夕方
夕方になると、ルノの家へ訪問にいった。確かに以前よりは打ち解けた感じだったが、件のゲフィとナッチ話を持ち出すと
「まあ、どこでもそういうのはありますから」
と何かをかくすようにごまかした。それで結局その日は収穫はほとんどなく終了した。
翌日から街の中心でも調査をはじめた。街の人たちは以前よりは少し話してくれるようになったがやはり排他的な面が否めなかった。大火災の事についても、皆話したがらない。
「もう終わったことだ」
というばかり、結局らちがあかず、その日は昼から息抜きにルノの公演をみにいくことにした。ルノは、郊外近辺のストリートパフォーマ―達が集まる“ストリートガーデン”という草木の生い茂る、この街の郊外や地下、地上とが交錯する街運営の公園の、常設ステージにて、歌を披露しているという。このステージに上がれるのはストリートパフォーマ―の中でも得に優れたものたちばかり、ルノは、その歌声を高く評価されている。
ルノの歌が始まるのは、ちょうど正午すぎ、それまでに場所を確保し、コンビニで食事の用意をし、チケットを買い、二人は、中央付近の座席を確保した。チケットが必要なのは座席付きの場所だけで、公園で立ってみる分にはお金は必要ない。そのあたりもこのストリートガーデンの良いところなのだろう。ここにはほとんど身分の差は存在しないように、それらがまるで混然一体として溶け合う場所だった。
少し早めについていたのでルノの前のパフォーマーの公園も見る事ができた。踊り、大道芸、歌、劇、パントマイム、どれもすばらしく、街のエンタテイメントとそん色はなかった。なによりもここには、ひとびとが溶け合う場所ならではの熱気があった。観客たちがパフォーマーの名を呼び応援する。彼らはここで、ちょっとしたヒーローなのだ。たしかにここで愛されているのだろうという感覚を感じられた。
「ルノは、だからここを選んだのね」
「?先輩?」
やがてルノの登場する時間になった。ソワソワするクラノ、エランもなんだか、不安や興奮が心の中にあった。いつのまにか彼女へそれだけ感情移入していたのだろう。
「~~」
無音のまま登場する、だがその優雅な立ち振る舞い、きらびやかなひらひらとした踊り子のような半透明の衣装、すべてが非日常のようで、観客のだれも一声も発しなかった。彼女が口を開くまでは。
「~~♪」
彼女の歌は、彼女のハミングからはじまった。徐々に伴奏が始まり、彼女は踊りながら、徐々に意味のある言葉を口ずさむ。
亜人保護人 ボウガ @yumieimaru
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