第60話

 「おにぃ・・・」


 ずるいな。これは断れない。

 春は目をウルウルさせて、こっちを見てくる。断ったら、ガチ泣きするぞと、その目から意志を感じる。

 

 「・・・はぁ。一回だけだぞ」


 深く息を吸ってから春をそっとぎゅっと抱きしめた。

 

 「「・・・」」

 

 凄い、いい匂いがする。

 

 「「・・・」」


 二人とも無言で時間が過ぎていく。

 一体、いつまで抱きしめたらいいだろう。

 

 「ナニやってるんデスカ?」


 いつの間にかお風呂からエマさんが上がってきて、こちらを見ていた。

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