トラブル

「先輩、先輩」

 3人は、郊外を調べてまわっていた。郊外はスラム寸前、治安もあまりよくないがなんとか市場やら、ストリートパフォーマンスだかで生計をたてる人が多い。その人々なら、まだ街の中心より情報が得られるとおもったのだが、だがルノに関する情報はあまり得られず、ここでも口の堅いこの街の人々に手こずっていたのだが、そんな時事件はおきた。

「ない、ないです」

「何が?」

「財布……」

 クラノは顔面蒼白、エランは頭をかかえた。

「あれだけ財布はもってきちゃだめっていったのに、持ってくるなら小銭っていったわよね」

「す、すみません……」

 もめる二人をよそにチサが当たりを見回す。

「あの人、あの人かもしれません」

「?」

 エラノが目をやるとはるか後方に手をポケットに入れてあるいている男がいた。

「チサさん、どうしてそう思うの?」

「不思議なほど近く私たちの傍を横切った男はあの人でしょう、私はすれ違う人の人相やら、しぐさを記憶してしまうんです、まあ、モグラとしての職業病のようなものが残っていて……」

 クラノは関心してお~と声をあげる。そのクラノの手をひいて、急いで走りはじめたエラン。

「いくわよ、大事なものでしょ」

「……すびません……」

 すぐに二人でおいかけることにした。チサはあとからいくといっていたし、信用していたのでエランとクラノだけで男を尾行する。幸い男は後ろをふりかえらずずんずんと進んでいく。入り組んだ通りにはいり、人通りのない路地裏にいくとようやく財布を確認した。

「ふむ、しけてんなあ」

「!!!」

 そういっての札を抜き取ると、男は財布を道端にすてた。

「あっ」

「……お仕置きしなきゃね」

 クラノが大事にしていた財布を捨てた。エランは自分の調査方法によってクラノがこんな目にあったのだと少し心が痛んだ。男がさらに奥にいくと、エランは建物の影から目でおい追跡していたが、クラノは道端におちた財布をひろいあげつぶやいた。

「お父さまからもらった大事なものなのに……」

 そうして落ち込んでいるクラノをみているとそれにきづいたクラノがエランにめをやる、そして、その背後をみていった。

「あ……あの男」

 エランがふりかえる、すると先ほどのスリをした男が数歩先の物陰からこちらをみていた。

「ばれた……」

 めずらしく間抜けな声と表情をしたエラン。急いで男をおいかける。男はすばやかったが、エランの全力の追跡にとうとう息切れをおこし、やがて袋小路においこんだ。

「く、くそ、まいった、まいったよ!!けど、あんたたちの仲間は?」

「?」

 とっちめようと右手に手をこめたエランが、不思議そうに男を見る。

「モグラに裏切られたんじゃないのか?よくある話さ」

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