緊張
初回放送
杏子と子グマのリナちゃん物語のアニメが放送される前日から碧波と白翔は前日からドキドキしていた。どんな感じになっているのかと気になっていた。
当日、土曜日の夕方という時間帯で多くの人が視聴してくれるのではないかと感じていた。
第1話だっからなのかオープニングは流れることなくそのままアニメがスタートする。
自分の描いた作品が雑誌に載って、単行本になる。最終的には碧波自身が決めた声優さんたちとはいえどキャラクターが喋っている姿は新鮮で不思議な気持ち。
始まりにこのような文面から始まった。
「森で暮らしていた子グマのリナちゃん。ある日親グマと共に街に下りて食料を探していた。まだ何も食料を取っていないクマたちにクマが出たと麻酔銃を向ける。子グマのリナちゃんを守るために親グマが盾になって守ったが親グマはどこかに連れて行かれる。リナちゃんは逃げるように公園に身を秘める。この後どうなるのか?」
主人公でもある石岡杏子が友達と遊んでいていた帰りに何かを見つけて公園に向かう。すると震えている子グマを見つけた。
その時、こんなかわいい子グマが公園にいるのはおかしい。群れから外れたのかなと悟った。家に連れて帰って保護して森に返そうと考えていた。
家族からは大反対された。
どうやって飼ったらいいか分からないし、保護したら自然に返す時につらくなる。
仮に子グマがこの家に居たいってペットとして飼うとなると死んだ時にどうするの?動物を飼うと言うのはどういうことなのかいま1度考え直すように伝えられる。
とりあえず家にあるダンボールの中に子グマを入れて近くの神社に隠した。
翌日も杏子は説得をして保護という形で飼うことになって夕方に再び子グマを連れて帰ってきて名前をリナちゃんと名付けた。
弱っているからなのか木の実をあげても食べない。試しにニンジンを置くと美味しそうに食べていた。食欲旺盛なのにどれだけ食べても大きくならない。
この時、友達に子グマのリナちゃんを飼っていることを伝えるかどうか迷っていた。それは周りの人たちに懐くかどうか。そして通報されて保健所に連れて行かれたらどうなるのかと考えると中々言えなかった。
だがそれは杞憂で終わる。
杏子の友達に子グマを飼っていることを伝えると見たい、家に行きたいと何人かの女の子を招いてリナちゃんを見せた。するとかわいいと頭を撫でるとニコリと笑う。この時、人間不信かと思っていたがそうでもなく人懐っこい子だと安心した。
帰りに保健所には絶対に言わないでと念押しをする。
家族には保護と言っていたがそのつもりは全くなかった。杏子は最初からこの家で飼うつもりでいた。
依頼
第1話は平均視聴率が20%超えを達成した。
テレビ離れを囁かれている昨今、2桁を超えれば当たりと言われる時代で数字はスゴいとテレビ業界でも話題となっていた。
そのテレビ業界からある話が挙がっていた。
それは作者の赤松碧波に「石岡杏子と子グマのリナちゃん物語」の主題歌を歌って欲しいという話。
碧波がそれを知ったのはスマホで調べ物をしている時。たまたまニュースで流れてきた。
だが赤松碧波はマンガ家であって歌手ではない。
しばらく時間が経って河島さんから正式に話が来たが断った。すると誰かいい人を紹介して欲しいと言われるが歌手の知り合いはおらず誰を起用するか悩んでいた。
第1話が終わって数日、碧波は気分転換に学校近くの喫茶店に立ち寄っていた。
席に見た事のある人がいた。
それは石岡杏子役の川越晴香ちゃんだった。邪魔をしたら悪いと少し離れた席に座ると目が合ってやってきた。
碧波さん、お久しぶりですね。石岡杏子役を頂いてからオファーが沢山来るようになってローカルですが北海道限定アニメにも抜擢してもらえるようになってと笑顔で答えていた。
その言葉を聞いて碧波も嬉しさのあまり笑顔になった。コーヒーフロートを注文すると晴香から質問をされる。
「碧波さん、お聞きしたいのですがどうして駆け出しで誰も知らないような晴香を主役に起用してくれたのか、それが知りたくて……。答えてもらえたら何でもするので」
どうしてか?そうだね……。届いたコーヒーフロートを飲みつつこう答えた。
「マンガ家は雑誌に載る作品を読者に届けるのが仕事。でも弱肉強食だから人気作品は前の方、人気がない作品はどんどん後ろに追いやられて最終的には打ち切りで雑誌から消えていく。それと同じで声優さんもアニメのキャラクターに声をあてる仕事。マンガ家と同じで人気商売だからこそ誰にでもチャンスを平等にするために
晴香は理由を聞くなり涙を流した。
養成所に入ってレッスンしてきて卒業ってなっても声がかからず、同期は大小関係なく決まっていく姿を見て辞めようかと考えていて。次がラストチャンスだと思っていたので……。
それは晴香ちゃんが諦めずに頑張った賜物だね。じゃあ碧波からもお願いがあって。
「石岡杏子と子グマのリナちゃんの主題歌をお願いしたい」
理由として歌手の友達がいる訳でもないし、声優さんがアニメソングを歌うことも珍しくないことからと頭を下げる。
だが晴香は重大な大役を引き受けることは出来ないと答えるが質問に答える時、何でもするのでって言ってたから答えたと少しプリプリしながら訴えた。
晴香は新しい可能性として引き受けることを決めた。
そして河島さんに電話をして正式に川越晴香さんにお願いすることを決めて連絡先を交換して帰った。
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