人気と批判

エゴサーチ

居候いそうろうしているとはいえ、毎日学校に行って授業を受けて課題に取り組みつつもマンガ家として活躍をしている碧波を尊敬していた。休める時は心身ともに休んで欲しい、そう思っていた。


従姉妹赤松碧波として、彼女赤松碧波だけでなくマンガ家赤松碧波はどのような評価を受けているのか気になっていた。


パソコンで「赤松碧波」を検索するとマンガ家サイトに賛否が書かれていた。中には読むに絶えないものもある。


名誉毀損めいよきそんで被害届を出した方がいいものすらある。何も知らないで適当なこと書きやがって、怒りのあまりあることないこと書くな。事実に基づいてかけといつも以上に感情的になっていた。


碧波が学校から帰ってくると話があると部屋に呼ぶ。


エゴサーチして碧波の批判が来ていることに苛立ちにあまりにも酷いものには警察に言って被害届を出した方がいいと思う。ネットだから何でも言っていいわけではない、印刷して名誉毀損で訴えようと伝えた。


白翔、ありがとう。中学時代も今の高校でもマンガ家として、作品に対しての賛否はあるからね。


警察に名誉毀損めいよきそんだと被害届出したら本業に支障が出る。だから警察には行かない。仲のいい女性マンガ家さんとのやり取りしていてみんな賛否があるみたい。


自分では気がつけないいいところや悪いところを教えてくれる。それは担当の人からファンレターや票数だけ気にすることにしてる。エゴサーチする時間もないし。


マンガを描いた人が批判するならともかくそうでない人が批判するのはどうなのかな。碧波の意向で被害届を出すことはしなかったがどうも許せない。


何事もなかったかのように制服から私服に着替えて新聞をしいてマンガを描き始める。彼氏として、従姉妹として碧波のために何か出来ないかと模索している。


参考までに

短い時間で手際よくマンガを書いている。邪魔をしないようにと常に心がけているが同じ空間にいるのに見るのはみんなと一緒のタイミング。


素人が何かをしようとすると素晴らしい作品を汚すことになるのでは。


予備知識ではないがパソコンで調べて出来ることがあればいいな。そう思ったがネーム、ペン入れ、ベタ塗り、トーン貼りと何やら難しい言葉が並ぶ。


リビングでマンガを描く碧波、疲れたのか腕を伸ばしてひと息ついていた。邪魔をしないようにと冷蔵庫からオレンジジュースとクッキーを持っていく。


白翔、ありがとう。ちょっと見て欲しいものがあるからと言ってペンを置いて紙を渡される。それは次号のネームで見て欲しいとのこと。


これってネームってやつだよね?そんな大事なものを他人に見せても大丈夫なの?担当の人みたいにここがよくてここが悪いとか言えないけど……。


「他人ってそんな寂しいこと言わないでよ。従姉妹だし、何より好きな人との作品を描いてるのに。客観的にキャラをこうした方がいいとか、セリフをこうした方がいいとか聞きたかったのに……」


それを踏まえて再びネームを見る。


これを1人でやっていることに驚く。絵もストーリーも男女問わず好かれるような感じ。碧波の顔を見ると何かアドバイスあるでしょ。使うかどうかは別として気になること何でも言ってという顔と雰囲気をする。


「女の子だけど、かわいいキャラクターだからネックレス付けてもいいのかな。個人的には髪の長い女の子がヘアゴムを口に咥えて紙を結ぶのはドキってする」


イメージとしてはこういう感じ?

ヘアゴムを口に咥えて髪を束ねてポニーテールにする。参考になったか分からないけどドキってした?


あまりのかわいい姿に言葉が出ず、固まってしまう。

まいかいじゃなくてここぞっていうシーンに使って欲しい。そう強くお願いをする。


碧波はメモ帳に書きながら他には何かないのかと尋ねる。


男の子のキャラクターやストーリーについてはどうかと聞かれる。だがこればかりは自分だったらどうするか、仕草はどうかと自分のことを振り返る。


理想を詰め込みすぎると現実味がないし、かといってあまりにもポンコツというのもよくないと考え、このままの方がいいかなと提案をする。何かあればまた伝えるとようにする。


参考になったか分からないが、アドバイスを踏まえて再びネームを描き直す。2枚を描いた上でどちらがいいか尋ねる。


すぐに取り入れて出来るあたりはやっぱり天才だな。もしこれでネームが通ってと考えると何とも言えない気持ちになる。自分が従姉妹恋愛物語に携われている。そんな事があるのかなと妄想していた。


金曜日、碧波はいつものようにファミレスに行って打ち合わせに行く。2枚のネームを担当に渡す。


「……。僅かな違いかも知れないけどそれが全体のイメージが変わってくる感じだね。誰かに手解きしてもらった?」


白翔は家を出てそろそろ打ち合わせが終わった頃かなとファミレスに向かう。電柱からファミレスの中を伺うとまだやっているような感じだと陰で待っている。


しばらくすると中にいる碧波が立ち上がってお店から出ていく。するといることを気づいていたかのように腕を掴み、ファミレスに入っていく。


「こちらが従姉妹で彼氏の黒木白翔君。彼から色々アドバイスをしてもらってネームを描いたため異なるネームを描いて持ってきたのが経緯ですかね」


初めましてマンガ家、赤松碧波さんの担当をしている河島恭太かわしまきょうたと挨拶をした上で次回からは碧波さんと一緒に白翔さんも一緒に来てください。


マンガ家でなければただの中学生がプロの仕事場に参加させてもらえることに驚き。申し訳ないがこれもひとえに碧波が頑張っている証だなと感じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る