第35話

 「・・・」


 俺の質問に莉奈は黙り込む。

 

 「何も言い返さないって事は嘘をついてたんだな。・・・なんで、そんな嘘を」

 

 どうして、莉奈が嘘を言ったのか検討もつかなかった。

 

 「えっと・・・それは・・・」

 

 何か言おうとして、おどおどと口籠る莉奈。


 「正直に言ってくれないか?」

 

 少しだけ、強い口調で言った。すると莉奈は観念したのか。一度だけ、大きく深呼吸をして。


 「実は――」


 「ここにいたのか。妹さんが校門で待――って、今青春の一ページを作ってる最中か。すまん。先生廊下で待ってるから終わったら声をかけてくれ」

 

 先生が教室へ乱入してきた。

 

 「・・・あれ?」

 

 目を離した隙に莉奈の姿はなくなっていた。

 なんだその素早さは忍者か?

 

 「逃げられたな。なんて言うか。ドンマイ。先生も学生時代振られた経験があってな。一つ忠告しておくなら、しつこい男は嫌われるから無理押しをしちゃ駄目だ。タイミングを見て再トライしよう。先生にいつでも相談しに来て良いからな」

 

 先生に憐れまれた。

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