SPが私の行動に異変を感じ、こちらを見やった。
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