売上
順風満帆
中学生天才マンガ家として脚光を浴びて途中、休載を挟みつつも数年に渡り走り続けてきた。悔しい思いをしつつも名実ともに人気を掴んでいた。
雑誌の掲載や巻頭カラー、単行本やアニメ化と同じステージからば誰もが夢見る光景をいくつも見てきた。そんな碧波だが低い腰で誰にでも優しく丁寧な対応をする。
白翔は碧波にその理由を尋ねてみた。
碧波は名実ともに人気マンガ家なのにどうしてそんな謙虚なの?
「謙虚なのかな?考えたことない。作品を描いているのは赤松碧波かも知れないけどそれを読むのはお客さんだからね。読者が見てくれなきゃ意味がない。雑誌であれ、単行本であれお金を払って読みたいと思って買ってくれている人がいる。その人たちがいるからこそまたマンガを描こうってなる。ありがたいことにアニメにもなって原作を読もうって思う人もいると思うからね」
自分が人気マンガ家になりたいから描いている訳ではなくて読んでくれている人たちがいて人気マンガ家になった。
碧波がフォーカスしているのは自分ではなく読者。いつも口ぐせで言っているのは届いたお手紙にはそれぞれに手書きで返したいが中々それは難しい。だからこそ作品でお礼をしたいと言っている。
アシスタントの役目も務めている白翔。
忙しいだろうとマンガの時に私用の話や気になることは後で聞くようにしているがどうしても聞きたいことは話しかける。その時はどんなに忙しくてもペンを置いて目を合わせてくれる。
優しい人柄が作品にも表現されているからこそ読者も惹き付けられて人気になると解釈をしていた。
プルル、プルル。碧波のスマホが鳴って河島さんからだと思ってみると石岡杏子役の晴香だった。
要件を聞くとアニメ雑誌の取材で函館に来てるから時間があれば食事をしたいとのこと。
スケジュールを確認するとこの日までに進めなきゃいけない、そう考えるとあまり遠くには行けない。午後9時に家の近くにあるファミリーレストランに来てもらうことにした。
碧波はこの日までやる予定のところまで終えて向かうと既にお店の前で晴香は待機をしていた。晴香ちゃん遅くなってゴメンねとお店に入った。
カルボナーラと和風きのことそれぞれ注文をして待っている間話していた。
晴香ちゃん、最近スゴい活躍だね。時間がある時に勝手にエゴサーチしてネットニュースをみるともっと頑張らなきゃなって思うよ。努力が結果として出て、アニメの主役に選出した身としても誇らしいよ。
晴香は名が知れ渡るキッカケを作って下さったのは他でもない碧波さんだと思っているので。石岡杏子、そして蕾のリグレット。
歌詞が身に沁みるし川越晴香に取って大切な曲なので歌番組やライブで歌う機会があれば大切に歌わせてもらうので。
届いたカルボナーラと和風きのこを食べて碧波が会計を済まして帰ろうとした時、晴香は手紙を渡した。嬉しさのあまり、抱きついて頭を撫でた。
お互いに大変だけどネバーギブアップだね。
略してネバギバの気持ちを忘れずに頑張っていこうねと告げた。
何でだろう
ある日、碧波が学校帰りにショッピングモールに入る書店に入ると「石岡杏子とコグマのリナちゃん物語」は嬉しいことに売り切れで増販と書かれていた。ならばネットならどうなのか確認するとこちらも売り切れで在庫切れになっていた。
自分が描いたマンガであるがなぜこんなにも人気なのかとフシギに感じていた。書店でサイン会したらどれくらいのお客さんが並ぶのかと妄想していた。
帰り際、制服を着た女の子たちがある発言に驚く。
「ねぇ、知ってる?石岡杏子と子グマのリナちゃん物語のグッズが発売されるみたいだけどめっちゃかわいいってウワサだよ〜」
気のせいか?今、石岡杏子と子グマのリナちゃん物語のグッズが発売される?うそ、碧波のもとには何の情報も入っていなかった。
家に帰ると河島さんからの不在着信でグッズの話。試作品が出来たら送るって玩具メーカーの方から連絡があったよ。それを見てよければそのままいくから。
そして数日後、家にダンボールが届いた。
中には主人公の石岡杏子、子グマのリナちゃんそれぞれのぬいぐるみや抱き合わせぬいぐるみの他にキーホルダーや下敷き、ペンケース、ブランケット、トートバッグ、Tシャツ、パーカー等が入っていた。
ダンボールに入れて送り返すのがもったいない。このかわいいグッズをそのままもらいたいと思うほど。
早速、河島さんに電話して想像以上の出来に感動して試作品をそのまま欲しいとお願いをする。
ラインで確認するからちょっと待っていてと電話を切った。1時間後、玩具メーカーが試作品じゃなくて発売するやつを送るから連絡先教えて欲しいって言ってたからラインで送っておいて。
連絡先や住所を河島さんにラインで送った。
グッズ販売当日、碧波と白翔は売れ行きが気になって近くのショッピングモールに行くとグッズを持って会計に並ぶ姿を見て安堵な表情を見せる。
小さい子どもが買いたかったのにと泣いている様子をみると嬉しくてかわいいと愛おしく感じていた。沢山並べられていたグッズは僅か1時間程で売り切れてしまうくらい盛況だった。
数ヶ月してするとある問題が起きていた。
それはネットショップで正規の値段ではなく、高額な金額で販売を販売されていた。その様子を白翔から聞いた碧波はコメントとして老若男女問わず沢山の人に買って欲しいので正規の値段で買うようにと警鐘を鳴らした。
ブームというのは火みたいなもので付いたものはいつかは消える。そう考えると恐怖を感じる。
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