第2話:大失敗

転移1日目:山本光司(ミーツ)視点


「申し訳ございません!

 全て私が悪いのです!」


 密林としか言いようのない場所で天使が土下座している。

 周囲の風景に比べて透き通って見えるので、実体はないのだろう。

 だが、そんな事はどうでも良い!


「今度は何をやった?!

 どんな失敗をして、実害は何だ?!」


「設定を終える前に異世界に転移してしまいました!

 実害はこれから調べなければ分かりません」


「だったら今直ぐ調べろ!

 特に寿命の約束がどうなっているか確認しろ!」


「申し訳ございません!

 この世界に来てしまってからでは寿命の確認ができません」


 殴りたい、罵りたい、どうにもならないと分かっていても文句を言いたい!


「……今やれる事は何だ?!」


「ステータスオープンと言ってください」


「ステータスオープン」


 あまりにも定番の設定にため息が出そうになる。


「個人情報」

名前:ミーツ・ヤーマ(山本光司)

情報:ヒューマン・男・20歳・レベル11

職業:治療家・魔術師・小説家・料理人・商人・解体職人

  :採取家・武闘家・剣士・木地師・革職人・

HP:200

MP:200

筋力:130

耐久:125

魔力:120

俊敏:125

器用:135

魅力:200

幸運:200


「職業」

治療家:レベル11(鍼灸柔道整復師だったから)

魔術師:レベル11(ライトノベルなどを読みふけ創造力が桁外れだから)

小説家:レベル11(受賞経験のあるネット小説家だったから)

商人 :レベル11(実家の商売を手伝い、独立開業し確定申告もしていたから)

料理人:レベル8 (30年以上ずっと自炊をしていたから)

従魔師:レベル7 (長年犬猫を飼い躾けた経験があったから)

解体師:レベル6 (12年間実家の鶏肉店を手伝い鶏の解体をしていたから)

採取家:レベル5 (田舎の出身で、幼い頃から野草採取をしていたから)

武闘家:レベル4 (柔道初段だったから)

剣士 :レベル3 (段持ちではないが剣道を学んだことがあったから)

木地師:レベル2 (とても不器用だが、工作経験があるから)

革職人:レベル1 (とても不器用だが、クラフトワーク経験があるから)

「アクティブスキル」

診断:レベル11

治療:レベル11

創造:レベル11

作家:レベル11

魔術:レベル11

商人:レベル11

料理:レベル8

従魔:レベル7

解体:レベル6

採取:レベル5

武術:レベル4

剣術:レベル3

木地:レベル2

皮革:レベル1

「パッシブスキル」

鑑定:レベル6(これまで培ってきた生活の知恵)

診断:レベル11(29年間鍼灸柔道整復師として診察を行ってきたから)

「魔法スキル」

亜空間術:レベル11(ストレージ)

「ユニークスキル」

異世界間スーパー:レベル1

 :所持金・4億9287万8538円

 :奉天市場レベル1

異世界間競売  :レベル1

「犯罪歴」

なし


「なんで20歳に成っているんだ?!

 36歳も若返っているじゃないか!

 若返らせてくれなんてひと言も言っていないぞ!」


「何をするにも若い方が良いだろうとサプライズさせていただきました」


「職業欄に色々とあるが、なんでこんなにある?」


「光司様がこれまで培ってこられた経験をこの世界で反映させています」


「……ユニークスキルに奉天市場レベル1とあるが、これで今まで通り買い物ができるのだろうな?

 ママゾンやハードバンク、ありとあらゆるネットが使えるのだろうな?!」


「申し訳ございません!

 全て私が悪いのです!」


「まさかとは思うが、サプライズを優先したせいで、1番肝心のネット環境が奉天市場しか使えないなんて言わないだろうな?!」


「申し訳ございません!

 全て私が悪いのです!」


 殴りたい、殴りたい、思いっきり殴りたいが、殴っても何も変わらない。


「謝る前に働け!

 どうせお前には、俺を元の世界に戻す力も、寿命を保証する力もないのだろう?

 さっさと元の世界に戻って、俺の寿命を保証するように交渉してこい」


「……もう、元の世界には戻れません。

 光司様がこの世界で天寿を全うされるまで、帰って来るなと言われました……」


「神様からこの世界に追放されたのか?」


「……はい……」


 俺は、神様がこの世界に追放するくらい、ドジで役立たずで愚かな天使を押し付けられたのか?

 神の奴、これくらいの失敗はするだろうと予測して俺に押し付けたのか?

 腐れ神が!


「……立っている者は親でも使えと言うしな、役に立ってもらうぞ」


「はい、これだけご迷惑をお掛けしたのです。

 私にできる事なら何でもさせていただきます」


「実体がないようだから、自由に空を飛び素早く移動もできるだろう?

 今直ぐ周囲を偵察して、俺に危害を加えそうな敵がいないか確認してこい。

 同時に休憩できそうな場所、できれば村や街を確認してこい。

 あ、待て、お前に2つも3つも指示したら、また失敗しそうだ。

 周囲に危険なモノがいないか確認してこい、それ以外何もするな!」


「はい」


「復唱、お前は信用できないから必ず復唱しろ!」


「……はい、周囲に危険なモノがいないか確認してきます」


 ああ、もう、本当に、どうにかして欲しい!

 神様だと言うのなら、全知全能らしい事をしろよ。

 全知全能どころか無能もはなはだしいぞ!


 分からないと言っていたが、寿命が保証されていないと考えた方が良い。

 俺を巻き込んで天罰を下した神は絶対にあいつだ!

 自分以外に神はいないと言い切り、信徒以外の人間を虐殺する腐れ神だ!


 あいつの事だから、自分を信じていない俺の事など平気で殺すだろう。

 形だけ保証すると言ったのは、氏神様と仏様が怖かったからだ。

 寿命保証がない前提で自衛して、安全第一で行動しなければいけない。


 先ずは自衛のための武器を購入しなければいけない。

 奉天市場がどれくらい使えるかも確認しなければいけない。

 ステータスオープンして奉天市場をクリックすればいいのだろう。


「ステータスオープン」


 所持金が4億9287万8538円というのは予想よりも多いな。

 財産を有利に評価してくれたとしても、5000万前後は多いと思う。

 5000万前後で思いつく金額は、生命保険か……


「奉天市場」


 思い付きで言ってみたが、クリックしなくても奉天市場が表示された。

 律義と言うべきか、奉天ポイント9751が表示されている。


 こんな所までこだわっているから、肝心の寿命や他のネット環境が終わらなかったのだろう。


 以前と違っているのは、グループサービスが表示されていない事か。

 レベルが上がれば表示され利用できるのだろうか?

 いや、今は考えるより前に自衛武器の確保だ。


「武器が買えない事は、以前ネット小説を書いた時に確認して知っている。

 唯一買えるのは、武器ではない建前の300ミリまでの剣鉈。

 漆塗りの鞘もついているし、安全のための14万は円なら高くない。

 表示が円なのか現地通貨なのかは使っている間に分かるだろう」


 独り言をつぶやきながら購入してしまうのは、異世界の密林にいるせいだ。

 抑えようとしても不安と恐怖が押し寄せて来る。

 もっと剣鉈を買いたくなるが……


「次は鎧と盾だが、防具は剣道用しかない。

 あの糞神の事だから、絶対に危険な異世界だろう。

 剣道の防具であろうと関係ない、後悔した時は死んでいる。

 後で役に立たなかったと思っても19万8000円は安心料だ」


 剣道の防具だけでは心配だ。

 バイク用のヘルメットの方が丈夫で視界も広い可能性がある。

 オフロード用ヘルメット4万1820円。


「防弾盾もピンからキリまであるのだな。

 命がかかっているから安物を買う訳にはいかない。

 暴徒鎮圧用、ハンドガン対応、ライフル対応。

 ここは1番強力そうな対ライフル用防弾盾65万円」


 長い武器が欲しいが、本当に使える槍や剣はない。

 競技用の投げ槍はあるけれど、実戦には使えないだろう。

 小説や実戦経験者の話しでは、剣や槍よりもスコップの方が役に立つとあった。


「武器に使うのなら、全金属製で先の尖ったタイプだよな。

 他の物に比べて1630円なら格安だな」


 他に必要なモノ、命を守るために必要なモノ。


「あ、剣道の防具よりもオフロードバイク用のプロテクターの方が上か?」


 手袋   :1万3750円

 ジャケット:4万7200円

 パンツ  :3万6300円

 胸背防具 :1万8400円

 膝当肘当 :  2680円


「後は……そう言えば銃剣道をやっていた奴が、国体でバトルロイヤルやった時に、薙刀のお脛は最強だと言っていた」


 薙刀用脛当:1万6830円


「あっ、靴だ靴、脛当よりは鉄板入りのロングブーツの方が丈夫だ。

 鉄板入りがなければ、外側に剣鉈をくくりつければいい」


 おしゃれなブーツはいらない。

 ウエスタンブーツも実用的なモノがない。

 乗馬ブーツも防具だと考えれば物足りない。


 オフロードブーツが1番防御力がありそうだ。

 薙刀用脛当が無駄になりそうだが、少々の金は命に代えられない。


 オフロードブーツ:4万0377円


「光司様、大変でございます!

 子供が死にかけております!

 急いでください!」

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