碧波のために

サプライズ

七夕の日、碧波はいつものように午前6時に起きて黄緑色のワンピースに着替え、メイクをしてリビングに向かうと白翔は目を擦りつつテレビを観ている。


眠いなら寝なよ、休める時に休みなよといいつつトーストを焼きつつ牛乳とヨーグルトを白翔に渡す。朝ごはんを食べつつ何をしようか考えていた。


たまには家で何もしない日があっても思いつつこういう時じゃないとどこか出かける機会が中々ないなと考えていた。午前9時、白翔から半分に折られた紙を渡されて買ってきて欲しいとお願いをされる。


特に断る理由もなく家を出ていく。何を買えばいいのか確認しようと紙を開くと何も書かれておらず家に入ろうとするとラインが届く。


瑠那から桔梗信玄餅、拓人から浅草の人形焼、加奈から川崎大師の御朱印、隼人スカイツリーのクリアファイル、真人から東京タワーのぬいぐるみキーホルダー、由依から八王子にあるレアチーズケーキと何故かグループラインではなく、個別ラインでそれぞれ送られていた。


その上この順番で買ってその場所と一緒に写真を撮ることとコピペされた文章が全員から届く。所沢駅から新秋津駅行きのバスに乗って在来線で電車で立川駅に向かう。


立川駅から特急に乗って甲府駅で目的地のショッピングモールに行って写真を撮って桔梗信玄餅を購入する。次の目的地、川崎大師の御朱印を求めて電車案内アプリで検索をする。


特急を使っても約2時間半、これは何時に家に着くのか分からないと嘆きつつも来た電車に乗っては乗り換えてを繰り返す。


川崎大師に着く頃にはお昼を回っていて軽くおにぎりを食べつつ川崎大師で御朱印を買ったものと一緒に写真を撮って次の目的地へ向かう。


日本の誇るダブルタワーともいえるスカイツリーのクリアファイルとともに写真を撮って少し離れた東京タワーに行ってかわいいぬいぐるみキーホルダーとともに東京タワーとともに写真を撮る。


最後に特に指定されてはいないものの八王子駅周辺で美味しそうなケーキを白翔とアシスタントさんの人数分を買って外を見ると午後6時ゴロゴロ、用事もないのに終日外にいたのいつぶりだろうかと考えつつ所沢に帰る。


疲れて家に帰ってリビングに行くと突然クラッカーが鳴る。「碧波、お誕生日おめでとう」


誕生日……。七夕のこの日は碧波の21歳の誕生日で多忙のあまり自分の誕生日を忘れていた。


お祝いしてくれるだけで嬉しいのにテーブルにはオードブルとお寿司が並べられていて涙が溢れる。


ケーキと桔梗信玄餅を冷蔵庫に入れてみんなでご飯を食べる。周りにはかわいい飾り付けがされていてその中で白翔も含めて8人で食卓を囲むのは初めてで小さい時、碧波はどういう子だったのかと話をしている。その後、ケーキを食べている。


会の最後に碧波はなぜ電車で色々な所に行かせたのか理由を聞いてみた。


場所は特に意味はないよ、毎日神経尖らせてやっている姿をここにいる全員が見ているから何も考えずに観光気分になって欲しいと思ってさ。だから写真撮って思い出を作ってもらいたくてね。


思い返せば普段見ない車窓や光景に心を踊らされたのは事実、準備するために碧波を家から出すのが目的だったのかなと思いつつも思い出に残したい思い自撮り棒で8人揃って写真を撮り、グループラインで送る。


誰が計画して実行しようとしたのか分からないがスゴく嬉しい日となった。


アワード

誕生日祝いをしてもらいまた翌日からマンガを描く。

碧波が望んで始めた月刊「新従姉妹恋愛物語」を連載することになったが週刊と並行するのは心身ともに体力が必要だと感じている。


アシスタントさんたちも大変だろうな、仕事を増やして申し訳ないなと感じつつもこれが同じ雑誌の月刊ではなく、株式会社赤松碧波を設立してやっていたらと考えると身震いする。


初の週刊、月刊ともに発売号にて1位を獲得する。これは手に取ってくれている読者がいるから、そして碧波のサポートをしてくれているアシスタントさんの6人がいるから。結果として示すことが出来てよかった。


その中で精神的支柱になっているのは瑠那の存在。笑顔で拍手してくれたかと思っていたと思うと次の瞬間、パソコンでカタカタして次のスケジュールを組もうとしている。切り替えの速さに驚く。


時は刻一刻と流れていく。梅雨が明け、猛暑の夏が過ぎ、紅葉狩りの季節が過ぎてあっという間に師走しわすを迎える。最後をいい形で締めるためにいつものようにマンガを描いている。


12月中旬、年内最後の発売号で1位を獲得して残りは翌週の週刊最後に向けて準備を始める。


瑠那から思いがけないことを伝えられる。

週刊が終わった翌週にマンガ家年間大賞っていうのがあるけどそれに碧波がノミネートされているよ。結果は当日ホテルで発表されるみたい。服装の指定は特にないみたいだけど正装で行った方がいいね。


それを聞いてノミネートされただけでも嬉しくて大賞を取れなくてもいい。他のマンガ家さんとあってどのように作品を描いているのか聞ければ嬉しい。それくらいの気持ちでしかなかった。


会場には観客席みたいなものはなく、アシスタントさんたちは碧波家で結果を待つしかなかった。グループラインで全員で集まって大賞を取ったらクラッカーで鳴らそう。これを見た碧波は祈気持ちで待っていた。


当日、碧波は会場に行くと名だたるマンガ家さんたちがいる中で自分が同じ空間にいるだけで嬉しい。時間になるまで他の方々と挨拶をして過ごしていた。


まず、週刊の発表で赤松碧波の名前が呼ばれてトロフィーを受け取る。次に月刊でも赤松碧波が受賞して年間大賞として赤松碧波が3冠を始めて獲得した。


副賞として温泉旅行2名様をプレゼントされる。年末年始、白翔とアシスタントさんを誘って行こうかなと考えていた。


家に帰ってトロフィーを掲げてみんなで冷蔵庫にある桔梗信玄餅を食べてお祝いをした。少し早い冬休みを迎えることになる。

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