分からないことだらけ

やり取り

函館に戻ってきた白翔は毎日のように碧波とメールをしている。近況や運動会の写真、学芸会での写真を送ってくれたりとしていた。


近くに住んでいれば運動会や学芸会を見に行くことも出来たかもしれないがなんせ函館と旭川では気軽に行こうと思っても行けない。


どんな様子だったのか現像して自宅に送って欲しいとお願いをすると恥ずかしいけどいいよ、楽しみにしていてねと待っていた。


しばらくして自宅に届いた修学旅行のお土産と写真を見ていてこういう感じだったのかとそこにいるかのように思えてきた。


碧波は優しくてかわいいな、気がついたら会っていなくても頭には碧波のことばかり。やっぱり好きなんだなと再認識する。あの夏は夢のようなことばかりだったなと振り返る。


4月、他の地域ならば春になって温かくなってくる場所が多いが北海度はまだまだ先の話。


旭川は寒いかな、メールでのやり取りが続いているのは嬉しいがたまには声が聞きたい、携帯が欲しいなとそんなことを考えてパソコンでメールを送っていると新着のメールが届く。


小学校の卒業式に着た袴の写真と中学校の入学式の制服の写真が送られてきた。やっぱりかわいい。


中学校では何部に入るのかな、函館に来る機会があれば応援に行こう。出来るのはそれくらいしかないな。


時間をおかずに送るのはよくないと思ってしばらく時間が経ってから何部に入るのか聞いてみた。


まだ決めてない、白翔は何部に入るのかと逆に質問される。何部があるのか分かってないこともあって分からないと答えるしかなかった。


勝手に似た者同士だなと感じていた。誘われた部活に入ればいいかな、白翔はそれくらいの考えていた。


テレビを見ていると運動部で体罰やイジメが横行しているとひっきりなしに報道されている。スポーツをすることが苦手なわけではないがせっかく入っても途中でいかなくなっては勿体ない。何がしたいというよりも何が出来たらいいのかと考えた。


珍しい部活

読書部ってなんだろう。初めて聞いたが読書することで学べることもあるし損はないと入部することを決める。


家に帰ってそのことを碧波にもメールで伝えると本を読むことはいい事だよ。今度中学校の図書室で本を読もうかなと返信が来る。


小学校にある文化部が少ないこともあって男子5人に対して女子が10人という感じで読書部がスタートする。


とはいっても主に黙々と本を読んでたまにみんなで集まって内容を紹介して意見を言い合う。白翔は本を読む時には国語辞典をおいて読むことにしている。


そうすれば分からないことがあればすぐに調べられるからだ。読めない漢字は顧問の先生に尋ねる。だからどうしても他の人よりも本を読み終わるのが遅い。


白翔は気に入っている本がある、だがどうしても難しい漢字ばかりで聞いたこともない熟語が並ぶ。


その度に先生に聞きに行って答えてくれるがどこか困惑している。何か打開策がないか先生に尋ねる。


メモ帳に書いていけばいいと思うよ。漢字だけじゃなくて意味も一緒に書いていけば教養も深まるし言葉を知らないより知ってた方がいいからね。そう言われて早速国語辞典で教養という言葉を調べてみる。


「教養を調べると教え育てること。

学問、幅広い知識、精神の修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力。また、その手段としての学問・芸術・宗教などの精神活動。2つ書いてある」


国語辞典で調べたのは間違いだったか。言っていることは何となく分かるが言い回しが難しい。


本を読んでいても漢字や意味が分からなければ内容が理解出来ない。とりあえずやり続けてみようかな、読めない漢字があるのは仕方ない。そこは教えてもらって調べる。


知らないことを調べる。小学生ながらこれがホントの勉強なのかな。授業が分からなくてつまらないと思ったことはないが読書をしているとどうしても知らない漢字に出会う。


すると読めない漢字は聞いて調べるを繰り返すようになる。メモ帳だけでは到底書ききれる量ではなくなって普段授業で使うような大学ノートに書くようになる。


家に帰っていつものように碧波にメールをする。

白翔は向上心があってスゴいね。小学生でそこまで出来る人中々いないよ。


図書室で本を読む機会が増えたけれどそこまで出来てないから参考にさせてもらうね。それよりも好きな女の子出来た?


好きな女の子は碧波だよ。読書部にも女の子いるけど好きにはなってない。いやなることはない。逆に好きな人とか出来たの?かわいいから毎日のように呼び出されて告白とかさせてるんじゃない?


読書の話から突然恋バナに話が逸れていく。こんなかわいい子がいたらクラス、学年、学校だけでなく他の学校からも気持ちを伝える人が現れるかも。そしたらストーカーや痴漢に遭ってもおかしくない。


いつもならメールが届いてから返信するようにしていたが心配のあまり続けてメールを送る。


碧波はかわいいから学校だけでなくて他校の人からも好きって言う人がいるかも。夜遅くはストーカーや痴漢に遭うかも知れないから防犯ブザーを身に付けるなりした方がいいよ。


晩ご飯。食べ終わってメールを見ると新着のメールが届く。宛先は碧波だった。


白翔は優しいね。こんな毎日かわいいって言ってくれる人は他にいないよ。心配してくれてありがとう、でも護身術出来るから大丈夫だよ。


護身術が出来るって初めて知った。従姉妹で長いこと顔を合わせているのに新しく知ることもあるのかと感じていた。旭川にいれば一緒に帰れるのに……。

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