第42話

*  *私が冬也を好きな所*  *

 

 「冬也の馬鹿。大嫌い」

 

 どうして、そう言ったのかはすっかり忘れてしまったが。間違いなく、冬也に向かって罵声を浴びせ、私はその場から逃げる様に走った。

 がむしゃらに何も考えず走り続け、気づけば見ず知らずの場所で。

 

 「・・・ぐすん・・・」

 

 訳も分からずにその場に座り込み、泣く事しか出来ずにいた。

 そんな時。

 

 「莉奈。探したんだぞ」

 

 冬也が迎えに来て手を指し伸ばしてくれた時は、どれだけ嬉しかったことか。

 

 「ひどい事、言って、ごめん」

 

 「いいよ。ほら、一緒に帰ろ」


 「うん」

 

 冬也と手を繋いで、家へと帰る中。冬也を横目で見ると服のあちらこちらが汚れていて、必死になって私を探してくれたのかが分かった。

 私の為にそんなにも必死になってくれるなんて。やっぱり、私は冬也の事が好きだ。

 

 「と、冬也はさ。私の事をどう見てる?」

 

 「えっ?・・・から」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る