初挑戦
試し
碧波は河島さんに次作品の大枠が決まったことを伝えた。
タイトル、クマの名前と主人公の名前が決まって後はネームにして描き上げていく工程かと思われていたが碧波の表情は明るくない。
ある程度こういう風に描こうと確立が出来ていればいいけど何も決まってないから不安。週刊でやっていけるか心配。白翔、どうしよう……。
その話を聞いた白翔は困った時に助けになるのは担当だよ。だから河島さんにどうしたらいいか聞いてみてアドバイスをもらえばきっと答えが見つかるよ。
それを聞いて碧波は河島さんに電話をする。だが仕事が立て込んでいて連絡が中々取れない。毎週のように打ち合わせをする週刊でやるのではなく、月刊にシフトするのもひとつの手。そうなると同じ会社内でも部門が違うように担当者さんも変わってしまう。
数日経ったある日、河島さんから電話がかかってきた。
「碧波ちゃんゴメンね。他のマンガ家さんが締切近くになっても終わってなくてつきっきりで手伝っていてさ。電話くれてたってことは何かあった?」
碧波は次作品を描きたいけど週刊でやっていく自信がなくてかと言って月刊に移るのもってことを伝えた。
その話を聞いて河島さんはある提案をする。
ならば読み切りに出してみたら?今月末にプロアマ問わず応募出来るのがあるからそこで批評を聞くのも手だと思うよ。強要するわけじゃないから参考までに。
忙しいから電話切るね。
読み切り、やってみようかな……。最初に描いたマンガを編集社に持って行ってそのままとんとん拍子に連載が決まった。
こうしてプロのマンガ家として居られるのは読者アンケートを出してくれる人、そして毎週楽しみにしてくれるファンの人たちがいてこそ。その人たちのためにも再びマンガを届けたい、その思いに駆られ読み切りを描くことを決めた。
読み切りと連載の違い、それは完結するか続きがあるかの違い。提出期限までキャラクター、そしてストーリーを練っていこうと碧波は決めた。
主人公のキョウコ、そして子グマのリナちゃんはかわいく描くのはもちろんのことだが、どうしたら応援したくなるようなキャラクターになるか白翔と話し合っていた。
ペッショップで買ってきて懐くのでもいいが、広大な地でもある北海道なら群から離れてしまって野良クマになっている子グマを拾って家で飼育するのでもいいのではないかと結論に至った。
ひょんなことからキョウコの家に住むことになった子グマのリナ、この設定でいこうと決めた。
明けても暮れても
河島さんのアドバイスもあって次回作、「杏子と子グマのリナちゃん物語」を読み切りに出すことを決めた。これで順調にいくと碧波本人、そして白翔もそう思っていた。思っていた以上にペンが進まない。
碧波は夜も中々寝ることが出来ず、寝言でどうしようと悩んでいて朝を迎える日も少なくなかった。寝不足で起きてくる姿を見て白翔の両親も含めて心配をしている。
白翔としても仕事で根詰めているとはいえ、寝不足だと体調を崩して読み切りどころではないと感じていた。
学校帰ってから白翔は近所にあるお菓子屋に向かう。
最近、甘いものを摂取していないな。碧波に甘いもの食べて元気になって読み切りを進めてもらいたいと考えていた。
何にしようかとショーケースを眺めていると美味しそうなどら焼きを見つけて人数分買う。
再び家に戻ると碧波と赤星光子、杏珠姉妹が訪れていた。どら焼き買ってきたことを母親に告げると友達が来てるからあげな。
お母さんとお父さんはまた買って食べるから気にしないでみんなで食べな。その言葉を聞いて部屋に入る。
碧波お帰り。赤星、お姉さんよかったらどら焼き買ってきたからみんなで食べながらマンガを考察しよう。
白翔と同級生、杏珠はどら焼きを半分に割るとどら焼きにはずっしり詰まった小豆にクリームが入っていた。美味しそうだなと食べた時、部屋に大きな声が響き渡る。
「コレだ、白翔に聞きたいけどこのどら焼きどこで買ってきたの? この小豆はどこのやつを使っているか分かる?」
単純に美味しそうだから買ってきたから小豆がどこのかまでは分からない。買ってきたのは家を出て左に歩いて5分くらいのところだよ。
そう伝えると碧波は部屋を後にしてどこに向かった。
しばらく白翔、光子、杏珠の3人で沈黙した時間になる。思わず白翔は学校でもこんな感じなのかと呟いた。
学校でもこんな感じだよ。友達と話していても突然スマホにメモをしだしたり、何を思ったかのか走って図書室に調べに行ったり。慣れてるとはいえ驚くね。
数時間経ってラインしても帰って来ないことに心配して探しに行こうかと思っていたら碧波が帰ってきた。
あのどら焼きに使われている小豆、北海道の使用しているって。主人公のきょうこ、子グマのリナちゃんはどら焼きが好きな設定にしよう。決めた。
人間はともかくクマってどら焼き食べるのかな?碧波以外の全員が同じことを考え、次に出てきたのは架空の話だから別にいいのかと納得をしていた。
この時マンガ家赤松碧波は考えてマンガを描くタイプではない、
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