第10話 無限ポイント獲得編

「……なんか楽しそうですねアイクさん」

「そうか? そこまで自覚はないんだけど」


 ギルドに戻り、報酬を受け取ったその足でフレンのメンテナンスに出向いていた。

 俺の本職は魔工整備士だ。いくら冒険者として強くなれたとしてもそこだけは変えてはいけない。


「雰囲気が柔らかいんです。いつも思い詰めていたような顔をしていたから少し安心しました」


 確かに今までは一向に強くならない自分に焦っていたこともあった。

 だがもう『自動更新』と『再生成』さえあればどこまでも上り詰めることができる。

 それだけの心の余裕がフレンにはお見通しだったらしい。


「……終わったぞ。それと……心配していてくれたんだな。ありがとう」

「いえ。私はいつでもアイクさんの味方ですからね。つらくなったら頼ってくれてもいいんですよ?」


 フレン、良い人すぎるな。今まで底辺整備士だった俺にも気にかけてくれていたんだ。今まで手を抜いていたわけじゃないけど、これからさらに気を引き締めてメンテナンスして期待に応えないとな。


 彼女のやさしさに感謝しながらメンテナンスを終え、俺は一旦宿に戻ることにした。


「さて……今日だけでだいぶ仕様が分かったからな。これからどう強くなっていこうか……!」


 まだ拡張ポイントは有り余っている。

 新しいスキルを獲得するにしてもFランクくらいの魔物だったら戦いも不自由していないことがわかったし、メンテも頭痛なしに順調にできているから、成長を早める機能だったりサポート系の機能を追加してもいいかもしれない。


『自動更新』を起動し機能一覧をざっと眺める。


「……これいいな」


 俺が見つけたのは『機能還元』と『割引』。

 結構機能の名前は直球ストレートなものが多いらしい。遊びがない感じは好きじゃないけど、わかりやすいからまだ良しとする。


『機能還元』は追加した機能をまたポイントに戻すことができる機能、『割引』は通常よりも少ないポイントで機能を獲得できる機能だ。

 そしてこれらを組み合わせると──


『機能『跳躍補助』『望遠』『吹き矢』『人畜無害』……etcを『割引』により30パーセント引きで獲得しました。拡張ポイントが12,530ポイントから370ポイントまで減少』

『機能『機能還元』により『跳躍補助』『望遠』『吹き矢』『人畜無害』……etcを拡張ポイントに還元します。──完了。拡張ポイント23,640ポイントを獲得しました』


「よしよしよし。思惑通り……!」


 俺は今、スキルを『割引』を使って通常よりも少ないポイントで手に入れた。そしてそのスキルを『機能還元』で通常の消費ポイントに還元した。

 つまりスキルを獲得した時と還元した時のポイントの差額分ポイントが増えることになるのだ。


 つまりこの2つのスキルを組み合わせれば楽に、無限にポイントを増やせる、無限にスキルを増やせることになるのだ。


 これでポイントを獲得できる手段が2つになった。

 新たにメンテナンスする魔道機械がなくてもポイントを稼げる手段ができたことによって町を離れても活動、修行ができるようになったわけだ。


「あの『──』ってやつどうにかして獲得したいな。そもそも条件がわからないしな。長期の目標だな『──』は。今は条件わかった時のためにポイントをできるだけ貯蓄しておこう」


『──』があったのはスキル一覧の一番下。

 基本的に消費ポイントが少ない機能の順に表示されているから、獲得には相当のポイントが必要なのだろう。


 俺はその後、何度も何度も『機能還元』と『割引』を利用して着実にポイントを貯めていった。

 すると、何十回か繰り返し、外も暗くなっていたころだ。


「さすがに無理し過ぎたか……」


 俺の左手から潤滑油がしたたり落ちている。そろそろメンテナンスをしないと取り返しのつかない故障につながる危険性があった。


 スキルを獲得するたび俺の左腕の中で改造が施されてったから小さい歯車とか機構とかの劣化が早まってしまったんだろう。

 別にメンテナンスすれば問題ないのだが一日で増やせるポイントに上限ができてしまったのは誤算だった。

 それがなければポイント取得上限まで貯めるために徹夜しようとしてたのにな。

 とにかくもう今日できることはなくなったことだしもう寝るとするかな。


 ふらつく足取りでベッドに倒れこんだ。

 作業に夢中で気づいてなかったけどいつの間にか疲れていたらしい。

 宿の部屋で作業していて正解だったな。


「また明日もクエスト行ってメンテしてポイント貯めてって感じか……。『──』獲得したらどうすっかな……」


 そもそも冒険者になったのも行き当たりばったりだ。

 全てマッドによって引き起こされた人災の影響だ。


“遺跡”に行ってみてもいいかもしれない。

 もう一度魔工整備士として生活する手段を探す手もある。

 冒険者としてSランクを目指してもいいかもしれない。


 今俺の前には選択肢が広がっているのだ。


 まあ今のところは『──』を獲得することが目標だ。

 それだけを目指していこう。


 ─────────────────────────

 個体名:アイク・レヴィナス

(中略)

 歯車病特殊個体(左腕~???)

 スキル:『サーチ・スコープ』『再生成』『痛覚遮断』

     『機能還元』『割引』

    『攻撃力アップ(大)』『防御力アップ(大)』

    『威圧』『剣変形』『電磁弾』

 拡張ポイント:56,920ポイント

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【あとがき】

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