第6話 スキル獲得し放題

「またですか! 無理はしないでください! もう私の仕事を増やさないで下さい!」

「う……すまない……」


 またもや俺は医務室のベッドの上にいた。

『自動更新』が完了した後、また気を失ってしまったらしい。フレンにはお世話になりっぱなしだな。申し訳ない。


「それに……アイクさんに何かあっても心配だし……」

「えっ!?」

「い、いや何でもないですから!! 仕事に戻りますね!! もう倒れないでください!!」


 慌てたように立ち上がると、捨て台詞のような言葉を残して駆けて行ってしまった。

 耳まで赤くなってたけど、それほどまで怒らせたんだろうな。

 プレゼントでも送ろうかな。


 彼女が仕事に戻ってしまった以上、今そのことを考えてもしょうがない。


 気を取り直して更新内容を確認してみる。


『過去のログはエラーにより拡張ポイントに変換されました』


「え? スキル何もついてない……?」


 攻撃力アップや防御力アップは“ローラン”を取り込んだ時よりも強化されているがそれ以外は特に変化がない。


「そもそも拡張ポイントってなんだ?」


 そう口に出した瞬間ステータス画面が目の前に現れる。


 ──────────────

 拡張ポイント:12000ポイント

 スキル一覧

『太刀』300ポイント

『火砲』520ポイント

 ……

 ──────────────


 一画面では見きれないほどの機能がツリー状に連なって表示された。


「選び放題じゃん……! これまでの努力は……無駄じゃなかった……!」


 ふうっと肩の力が抜ける。

 あの地獄のような日々が、マッドたちに無能と蔑まれていた日々はちゃんと俺に報いてくれていたのだ。

 才能がないと思っていた。

 努力なんて報われないと半ばあきらめていた。

 ようやく、希望が見いだせたのだ。


「それにしても、この歯車病、やっぱ普通じゃないよな……」


 様々な人たちをメンテナンスしてきたけど、機能なんて持っている人を見たことがない。

 マッドたちに注射されたものの効果なのか?

 でもこんな強力なものを追放するやつに打つか?


「もしかして、本当に実験だったか……? 失敗して死んでもあいつらにとってはどうでもいい存在だったから……」


 マッドたちのことだ、どうせ俺の命なんてどうでもよかったんだろう。

 そんなことよりも……。


「無駄なスキルを省けるぶんより怖いものなしじゃないか……?」


 だって1万を超えるポイントと一度では見きれないほどの機能があるのだ。

 そしてこれからも魔道機械をメンテナンスすれば無限に近いポイントを稼げる。

 あとは俺自身を強化して強化して強化しまくるだけだ。

 音声で流れてこなかったから、俺の腕にスキルが追加できる容量は無限に等しいんだろうな。


 改造なんてする必要はない。

 そんな手間のかかることをしなくても強くなれる。

 好きなだけスキルを増やして強化できるようになったんだ!

 だけど、一つ解決しなければならないことはある。


「どうにかして更新の時の痛みをなくせないかな」


 今の状態では更新するたび痛みが走り、時には気絶してしまう。

 これを解決しないことにはまたフレンに迷惑をかけちゃうし、もしこの先冒険者としてクエストをこなしていくとするなら気絶する可能性は排除しておきたい。


「……あった!」


 スキル一覧をくまなく探してみると『痛覚遮断』のスキルを発見、早速ポイントを消費して追加した。

 ピりつくよう感覚の後、音声が頭に響く。


『スキル『痛覚遮断』を獲得しました』


「よし……! ははっ……ありがとなマッド。あんたのおかげで俺はさらに強くなれるようになったんだ!! ざまあみやがれ……!」


 でもこの俺の歯車病がマッドたちの実験だとしたら、あいつらはそれを成功したことになる。

 もし、マッドに俺の腕のことがバレたら……?

 俺みたいな犠牲者が増えるだろう。

 あの人たちには名誉と金しか見えてないからな。

 直接会って煽りたい気持ちもあるけど、ここはまだ見ぬ犠牲者が出ないようになるべく避けていこう。


 そういえばマッドたちは大丈夫なんだろうか。

 俺以外あの研究所でメンテナンスできないはずだ。

 メンテナンスしていないと魔道機械は誤動作を起こしやすくなりまともな実験などできない。

 要するにあの研究所でまともに研究はできていないはずだけど……?


「もう関係ないな。俺のことだけを考えよう」


 まあ一応マッドたちは研究員だから最低限メンテできるでしょ。

 彼らも経験を積んでいるはず。

 だからメンテナンスなんて基礎的な作業ができないわけないだろう。……たぶん。


「そんなことより、このポイントをどう使うかを考えなきゃだよな」


 まずはこの莫大なポイントを何に使うか考えよう。

 普通1つの魔道機械に1つだけのスキルを俺の腕はほとんど無限につけられる。

 つまり成長できるのだ。


「まずは戦えたほうがいいよなあ」


 一応俺も冒険者の端くれなのだ。少しは戦えたほうが見栄えもいいし、金も稼げる。

 そのためにも何か武器になるようなスキルをつけたいところ。


「この段階だと『剣変形』と『電磁弾』か……。どっちともつけるか。損はないし」


 二つのスキルにポイントを振り分ける。


『70拡張ポイントを消費し、スキル『剣変形』、『電磁弾』を獲得しました』


「よし! これで戦えるようにはなったな。あとは……実践あるのみだ」


 もしこれらが弱かったとしても強化してもいいし、新しいスキルをつけてもいい。

 まだポイントは1万以上あるからな。

 ただ少しポイントが減るだけのこと。


「モンスター、倒してみるか……!」


 確かな達成感と共に掲示板から依頼書をもぎ取った。


 ────────────

 個体名:アイク・レヴィナス

(中略)

 歯車病特殊個体(左腕~???)

 スキル:『サーチ・スコープ』『再生成』『痛覚遮断』

   『攻撃力アップ(大)』『防御力アップ(大)』

   『威圧』『剣変形』『電磁弾』

 ────────────



──────────────────────────────────────

【あとがき】

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