第2話 永緒 綾

「永緒 綾。入ります」

 私は、この保護区の指令部へと足を運んでいました。

 この保護区は言うなれば日本最大級のもの。

 元々の地名で言えば東京都千代田区周辺に当たるそうです。

 皇居、つまり江戸城を護るために張り巡らされた呪いが霊力を高め、潤沢なマナの恵みを与えてくれています。

 流石の私も緊張を隠せないお歴々が待ち構えていました。

 内閣総理大臣をはじめとする閣僚の方々。

 マナテクノロジー協会のドン。

 英霊召喚師の総括。

「永緒綾君。君は重大な任務に推薦された。それは理解していますね?」

 お偉いさんが口を開く。

「はい」

 結構。と、いわんばかりに頷くお歴々。

「では、ステータスの開示を」

「はい」

 この地球では人々にはステータスが当てはめられる。

 マナテクノロジーの応用である。

 地球に住む人間には生まれたときに少量のマナを体内に投与されるのだ。マナテクノロジーに対する適正を高める為である。

 ステータス開示も体内のマナを反応させるものであり、誰でもできる。

 私は自身のステータスを開示する。


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永緒 綾 28歳 AB型


腕力:C 敏捷力:B 知力:A 精神力:S マナ適正:A+


スキル

英霊召喚術:A 治療術:A 剣術:B 騎乗:B 医術:A

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 年齢が公開なのは如何なものかと思いますが…

その他、本人も見れない1部の方しか見れない非公開のパラメーターもあるようです。

 「ふむ。悪くないステータスですね。それに、功績も申し分ない」


 「では、続けて英霊を」


 私は返事をし、自身の英霊を呼び出し、ステータスを開示する。


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クラス:フェンサー

筋力:A 敏捷力:C 知力:B 精神力:A マナ適正:D

スキル

剣術:S 騎乗:S 指揮能力:A 加護:S

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 「ふむ。フェンサーとしては高スペックだな」

 「後はどの様な『霊具アーティファクト』を所持しているのか、だな」

 お歴々が私を見ます。

 「フェンサーですから、武器の霊具を所持しております。あとは、皆様方といえどもおいそれと話せません。ご容赦を」


 霊具アーティファクトとは英霊の象徴そのもの。英霊の正体を明かす鍵になるものです。

 所帯が明かされる=英霊の弱点も知れる。

 故に、霊具の存在は話せませんし、英霊をクラス名で呼ぶのです。


 ここで英霊について説明しましょう。


 英霊の特性により以下のクラスに分けられるます。

 ・フェンサー

「剣」に対して色々な伝説や逸話を持つ英雄達。名剣を所持していたり、剣術家であったりなど。

英霊例 宮本武蔵、沖田総司、アーサー王、ローラン、ジークフリード等


 ・ランサー

「槍」に対して色々な伝説や逸話を持つ英雄達。名槍(長物)を所持していた、等

英霊例 本多忠勝、クーフーリン、ルー、関羽、ロンギヌス等



 ・アーチャー

「弓」に対して色々な伝説や逸話を持つ英雄達。弓や銃、飛び道具等の武器を所持していた、等

 英霊例 那須与一、明智光秀、板額御前、ロビン・フッド、黄忠等


 ・ファイター

 剣、槍、弓以外の武具(斧、鎚、徒手等)を扱った英霊達。

 英霊例 坂田金時、雷電、トール等


 ・ライダー

 名馬などを所持したり、著しく馬上戦闘能力が高く、活躍をした英霊達。

 英霊例 馬超、趙雲、源義経、チンギス・ハーン、グレイス・オマリー等


 ・キャスター

 魔術等の呪い事に長けたり、逸話や伝説を持つ英霊達。

 英霊例 安倍晴明、マーリン、諸葛亮、ラスプーチン等


 なお、英霊達の解釈はかなり広い範囲におよび、複数クラスに該当する英霊達も存在します。

 たとえば、関羽という武将をご存知でしょうか?

 青龍偃月刀(という長物)を持ち、名馬赤兔を所持していた関羽はランサーにもライダーにも該当す可能性がある訳です。

 私のフェンサーも騎乗スキルが高いわけですから、ライダーとして召喚された可能性も大いにあったということですね。

 

 「さて、永緒君。君にはに行ってもらいます」

 「そして、その地球からマナを送り込むのです」

 「マナを送り込む方法は限られておる。その方法は…」

 ・高いマナのある場所や存在を破壊する。

 ・マナを溜め込んでいる混沌を撃破する。

 ・別の英霊使いの英霊を倒す(昇華と呼びます)。

 「以上の3つの方法である」


 事前に説明は軽く受けていたものの、もう一つの地球に対しての破壊活動だったり、別の英霊使いとの戦いなど、普通の行為ではありません。

 何故、英霊達の戦いが必要なのか。

 英霊が打ち倒され世界に昇華される際に、英霊自身が溜めたマナエネルギーが世界に還元されるからなのです。

 別の地球で、昇華が起こっても此方の地球のマナに還元されることが確認済み。どの様な理論なのかは存じませんが…

 「事は急を要します。行ってくれますね?」

 私は二つ返事で回答する。

 「よろしい。この地球には戻れることはない。別れを告げる相手はいるか?」

 いいえ。

 「宜しい。では、中央の転送円の中に立ちなさい。」

 私は、ためらうことなく 転送円の中に入る。

 私には失うものは、何もありませんから…


 こうして私は、別の次元の地球に転移することになるのです。

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