episode 015
穏やかに晴れたその週の金曜日の14時30分頃にターゲットの車の後ろに、Tシャツにデニムというごく普通の格好で今回必要なものを詰めたアークテリスクのHeliad 15L Backpackを背負ってに潜んだ。
ここがアメリカならば、ほぼすべての車が頭から駐車場に突っ込んでいるが、日本なのですべての車がバックで駐車している。
なので、私が潜んでいるのはトランクの後ろということになる。
こういった犯行というのは、映画やドラマでは人々が寝静まった深夜とか、土砂降りの雨の日におこなわれるものらしいが、実際は平日の昼下がりほど実行しやすい時間帯はない。
朝は通勤通学、昼前は幼稚園の帰宅、夕方は買い物、それ以降の時間は帰宅者で人の出入りが続き、深夜は物音がとても響いてしまう。
15時近くになると、いつものようにターゲットがで出かけるために、小ぶりのトートバックを肩にかけ黒のワンピーススタイルで近づいてきた。
そして、スマートエントリーでドアノブに手をかけ、ドアを開けこちらに背を向けて車に乗り込む瞬間に、車の後ろから飛び出してアイスピックに似たCIAオリジナルの武器で背中から心臓を一突にきした。
ターゲットは首を後ろにそらし、口を開け、小さな喘ぎ声をあげたものの瞬時に絶命し、そのまま運転席に倒れ込んだ。
私は素早く助手席側に移動しドアを開けターゲットの死体を助手席に引っ張り込み、シートベルトをさせて運転席にもどり、トートバックからスマートフォンを取り出してターゲットの顔認証でスマートフォンのロックを解除し電源をオフにしたあとSIMカードを取り出して雨水溝に捨て、Volkswagen Poloを発進させた。
背中に武器が突き刺さっているので、窓側に体を捻り首をたれたターゲットは、助手席で熟睡しているように見えるだろう。
高速は使わず一般道を40分ほど走り、港近くの工場地帯までたどり着いた。
この辺の道には、ナンバープレートを外され廃棄された車が何台も並んでいる。
その殆どはタイヤを持ち去られるかパンク状態で、かなり年数が経過しているのかウインドウガラスがなくなって錆びついた車もある。
何か大きな工場の跡地なのだろう。
区画は大きな碁盤の目の様に整備され、道路は舗装されているものの、かなり広い範囲で手入れされていない雑草の生い茂った土地が広がっている。
いずれは再開発されショッピングモールやシネマコンプレックスなどが立ち並ぶであろうが、それまでは廃棄された車が列をなしているだけの荒れた土地だ。
Volkswagen Poloを廃車の列に止めると、まずはトランクに用意しておいたビニールシートを敷き、ターゲットの死体を助手席からトランクに移し、持っていたトートバックからキーと財布を抜き取った。
今回使用した武器は、握り手とアイスピックの刃にあたる部分がそれぞれ拳ひとつほどの長さで、刺さった瞬間に刃先から小さな返しが飛び出し抜けなくなる。
そしてそのままそれが栓となり、流血を防いでくれる。
なので、血が流れることなくここまでターゲットを運べたわけだ、その上持ち手の先にあるボタンを押し込むと返しが引っ込みするりと抜ける。
抜けば多少の流血はあるが、細く小さな傷口なのでドクドク流れ出ることはない。
ビニールシートを敷いておけば、車外に溢れることもないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます