episode 013
マンションの場合は、まだ管理会社を通じて苦情の申立ができるだけましかもしれない。
戸建の場合は、直接文句を言うしか方法がないのだろうか?
地域の自治会の会長や役員を通じ話をしてもらったりできるのかもしれない。
やっとの思いで購入したマイホームの隣家に、暴走族まがいの息子が暮らしていて夜中に仲間と爆音を響かせながらバイクで帰ってくるとか、当初は可愛かった子供が成長するにつれ暴走族まがいになってしまったとか、バンドや吹奏楽をやっていてドラムやトランペット、サックスなどを演奏しているとか、なまじ小さな庭があるためにネットを張ってゴルフ練習し、クラブがボールに当たる音とネットに取り付けた的に当たる音が交互に長い時間響いてくるとか、アマチュア無線をやっていておおきなアンテナを建てて電波障害を起こして自宅のテレビの映りが悪いなど、日本各地を探せば多くの人がご近所トラブルを抱えながら、それにじっと耐え忍び生活していることだろう。
私が巡回して解決してあげたいくらいだが、残念ながら私にはそんな時間は残されていないし、実際に死を持って解決するのであれば何千人、いや何万人も殺さなければならないだろう。
せめて、苦しめられているマンションの住人に代わり、私が迷惑ピアニストを殺すことに決めた。
まずは、ターゲットを確認しての行動パターンを把握することだ。
私はターゲットの容姿を確認することから始めようと、ルーフバルコニーの手摺に巣箱を設置した。
巣箱の中は、背に近い底に小さな穴を開けターゲットのベランダが映る角度に調整したピンホールカメラが仕込んであり、WIFIで室内のノートブックPCと繋げ監視と録画ができるようにした。
このピンホールカメラも当然CIAグッズで、高感度の上にズーム機能も備えており夜間でもかなり鮮明に捉えることができる盗撮が趣味のクズなら相当な金額を出しても絶対に手に入れたい代物だ。
朝から監視を始めてすぐにベランダに出てきたターゲットを捉えることができたのだが、4フロアー分下にあるので、当然かなり斜め上からの角度になる。
しばらく伸びをしたり、ストレッチをしたりして室内に戻っていった。
録画した画像をズームしたところ、年齢は40歳前後、髪は肩ぐらいまでのミディアムの黒、黒縁の眼鏡であることはわかったが、身長や顔までは把握しにくい。
また、自宅にいる時は化粧をしてい可能性が高いので、外出時は髪型の変化、眼鏡の形状やコンタクトの可能性などを考えると、やはり角度のついていないところでしっかり確認する必要があるようだ。
別人を殺してしまっては申し訳がない。
とりあえず、カメラの角度をふたつのマンションを隔てるコンクリート塀越しのターゲットのマンションの通路に向けた。
こちらは、ターゲットの部屋のベランダよりもさらに距離があり角度も鋭角になるが、ある程度容姿は確認できているので、ズームを最大にすれば出入を確認できるはずだ。
ピアノの講師をしているなら、決まった曜日の決まった時間に出入りする可能性が高い。
それが把握できれば、マンションから出てきたところを待ち構えて正面からターゲットを確認することも可能だ。
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