第7話 続・ボーイ・ミーツ・美女

 アーチャーとの戦いを終え、少年が無事に学校に行くのを見届けた私。

「何と賑やかな…」

 マナテクノロジーのスキル遠視を使い、学校での少年の様子を伺い、ついつい目を細めてしまいました。

 その時、どっと疲れが出てきました。

 ・次元転移

 ・英霊使いとの戦い

 ・身体強化Sランクの使用

 ・治療術Sランク リザレクションの使用に伴う失血

 疲れを感じるには十分すぎるほどです。

 公園のベンチに腰かける私。

『少し休まれたら如何か?周囲の警戒は我がしまする故』

 フェンサーが暖かい言葉をかけてくれます。

 マスターが睡眠を取っているときでも英霊は活動が出来ます。

 最も、遠隔行動や単独行動スキルのない英霊はマスターから一定距離を離れられないのですが…

「陽気もほどよいですからね、フェンサーの言葉に甘え、少し眠る事にします」

 私はまだまだ暖かい初秋の空気を感じながら座りながら心地よい眠りにつきました。

 断っておきますが、フェンサーは姿を消して私の側に控えていますからね?



 気がつくと日が傾き、周囲は朱に染まっていました。

 この景色もずっと眺めていたくなるほど美しい…

 自然のことごとくが失われた私たちの地球では見られない景色ですから。


 私は小高い山から見えた住宅街に足を運びます。

 子供たちの元気に駆け回る姿。

 親子連れでしょうか?小さいお子さんと私と同じくらいの歳であろう女性が犬の散歩をしています。

 住宅の角では買い物の袋なのでしょうか?バッグのようなものを持ちながら世間話に興ずる、おばさまたち。

 かたや、先程助けた少年と同じ服装、そう、制服を着たグループが他愛のない話をしながら、歩いている。

 詰め襟の制服を着た男子生徒とセーラー服の女子生徒が手を繋いで歩いています。フフッ、お付き合いしているのかしら?

 私にも、ああいう頃がありましたね。懐かしい…

 こういった人々の生活の営みにどこか哀愁と少しの羨ましさを感じながら、私は住宅街を歩きます。

 さて、1つ、困ったことが起こりました。

 どうやら、このあたりには宿のようなものがないようです。

 辺りはもう薄暗くなり、途方にくれていると…

「どうしたい?お嬢ちゃん」

 元気の良いおばあさんが声をかけてくれました。

「はい。気ままに旅をしているのですが、土地勘がなく、泊まれる所を探しているのです」

 おばあさんはカッカッカッと笑います。

「この町には泊まれる所なんかありゃあしないよ。ワケありなんだろう?あたしのところに来な」

 おばあさんは半ば強引に私を連れ出します。

 まあ、ワケありなのはワケありなのですが…

 連れていかれた先は、小さなお店でした。


 ー小料理 うどん 酒処 すずきー


「そんな良い着物を着てこんなところ歩く人なんかいないからねぇ」

 おばあさんは奥から何か白い着物のようなものを取り出します。

「割烹着さ。その上から着ておくれ」

 私はおばあさんに促されるまま割烹着を着ます。

「タダで泊めるってワケにもいかないからね。少し店を手伝っておくれ」

「あ、はい。ですが、私、こういうことはしたことが…」

「いいから、いいから、ちゃんと教えるから感覚でやってごらんよ」

 半ば強引にお店でアルバイトをすることになってしまいました。


 そうこうしていると、お客様が来店されます。

「い、いらっしゃいませ」

 やったこともない接客に、戸惑う私。

 お茶をお出しして、出来たお料理を提供する。

「おーう、ばあちゃん、綺麗な娘雇ったねえ。お嬢ちゃん、名前は?」

 常連のおじさんでしょうか?なれた手付きで冷蔵庫からビールを取り出し飲み始めます。

「はい。綾です。永緒 綾」

「綾ちゃんか~、よろしくなぁ」

 そう言い、ビールを注いだコップを私に向けて掲げるおじさん。乾杯の仕草でしょうか?


 小さいお店ながら常連さんたちで賑わっています。

 その賑わいが心地よく、働いていて楽しい気持ちになってきました。


 その時でした。

 外から賑やかな声が聞こえて来ます。

 口喧嘩でもしているのかしら?

「だから、まだ言ってんの?そんなの夢で妄想でしょ!お得意な!」

「うるせえ!夢でも妄想でもねえよ!間違いなくいたんだよ!超美人のお姉さん!」

 口喧嘩をしながら少年と少女が店に入ってきます。

「ただいま!」

「ただいま~………って、えええええええええ!」

 背の低い女の子と背の高い男の子です。


 おや?


 あの、少年は、確か…



 こうして、私は例の少年と再開するのでした。

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