episode 014
一週間観察すると、水曜日と金曜日の15時頃、土曜日の11時頃にでかけて行くのが確認できた。
なので、鼓太郎に協力してもらい、翌水曜日の14時45分頃からターゲットとのマンションのエントランスが確認できる付近をうろうろしてもらうことにした。
真夏なら、15時頃のアスファルトは肉球焼けるほど暑いだろうが、幸い初夏にはまだすこし早いこの時期のアスファルトはそこまで熱くはない。
鼓太郎も同じ場所を何度もうろうろさせられて、多少おかしいとは思っているだろうが、渋々付き合ってくれた。
10分ほどでターゲットがマンションのエントランスから現れた。
やはり講師の仕事があるのだろう。
髪型も眼鏡もベランダで確認したときのままで、160cm前後のやや細身、顔は卵型の輪郭で鼻筋の通った顔立ち、ナチュラルメークで黒いパンツに白のブラウス姿だ。
ターゲットはそのまま私のマンションとの間の小道を抜け、右に折れマンションの駐車場に向かった。
駐車場はマンションの北側に平面駐車場が20台あり、4台分が1階のピロティー構造を利用した屋根付き駐車場となっている。
ターゲットは屋根付きの一番東側を使っているらしく、白いVolkswagen Poloに乗り込んで出かけて行った。
新しいマンションではないので駐車場に監視カメラもなく、東側はマンションの壁、西側には柱があって人目につきにくく、日中は車の出入りも少なくなかなか条件の整った駐車場だった。
宅配業者を装って自宅に訪ねて行き扉が空いた瞬間に殺してしまおうかとと思ったが、ドアチェーンをしていたり、置き配を指定されたりすると困るので、この駐車場を利用して実行することにした。
しばらく鼓太郎の散歩に付き合い、そろそろ帰ろうとしたときに突然吐き気に襲われ、戻してしまった。
1分ほど歩道にうずくまっていたら、徐々に気分が回復してきたので、鼓太郎散歩用の水をペットボトルから戻したものに撒いて自宅に戻った。
どうやら病魔は確実に進行しているようだ。
私の場合すでに余命宣告を受けていることもあり、できるだけ穏やかに死を迎えられるよう2週間毎に主治医のもとに通って診察を受け、病状の進行具合を確認し、抗がん剤と痛み止めを処方してもらっている程度だ。
快癒に向けての積極的治療は行っていない。
ようは助かる見込みはまったくないのだが、いつまで自力で動いていられるかは、患者の体力によるのでよくわからないそうだ。
自分では体力に自信を持っているので、最後の最後まで動けるつもりだったが、どうも怪しくなってきた。
急いで計画を実行することにする。
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