参加
作品の向上
次回の打ち合わせにも白翔は碧波とともにファミレスに訪れていた。
河島さんの意向でどこにでもいるしがない中学生、黒木白翔も従姉妹恋愛物語も打ち合わせに加わることが決まる。軽くだがネームの手伝いやトーン貼りをしていたことは碧波から伝えられていた。
正直いたら邪魔になるのではないかと考えていた白翔。作品を描く碧波と河島さんはそうは考えていなかった。白翔君の力が必要だと念押しされる。
「白翔君、どうすればもっとよくなると思う?いち読者として客観的に聞きたい。教えてくれ」
正直、作品を良くするのは河島さんの仕事ではないのか。毎週送られてくるアンケートの結果で作品の良し悪しが決まる。そんな大事な役目を務まるわけがない。
とはいえずっと同じ作風ではマンネリするし飽きられる可能性もある。その反面、これがいいから読みたいという人がいることも事実。難しいな……。
碧波は悩んでいる白翔を見ていた。
河島さん、チョコレートパフェを注文していいですか?
いいよ、気にしないで食べてと河島さんの許可をもらって注文をする。しばらくしてチョコレートパフェが届くと碧波は食べずにそっと白翔に渡す。
「甘いものでも食べてリフレッシュして。碧波もこの作品をよくしたい、だからそのためには白翔の力が必要。アンケート結果のことは考えなくていいよ、白翔が責任を感じることないからさ」
その話を聞いて河島さんも責任は全て取るから気になることがあれば遠慮なく言って欲しい。
そう言われ、白翔は参考程度にと前置きして話し出す。
男は揺れるものが好きだからミニスカートやワンピースで着飾っている人が好みの人、髪型で言えばポニーテールやツインテール、ピアスとか付けていると魅力的に思う人がいる一方でそれが全員かと言ったらそうではない。
ショートカットが好きな人もいるしデニムを履いている人がいるから友人のキャラクターやページやコマによって変える方がいいのかな。
後は夏だったら麦わら帽子、冬だったらダッフルコートを羽織っていてもいいのかも、あくまでも主観的ですがと述べた。
碧波と河島さんは必死にメモをして聞き取れない部分は再度確認をしていた。
それを基に次回のネームをして見てもらって完成したものを渡す。数日後、河島さんから電話がかかってきて速報1位になった。
碧波と喜びを分かち合おうとするがあくまでも速報1位、発売号で1位を取らなきゃね。
クールに振る舞うがニヤけていて嬉しさが綻んでいる。素直に喜べばいいのにと感じていた。
そしてそのまま発売号で1位を取って人気マンガ家の階段を登り始めることになる。
変更
速報、そして発売号の喜びに浸って次号に向けてネームを描き始める碧波と手伝いをする白翔。その2人に思いも寄らない電話がかかってくる。
それは担当が河島さんから新しい担当の人に代わるから挨拶をしたいとのことでファミレスに呼ばれる。
碧波はペンを置いて白翔とともに家を出る。
注文をして河島が名残惜しいと言ってくれつつもつぎの平川という男性に引き継ぎをして次のところに行くと足早に出ていった。
河島から挨拶があった
この時はいい担当の人だなと感じていたが実態は違っていた。
まず従姉妹である白翔は無関係として追い出される。碧波がこの作品がよくなったのも彼のおかげで必要なのでと言っても全く聞く耳を持たない。白翔はこれからは打ち合わせには参加させないと明言される。
マンガ家としてだけでなく、従姉妹として、彼女として碧波が心配で仕方なかった。
白翔の予想はズバリ当たってしまう。
ずっと手伝いをしているからこそ小さな変化に気づくこともある。碧波からこのようにしてと言われてやるが何か違うなと思いつつやっていた。平川さんの意向だろうがこれでは順位が下がると感じていた。
そして速報、発売号では圏外と聞いて碧波は落ち込んでいた。順位を気にしないといいつつも順位が下がることは喜ばしい事ではない。
次号に向けて打ち合わせ前に方向性を決めたいと碧波のもとに電話がかかってきて出かけて行った。前のように戻してほしいと強く希望していた。そうすればファンが少しでも帰ってくると感じていたからだ。
しばらくすると碧波が帰宅するが俯いて大粒の涙を流してとても声をかけられる雰囲気では到底なかった。しばらくだんまりして口を開く。
「ねぇ白翔、この作品にパンチラって必要だと思う?露出を増やさないと男の子から人気出ないの?」
そんなことは絶対にない、平川さんに抗議しよう。そして担当を変えてもらおう。それがダメなら他のところで書けばいい。少年誌はここだけじゃない。
白翔の気持ちは嬉しいけどそうしたらもうマンガが描けなくなる、他のところに根回しして掲載してもらえなくなる。そう考えたら条件を飲んでこのまま描き続けるのが妥当だと思うの……。
担当の平川さんに直接言ってもダメだと思い、白翔は違う方法を考えていた。
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