第6話 キスの真相
アーチャーとの戦いに無事に勝利した私。
アーチャーのマスターの身体が光の粒子となり、雲散霧消します。
血痕も何もかも残さずに。
私たちは生まれた時にマナを注入されています。
マナは自然に還元する性質を持っており、マナを有する私たちの肉体は生命活動を終えると、自然のマナに還るのです。
このマナサイクルに何らかしらの加工をし、次元を越え、私たちの地球にマナを還元しているのです。
特に英雄使いともなると体内に有しているマナは常人よりはるかに多いのです。
一方、英霊を構築しているマナには2つの流れがあります。
1つは、やはり同じく自然に還る事です。
もう1つは、倒された英霊に吸収されるのです。
つまり、今のアーチャーのマナは私のフェンサーに吸収されたということです。
英霊とマスターはマナを共有しますから、よりマナを得た英霊を従えるマスターは、やはり相当なマナを持っている事にもなるのです。
そして、アーチャーのマスターのマナは次元を越え元の世界に還元されました。
では、何故元の地球で英霊使い同士を戦わせないのか。それには私たちに知らされていない多くの事情があるようです。
のんびりと私たちの地球の事情を説明している場合ではありませんね、私を庇った少年を助けなければ!
「お姉さん、無事かい?」
私が近づくと少年は笑顔を作って話しかけてくる。
「貴方のお陰で無事ですが、何故こんな馬鹿な事をしたのです!」
「馬鹿な事?とんでもない、綺麗なお姉さんを助けられたんだから本望さ…」
強がっているものの顔からはどんどんと血の気が引いていきます。
彼の足の様子を見ます。
!?
いけない!
大腿動脈を貫通している!
このままでは、彼が死んでしまう!
「フェンサー!圧迫止血を!力一杯!」
私は道行きを脱ぎ、折り畳み、彼の大腿部に被せます。
人知を越える英霊の力で流れ出る血液の量を押さえる。
純白の道行きがみるみる赤く染まっていきます。
「貴方、血液型は?」
「え、ABっす…」
力なく答える少年。
私と同じですね。ならば!
私は懐から小刀を取り出し、自らの左手首を切りつけます。
鮮血が滴り落ちます。
「さあ!私の血が飲めますか?」
彼の口に手首の傷口を近づけますが、私の血は彼の口の中には入っていきません。
致し方ありません。
私は自分の流れる血液を一定量口に含みます。
そして、稀少な霊薬が詰められた瓢箪を口にします。
口の中で血液と霊薬を混ぜ合わせます。
そして
私は何の躊躇いもなく、少年と口を重ね合わせます。
口移しで霊薬を飲ませる為です。
ゴクリ
少年が霊薬を嚥下したのを確認。
私は口を離し、両手を彼に向けます。
ースキル 治療術 ランクS リザレクションー
私は治療に関するマナテクノロジー最高峰の技術、リザレクションを使用します。
発動には複雑な条件が必要なのですが、今、それを満たしている為、使うことが出来るのです。
少年の大腿動脈は修復され、霊薬と血液を混ぜたものも全身に行き渡り、肉体の再生能力が活性化されています。
成功です。
少年の生命力は活性化され、顔色も徐々によくなってきています。
「よかった…」
私は着物の端を裂き、撃たれた少年の太股に巻き付けます。
「フェンサー、少年を近くのベンチに運びなさい」
『心得ました』
フェンサーに少年を担がせ、途中で見た公園のベンチに寝かせます。
意識を失っている様で、静かに寝息を立てています。
かの少年を意図せず戦いに巻き込んでしまい、生死に関わる怪我を追わせてしまった。
自責の念に捕らわれる私。
『此度は致し方なき事かと。マスターのお力で回避できた事ではありますまい』
フェンサーの心遣いを有り難く感じます。
『して、このあとは?』
「この場にはもう危険はなさそうですね。少年の無事を確認しながら少し、ゆるりとすることにします」
フェンサーに微笑み、また、ベンチに寝かせた少年を見守れる場所で私は休息を取るのでした。
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