第59話

 「うん!」


 「・・・?」

 

 春はいきなり両手を広げ、俺に何かを求めてきた。


 「・・・うん!」 


 「えっと。何?」

 

 「おにぃ。鈍い。さっきの続き」

 

 さっきの続きって何?

 春が何を求めているのか全然分からない。

 

 「もぉ。ここなら人目を気にしないでしょ!早くぎゅっとしてよ」

 

 「はぃ?!」

 

 間抜けな声が出てしまった。

 確かに駅前で人目があるのを気にした言い訳をしたが、家に帰ってから求められるとは思ってもいなかった。

 助けを求める様に母の方を見ると母はいつの間にか姿を消していた。

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