それぞれの未来

それぞの道へ

マンガ家になりたいと思っている子が正式にデビューすることになった。アニメ制作や声優に携わりたいと思っている子達が仕事が決まった、声優として事務所と契約してデビューが決定したと聞くことが増えた。


碧波はそれを止めようとはせず、おめでとうと称えて毎回送別会を計画している。その時には粗品を考えている。


赤松碧波の代名詞「石岡杏子と子グマのリナちゃん物語」のグッズを渡して握手をする。その意図は自分の功績を自慢をしたいというよりもここでやってきたことを忘れないで精進して欲しいと添えて渡すようにしている。


送り出した子達の同行は常に気になるのでネットで検索してどのような賞に応募をしているのか、アニメの配役は何かと調べるようにする。


アニメが放映が決定すれば録画して観るようにしていて来た当初の時と重ね合わせつつ観ると本人達が頑張って掴み、アフレコする姿には感慨深いものがある。


巣立っていく子の中には有名な映画に携わる、誰もが知るアニメのアフレコに抜擢されたとラインで届くと碧波も含め、社員全員で喜ぶ。


そして今いる子達に伝えることで自分達も頑張れば同じ様になれるかもと奮い立たせる要因にもなって向上心を掻き立てていた。


ある日、ハリウッドで行われる映画祭の授賞式に日本のアニメがノミネートされたとそのアニメ制作に携わる男の子、声優として参加する女の子からラインで届いた。副社長の白翔に相談してアメリカに渡米する。


現地に行って受賞されるかスゴくドキドキしている。

定刻時間になり、授賞式が始まって日本のアニメ作品は最優秀賞を獲得して自分の事のように嬉しい。


理念と少し離れているが、函館から日本文化を海外に発信しよう。株式会社赤松碧波にいた子達が携わるなら同じではないかと解釈している。


1人ずつコメントする機会が設けられ、マイクを受け取った女の子は通訳を交え、喋りだす。


「今回この映画で主役をさせてもらう事になりましたがその礎を築いたのは北海道函館市にある株式会社赤松碧波での経験が大きい。人気マンガ家として名を馳せた赤松碧波さんや声優の川越晴香さん始め沢山の方々に支えられてここにいる」


何を喋るのかと気になっていた碧波、だが株式会社赤松碧波が礎となったと言ってくれた事にはホントに嬉しく泣かないようにしていたが目から涙が溢れる。


終演後、外で待ち合わせをして男の子と女の子を誘ってご飯を誘い好きなものを注文していいとご馳走をする。あの時の発言の意図を尋ねると何も考えず思ったことをそのまま口に出したと笑っていた。


写真を撮ってグループラインに送り、お土産を買ってその日のうちに飛行機に乗って羽田を経由して函館に戻る。


最高のプレゼント

気がつけばアラサーを超えていた碧波。だが周りからは敏腕若社長として会社のイロハやノウハウを教えて欲しいと依頼が殺到している。


立ち上げたのは自分であっても1人で大きくしたとは全く思っておらず、バックアップしてくれている銀行や社員そして夢に向かって頑張る若人がいるから今がある。だから話せと言われても話すことは何もない。


自分のことよりも他人のことを常に考えている碧波、社員やそれぞれ目指す子達の誕生日になれば食事会を誘い、誕生日プレゼントを用意するくらい律儀。


その一方で自分の誕生日には無頓着で何歳になったのかすら自分で把握しておらず、また歳を重ねてたなアラサーの仲間入りなのかというくらいでいた。


白翔から碧波宛に全国の保育園、幼稚園から大学まで来て欲しいと依頼が来てたからいくつかピックアップして置いたから出張に行ってきて欲しい。チケットは後日渡すと告げられた。


東京行きで往復で新幹線が取れなかったのか行きは飛行機、帰りは新幹線とチケットが別々に渡される。


スケジュールを見ると数時間刻みで予定が組まれていてまるで夜まで帰ってくるなと言わんばかりの感じ。


七夕の前日、仕事を終えてそのまま函館空港から羽田空港に行って前乗りをして何を喋ろうかパソコンで考えている。


数年前に依頼が来て話す機会があって碧波のことを話したが何度やっても緊張はする。自分の言葉で何か記憶に残ればいいなと感じていた。


早朝に上野の中学校、次に大宮の小学校、お昼ご飯を挟み宇都宮の高校、そして新幹線に乗って仙台で降りる。夕方、大学で聴講生も含めて多くの人が訪れて碧波の話を真剣な眼差しに嬉しく感じた。


再び新幹線に乗って函館に戻る。車窓を眺めつつ白翔はどういうスケジュールを組んでいるのか。自腹で払うには高すぎるし、在来線で行くには時間がかかりすぎる。移動するならせめて近距離にして欲しい。


新幹線が新函館北斗駅に到着する頃、白翔からラインで疲れたと思うからご飯を食べよう。


店は予約してあるからと函館駅近くにあるお店のリンクが添付される。何か仕組まれているか振り回されているのか分からないとプリプリしつつもお店に着く。


自動ドアを開けるとお客さんは知っている顔ばかりで他にはいない。これはどういうことなのか分からず、手招きをする瑠那に案内されるがまま指定の席に座る。今から何が起きるのか怖くて不安。


豪華な食事が運ばれてそれを全員で食べつつお腹いっぱいになり、お店は電気が消える。プロジェクターを持って壁に映す。何が流れるのかドキドキする。


そこに映っていたのは碧波と白翔。懐かしいなと振り返りつつ最後まで見ていると再び電気が消える。何を企んでいるのかもう分からない。


登場したのはロウソクの灯火ともしびのケーキ、この時碧波は自分の誕生日だと気づいたら知らないフリをしようと演じることにした。


ロウソクを消して誕生日をお祝いしてくれ、最後に白翔が前に出て手紙を読み上げた。


「碧波へお誕生日おめでとう、小さい頃から従姉妹として接していたけど好きになってはいけないと自分に言い聞かせてきた。かわいくて誠実な碧波に憧れてマンガ家として人として尊敬しているよ。夢を叶えていくその過程にいられて幸せ。たまには自分のこともだいじにしてね。今日は誕生日おめでとう。プレゼントを受け取って欲しい」


白翔からは手紙と一緒に渡されたのは婚約指輪。嬉しさのあまりこれからも宜しくね、白翔と抱きついた。会場からは拍手喝采で会を閉じた。


嬉しい気持ちは山々だが凝りすぎ。喜ばなきゃいけない雰囲気なのはどうなのかな。結婚式の友人代表を瑠那、上司からの言葉をお願いをした。


かわいいウェディングドレスに身にまとい盛大な式を終えて外でブーケットを投げると瑠那が取った姿を見て碧波も嬉しくなる。


赤松碧波と黒木白翔、今までは従姉妹だったがこれからは家族になり新たな生活が始まる。

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マンガ家赤松碧波 佐々蔵翔人 @kochan884

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