世間を巻き込む

逆オファー

碧波のもとにアニメの主題歌をやって欲しいと依頼が来たが、断って主役の石岡杏子役の川越晴香にすると河島さんを通して決まり、正式に決まった。

前に連絡先を交換した晴香からラインが届く。


「碧波さん、今回主題歌を担当することが正式に決定し、作詞して欲しいとお願いされましたが中々思い浮かばなくて……。そこで晴香に力を貸してもらえないですか?それでなければ今回はなかったことに」


流行の曲に疎い碧波。白翔に好きな曲を聞いたが音楽には疎い。ネームを予定通りのところまで終わらせて碧波と白翔の2人で動画サイトで気になったタイトルの曲を数曲聞いて気になる歌詞の単語をメモする。


暗い闇、太陽、導く、見えない壁、ハッピー、走り回る、ビギナー、泣いた夜、チャレンジ、蕾、咲く花


何も出来ない 今日を嘆く

悔しさに泣いた 悲しい夜

見えない壁 見えない敵

思い描いた 未来に導こうよ

初心者 だからハッピーな気持ちで


単語を歌詞にするのってとても難しいと感じる碧波。


そして核となる曲名に頭を悩ませていた。アニメソングが好きな人に手に取ってもらいたいのはもちろん、普段アニメソングは聴かないがこれだけは好き。そう思ってもらえたらと考えたら雑には出来ない。


そこでいくつか候補を考えた。

周りを照らすリナちゃん

暗い闇と輝く太陽

チャレンジ

過去と未来

蕾のリグレット


少し考えた歌詞と曲名の候補をラインで晴香に送る。

その中で蕾のリグレットを選択する。

それを踏まえて碧波は拙いながらも他の楽曲がどのように歌詞を書いているのかを参考にして書き上げた。


ラインにあるノートに歌詞を貼り付けて送信をする。

レコード会社に蕾のリグレットが提出されて作曲してもらい、晴香はレコーディングの日を迎える。


どんな様子でレコーディングをしているのか、これから他のマンガを描くにあたって参考にしたい。


河島さんに邪魔しないようにすみっこて見ているから参加させて欲しいと電話でお願いをした。


確認してもらうとレコーディングに参加することが出来て作曲をしている中で歌詞を変えるかも知れないから参加して欲しい。いてくれた方が助かると返事が返ってきた。


レコーディング当日、石岡杏子役を務める川越晴香が歌う姿を見てどんな表情で歌っているのか?どんな時にカットされるのかをこと細かくメモをしていた。


歌詞の直しで歌い直しなどがあり、2時間くらいで撮り終えた。


その後、晴香は別の会場でミュージックビデオの撮影が入ってるとのことで軽く会釈をして碧波は帰ろうとする。


晴香は走って碧波を追いかけてきた。


完成したらミュージックビデオや非売品のグッズをお届けしますね。お互いに声優とマンガ家と立場は違いますがまたお会い出来る日を楽しみです。赤松碧波さんのファンであり続けますと宣言する。


碧波と晴香は握手を交わして何かイベントに参加するねと言い残してレコーディングが行われた場所を去って行った。


好きなシーン

毎月有難いことに沢山のファンレターが編集者に届いてそれを河島さんが家に郵送してくれる。連載が決まって、単行本が発売される。


そしてアニメ化となるごとに何度も書いてくれる人もいれば、新規で書いてくれる人とその数は数通単位ではなく、ダンボール単位で送られてくることに嬉しさと驚きがある。


その中でも多くの人が同じシーンを挙げていた。


「石岡杏子が子グマのリナちゃんを守る対猟友会がクマを麻酔銃で狙っている」


このシーンは作者の碧波も拘っている場所でもあってそこを気に入ってくれるとなるとホントによかったと感じている。リナちゃんの攻防戦と呼ぶ人すらいる。


この背景にはあることが原因があった。

主人公の杏子は子グマのリナちゃんを散歩させるようにリードを付けていたが猟友会に銃を向けられ、杏子はリナちゃんを抱いて逃げた。


その対策として杏子はホワイトボードを掲げていた。


「子グマのリナちゃんは人を襲わないし、作物を荒らしたりしないので銃で打たないで。人懐っこい子なのでかわいがってあげてね」


すると人が集まってリナちゃんの頭を撫でたり一緒に写真を撮ったりと街中のアイドルとして人気者となってテレビ局の人がこぞって集まる程の人気者となった。


リナちゃんは食べられるものが日を追う事に増えていく。最初はニンジンなど緑黄色野菜が多かったが徐々にチョコレートやクッキーだけでなく、北海道の大豆を使ったどら焼きが好物で食べている。


日によっては主人公の杏子よりも食べているリナちゃん。それでも全然大きくならず、病院に行っても個体差がある。


最初は近所の人気者、テレビ局が放映してからはリナちゃんを見るために北海道に訪れる人がいるほど。


この年に生まれた女の子はりなちゃんが最多でウワサではペットにも付ける人がいるとされていた。


碧波と白翔はネットニュースで見て、まるで社会現象のようだなと笑いながら話していた。


だが自分の描いた作品が色々な人に影響を与えていることに喜びと責任を感じている。そしてこの年の流行語大賞の候補には「石岡杏子と子グマのリナちゃん」がノミネートされる。


その前に行われる検索ワードランキングが行われ、そこでは大賞を獲得をする。時が過ぎ、ノミネートしたされている候補は待機している中、流行語大賞にも選ばれて碧波はトロフィーも天に掲げた。


スピーチで碧波はこう述べた。


「今年は皆さんが雑誌、単行本、アニメと見てくれたおかげて取れたと思っているのでこれで慢心することなく精進していきたい」


会場は拍手喝采で司会者から次は映画化ですねと言われるとそうなれたら嬉しいと答えた。

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