第3話 ボーイ・ミーツ・美女
俺の意識は混濁していた。
午後の授業だから眠たさMAXということもある。
だけど、今日はちょっぴり違う。
最近、俺の通う高校の裏山が荒らされている。
高校とは小学校が併設されており、裏山は子供達のかっこうの遊び場だ。
まー、俺もこの裏山で育った一人な訳だが。
子供の頃から玩具の銃で山中でごっこ遊び。
それが功を奏したのか、俺はすっかり「銃」というものに魅了され、今では高校で、これまた珍しい「射撃部」に所属している。
腕前は、まあ、『それなり』だ。
おっと、挨拶が遅れたな。
俺の名前は「鈴木
どこにでもいるいたって普通の、部活に撃ち込む、年頃の男子高校生だ。
裏山が気になり、授業をバックレて裏山に来ていたんだけどなぁ…
気が付いたら、裏山公園のベンチで寝てたんだよなぁ…
それに、なんか足にやたら良い巾が包帯のように巻かれていたんだよなー。
ケガしたかな、俺?
混濁する意識の中、必死に思い出そうとする、俺。
ふと、脳裏によぎる。
どエライ美人のお姉さんの顔。
黒く艶やかな髪で、雪の様にに白い肌。唇には紅が塗られていた。
そのお姉さんが何か言ってる。
何か、切羽詰まった感じだな。
口をパクパクして、俺に何かを聞いてるな。
その後、お姉さんは小刀みたいなの取り出して自分の手首切り出した。リストカットかよ、お姉さん。
そこから流れる血を俺に飲ませようとしていたみたいなんだが、俺はうまく飲み込めない。
お姉さんは手首から流れる血を自分の口に含み、何かの液体の入った瓢箪みたいな水筒を取り出して、その中身を自分の口に含む。
そして、1ミリの躊躇いもなく、俺に、
俺の
そう、俺の
口に自分の口を重ねてきた。
うん。
口と口を重ねる。
ッ!?
これって、
き、
きききき、
ききききききききき…
キスか!!?
超美人のお姉さんが、俺に、き
き、
ききき
キスした!!!、!?!!!!!
「起きろ~!!馬鹿、哉牙!!!!!!」
そんな、朦朧とした意識を切り裂く、金切り声。
そこには、背は低いけど声はデカイ、胸もデカイ、態度もデカイ、デリカシーもない、男勝りな俺の幼馴染みの女がいた。
名前を『
まー、こいつとは切っても切り離せない腐れ縁だ。
決して、幼馴染みではない。
物心着いた時から一緒にいるが、決して幼馴染みではない。
大事な事だ、テスト出るからな!
幼馴染みの女の子ってのはもっとこう…
「もっとこう、何よ?」
「いや、もっとこう、可愛くってだな。それでいて、おしとやかなんだが、無駄に理想が高くて、家が隣にも関わらず、『一緒にかえろうぜ』とかいうと『変なウワサとかされると困るし』とか言いながら断ってきて、それでいて、他の女の子と仲良くしてると変にヤキモチを焼いたりする女の子の事を言うんだ!」
そこまで言うと茜音は俺に拳骨を食らわす。
「バッカじゃないの!そんな女の子居るわけないじゃない!」
こんなやり取りはまさしく日常茶飯事だ。
「ほら!部活行く!」
何だかんだ言っても、この茜音も同じ射撃部だ。
子供の頃から俺たち男に混ざって射撃遊びをしてきたからだな。俺程ではないが、腕は良い。
「な~、茜音」
「何よ」
「変なこと聞くけどよ」
「うん」
「俺、午前中、バックレてたよな?」
「は?ま、まぁ、いなかったけど、また!?」
「単位はちゃんと計算してあるから心配すんな!」
「そういう問題じゃないんだけど、だから何?」
「いやー、間違いないと思うんだが…」
「思うんだが、何よ?」
「俺、超美人のお姉さんと、キスした」
顔を真っ赤にする茜音。
「ば」
「ば?」
「ばっっっっっかじゃないの!妄想もいい加減にしたら!このノッポなだけの童貞野郎!」
「うるせえ!確かにしたんだよ!柔らかな唇の感触だって残ってるんだよ!嫁の行き先もない乳と態度だけデカい、がさつなだけの処女女に言われたくねえ!」
回りの生徒たちは「おっ、また始まった」という感じで俺たちを見る。
この手の口喧嘩も、この学校ではもはや迷物となっている。
そんな俺たちに、というか俺に遥か遠くから視線を送っている人影があった。
最も、俺には知る由もねぇんだけどな。
『あの少年は大丈夫な様ですな。マスター』
「ええ。無事でよかった」
1人はどエライ美人のお姉さん。もう1人は、姿がよく見えない。
「しかし…」
『しかし、如何致した?マスターよ』
「何と、賑やかな…」
俺たちの様子をお姉さんは目を細め嬉しそうに眺めていた…
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