第5話 綾vsアーチャー
ダン!
ダン!!
ダン!!!
発砲の感覚が短くなる。
私に探知されたことに気付いた様です。
それだけ、アーチャー側が焦り始めているということでしょうか?
私に迫る3発の銃弾。
その全てが、私の側を掠めるだけで当たることはありませんでした。
銃弾の向かってきた方向にフェンサーが刀を振るう。
植物を切り裂くだけで、アーチャー。もしくはそのマスターの姿はまだ確認出来ません。
英霊召喚師、こと英霊使い同士の戦いの決着のは降伏や逃走を除くと以下の4つです。
・マスターの死亡
・マスターのマナ切れ
・英霊の死亡(消失)
・英霊のマナ切れ(消失)
とかく、一番簡単に戦いを終えるのはマスターを打つ事です。
いかに、英霊召喚術を体得しているとはいえ、普通の人間ですから。
故に、アーチャーは私を狙うのです。
ダン!
ダン!!
ダン!!!
立て続けに銃弾が放たれる。
それら全てがまた、私の側を掠めます。
今まで放たれた10発近い弾丸の全てが私の側を掠めています。
そろそろ、アーチャー側が痺れを切らして来る頃でしょうか?
必殺を持って放たれている弾丸がことごとく外れるのです。
ダン!
ダン!!
ダダン!!
今度は前方、側方から弾丸が飛来する。
なるほど、十字砲火ですか。
英霊とマスターで連携して必中を期しての攻撃でしょう。
ですが、それも私の側を掠めるだけ。
愚かな。
みすみす、私に居場所を知らせるようなものです。
私は攻撃的なマナテクノロジーは得意とはしませんが、探知や存在秘匿、治癒、身体強化のマナテクノロジーは得意としています。
捉えましたよ、アーチャーのマスター。
さあ、そろそろ追い詰めて参りましょう。
「くっ、何故だ!何故当たらない!」
アーチャーのマスターと思われる男性が憔悴しています。
恐らく彼らは必中の間合い、タイミングで銃弾を放っているのです。
それらのことごとくが私に当たらないのです。
「アーチャー!どう言うことだ!」
アーチャーからは「分からぬ」としか、答えが来ません。
「こ、こうなったら…」
そのアーチャーのマスターに迫る影。
そう、私です。
「こうなったら、どうするのです?」
私は持っている仕込み杖を一気に抜き放ちます。
ヒュン!
白刃が閃く。
アーチャーのマスターの肩口を切り裂く。
刀を鞘に納める。
鮮血が舞う。
「いささか、浅かったでしょうか?」
「くっ!」
私の後退に合わせて、アーチャーのマスターは拳銃を連続発砲します。
ダン!
ダン!
ダダダン!
オートマチック拳銃による連射。
愚かな…
その全ての弾丸は私の側を掠めるだけ。
「何故だ!この距離で、何故当たらない!」
「それに気付けないのがあなたの力量を悟らせますよ」
私はもう1度、仕込み杖を構える。
ースキル、身体能力強化ー
呟く。
全身のマナを活性化させ、身体能力を爆発的に高めるスキルだ。
私は1度腰を低く構え、一気呵成に間合いを詰める。
ダーン!
弾丸は当たらないのですが、私の動きを止めるのには最適な位置への牽制射撃です。
そして、そのわずかな隙をつかれ、その間にアーチャー勢はこの場から離れました。
『すまぬ、マスター。追い詰め切れなんだ。なかなかにやる相手だ。それにこの地形では我は多少不利かと』
「良いのです、フェンサー。アーチャーのマスターには一太刀浴びせました。浅くはない傷です。少しはおとなしくするでしょう」
刀を納め、散策に戻る私。
その頃、近くの草木に隠れ、私を追っていた人影がありました。
例の背の高い少年です。
「す、すげぇ~美人…ん?」
少年は何かに気づいた様で駆け出すのでした。
「くそっ!くそっ!あの
私の探知距離から離れたアーチャーがその霊具の力を解放する。
後方で銃を構えたアーチャーがマナを高める。
「殺れ!アーチャー!!」
マスターの掛け声と共にアーチャーが解放された霊具の一撃を放つ。
ダーン!
アーチャーは去っていたと思った私は虚をつかれます。
「お姉さん!あぶねえ!!」
そこに、木陰から少年が現れ、私を突き飛ばします。
ビシュ!
嫌な音と共に弾丸は少年の太股を撃ち抜いていました。
少年の太股から止めどなく血が流れ出す。
「はっはっはっ!どうだ俺のアーチャーの
完全に私を撃ち抜いたと思い込み油断をしている、アーチャーのマスター。
無関係のこの地球の人を巻き込むなんて、許せない!
ースキル、身体能力強化・S 起動ー
私は怒りに駆られ、身体にものすごい負担の掛かるスキルを使用していました。
「フェンサー!アーチャーを必ず仕留めなさい!逃がさないで!」
『承知!』
フェンサーがアーチャーに向け駆け出すと同時に私もアーチャーのマスターに斬りかかります。
ドン!
私の踏み込みが地面を穿ちます。
その勢いのまま、アーチャーのマスターに肉薄。
「ひっ!?」
恐怖にひきつるアーチャーのマスター。
どうやら、私は相当な憤怒の相をしていた様です。
そのまま、抜刀!
白刃二閃!
キラリと刃が閃く。
間髪入れず私は元の位置に戻り、ゆっくりと納刀。
チン!
刀が収まるときの乾いた音が響くと同時に、アーチャーのマスターの左右の首から鮮血が吹き出ます。
左右の頸動脈を切断しました。
「貴方には生きている資格はありません。マナに還りなさい」
血の華が咲く。とはまさにこの事。最も穢れた人間の血なので美しさや儚さ、哀れみなど、感慨を得ることはありませんが…
私は、大事な着物が汚れないように十二分に距離を取り、その様をただただ、冷たい眼差しで見つめていた。
全身の血が吹き出た男は、その場でドサリと倒れます。
『打ち取りましてございます。マスターも相変わらずお見事な居合の腕前にございます』
「ありがとう、ご苦労様でした」
私はごく短い会話をフェンサーとかわす。
こうして、私は別次元の地球に来て早々に起こった戦いになんなく勝利を収めたのでした。
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