第4話 綾、別次元の地球に降り立つ

「何と美しい…」


 私、永緒ながおあやは転移処置を受け、別の次元の地球へと降り立ちました。

 目に飛び込んでくるのは、目映いばかりの自然の緑。

 木々や草の匂いが鼻腔をくすぐります。

 暖かい季節も終わっていくのか、木々の中には色付き始めているものも見える。


 空には大きな鳥が羽ばたく。


『ほう。大鷹ですな。何と勇壮な』

 私の英霊、フェンサーがその鳥、大鷹を見て感嘆の声を漏らす。

 私の背後のはぼんやりとした大柄な男性の陰がフェンサーです。

 存在秘匿という基礎的な英霊召喚術で、自身の英霊を隠すのです。

「フェンサーの時代にはまだこのような自然が沢山あったのでしょうね」

『然り。大鷹の翔ぶ地となると、関東は武蔵の国に来られたかと存ずる』

「関東の…埼玉県ですね」

 私はマナテクノロジーでのマップに相当するものを開き大まかな位置を確認する。

 カーソルは関東地方、埼玉県の中央部を示している。


 次元転移は凄い技術なのですが、着く先が定まっていないのが欠点ですね。

 転移したら水の中とか、壁の中ということはないようですが…


 元の地球とは比べ物にならない豊かな自然。マナの豊潤さも感じます。

 少し、散策したくなり、舗装された道を歩きだします。

 自然豊かな山道に心が踊りますが、時折見てとれる破壊痕。

 破壊痕に触れ、様子を確認してみます。

「これは、マナを送るための破壊活動ですね。」 

『なれば?』

「別のマスターが、この辺りに潜んでいるかもしれません。注意を怠らない様にしましょう」


 此方の地球に来てからは、元の世界との連絡は此方からはつかない。

 最低限の身分は保証されるようです。最も、公的機関で手続きなどをする必要があるようですが。

 それぞれのマスターの考え次第なところがあるようです。


 私はその様な事は考えませんが、転移してきたばかりの英霊使いを狙い、訳のわからないうちに撃ち取って、マナを得ようということをする輩もいるそうです。

 破壊痕を見るに、極小さなマナを産み出しているものの様でした。

 それこそ、ただのお呪いが本の少しの力を得た、程度。


 私は元の世界では見ることのない植物についてフェンサーに訪ねながら散策を続ける。

 マナが枯渇し、混沌に侵食された地域では植物は育たないのです。


 ダーーーーーーンッ!!



 静かな山道に銃声が響く。

 明らかに私を狙った弾丸はわずかに外れ私のそばを掠めました。


 ー新手の英霊使いねー


 予想していた、転移直後の襲撃。

 私はフェンサーに送り込むマナの量を増やし周囲を警戒する。

「転移したばかりの者を狙う手口でしょう。銃を使うということは、アーチャーですか?愚かな…」

 私は周囲を警戒しながら、敵を探す。

 目を閉じ、マナを探知する。

 英霊探知、という英霊召喚術の基礎的な技術です。

「居た!フェンサーッ!」

『承知!』

 私は探知先に向け駆け出す。


 私が、アーチャーと思われる英霊に牽制射撃を受けたその頃。山に入り込んでいた人影が居たようです。

 年のころは16程の少年。背が高いですね、おおよそ185cmくらいでしょうか?

「何だ?銃声?行ってみよう!」

 少年は銃声を聞き、音のした方に向かっていく。

 この少年と私の出会いが、彼の運命を大きく変えてしまうのですが、それはもう少し先のお話。

 まさか、あんなことになるなんて…



 山道を軽快に走る私。

 着物は着ていますが、動きの馴れというのは大したもので、この程度の動きは容易いのですよ?

 間を明け、私を狙う銃声が響きます。

 それらの弾丸は全て私の側を掠めていきます。

「フェンサー、相手の位置の特定は?」

『おおよそ』

「分かりました。では、仕掛けなさい!」

『承知!』


 転移早々ですが、戦いが始まります。

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