第5話 ラノベでは少女は助けるものだろ?

 「いや〜、やっぱり〈とある〉は面白おもしろいっすね」


 「いや、俺は基本ラブコメ以外読まないんだよな」


 「なんでですか?こんなに面白いのに〜」


 だって恋愛の参考にならないじゃないか。


 「まあ、誰しも好ききらいがあるってことで」


 「ラブコメ……あ、そういえばこの前私を助けてくれたやつ、ラブコメぽかったっすね」


 「いや、のんきすぎだろ」


 「そうですか?」


 彼女はキョトンとこちらを見つめている。


 さて、そろそろ彼女のことを紹介しよう。


 この眼鏡めがね似合にあう彼女の名前は東雲しののめ 林檎りんご


 1週間前、俺がどうやって氷坂ひさか 伶菜れなにアプローチを仕掛しかけるかなやんでいた時のこと。


 彼女が男子生徒数人に囲まれているのを俺が華麗かれいに助けた。


 そう、だれがなんと言おうとも俺はラノベの主人公のように華麗かれいに彼女を救ったのだ。


 「まあ、ハルっちはボコボコでしたっすけどね。」


 「なぜそれをいう……折角せっかくみんなだまされてたのに」


 彼女を助けたその翌日、俺たちは図書室で再会した。


 どうやら彼女も重度じゅうどのラノベ好きだったらしく、俺たちはすぐに意気投合いきとうごうした。

 

 「さて、そろそろ休み時間も終わりますし教室に帰りましょうか」


 「ああ、そうだな」


 俺たちが読んでいた本を収め、図書室から出ると、その前に1人の少女がいた。


 「ちょっとごめんなさい。あなた、日下部くさかべ 陽史はるふみよね?」


 「え?あ、ああ。そうだけど」


 「ちょっと話したいことがあるのだけど、そうね……放課後3階の空き教室に来てくれないかしら」


 まさにのぞんでいたことなのだがあまりに突然のことすぎて困惑こんわくする。


 だって考えてもみろ。


 仮にお前らに好きな人がいたとする。


 その相手が放課後人気ひとけがない場所で話がしたいと言っているんだぞ?


 そんなの動揺どうようするに決まっているだろ。


 いや、わかったぞ。


 これは両片思いってやつだな。つい最近読んだぞ。


「わかった、放課後空き教室でな」

 

 そう答えると氷坂は教室へと帰っていった。


 行くのはいいが一人で行く勇気ゆうきはない……どうしたものか。

 

 「なあ東雲、放課後ついてきてくれないか?」


 彼女は少しいやそうな顔をする。


 「本当は嫌っすけど、ハルっちには助けてもらったおんがありますし……しょうがないですね」


 「おお東雲、ありが……」


 「あ、そういえば今日は図書委員の集まりがあるんでした〜すみません!」


 そう言って彼女は足速あしばやに去っていく。


 「貴様きさまー!」


 あいつ絶対わざとだろ。



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