露店

 それからしばらくして5人は露店前に集まり、軽食をとりつつ、話を進めていた。カイ「大火災かあ、確かにこことあの地区は近いし、よく覚えているよ

デイ「うーん、確かに違和感があったのう、出火原因があいまいだったり、金の流れが変わったり」

エラン「ん?詳しく」

デイ「そうじゃの、街の中にはスラムに盗品やらをうって悪いことをする奴もおる、おかげでこちらも稼ぎを得られるなかまもおるんじゃが」

クラノが、嫌な顔で彼をにらむ。

デイ「う、なんじゃ……生きていくために仕方なかろうて、ともかく一番かわったのは“王子”じゃな……」

チサが、目を光らせて反応した。

「“王子”か……たしかに最近悪行を聞かなくなりましたね」

「王子?本物の?」

 クラノが、とぼけたように口に人差し指をあて首をひねる。エランが意味もなく額にチョップをする。

「いたい、何するの!」

「いつの時代よ、何者かの愛称でしょ、どうせ」

 デイが答える。

「ああ、そうじゃ、王子ナッチあいつは旧貴族の末裔でな……いまでも裕福な生活をしているのだが、それに満足ができず、盗みを働いたり、街で喧嘩をふっかけたりやりたい放題じゃ」

 エランが、淡々と尋ねる。

「つかまらないの?」

「無理じゃ、なんでも、一族は莫大な富を使って何かあるたび示談ですませとる」

「たしかに怪しいわね、他にも何かわかったらおしえて、これ、連絡先」

 そしてエランは名刺を渡す。それから一同はわかれた。

「外堀はうめたわ、あとは、もう一息、聞き込みを続けるわよ」

 それから郊外から街の中央に戻り、聞き込みを始める。人々の態度はまだ半端なままだったが、ただ地下や郊外へでかけたという噂は広まっているようで、エランを見る人々の目が心なし関わっているようにクラノは思えた。

「先輩……やっぱり件の件は、ルノの一件は地下と関係があるのでしょうか」

「……はっきりとしたことはいえないわ、ただ、この街はもちつもたれつの関係があるのは確かでしょうね、誰かがそれを牛耳っている、この際善悪はおいておいて、ひとまず、ルノの事だけを考えましょう、この街の構造にまで口だしする事はないから」

「はい……」

 だが、やはり信用はなかなか得られず聞き込みは難航した。しかし夕方ごろになって、イナ、ルノの恋人から連絡がはいる。

「今いいですか?ルノとあの火災の前のことについて聞き込みをしたので、きいてください」

 電話でそういわれ、三人はとあるカフェで待ち合わせをすることになった。




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