静寂

 エランとクラノは、無事帰宅したその日、次の日を休みにすることにして眠りについた。エランはその日、夢をみた。

「いたい、やめてよ!!」

 高校の登校の最中、いじめられている一人の少女を見つけたエラン。背の高い女子たち数人にかこまれ、頭を覆い隠している。

「……」

 エランは友人と登校中だったが、いてもたってもいられず、いじめっ子たちに話かける。

「何してるの?」

A「あ?」

B「何って」

C「みてわかんねーのか?お前、たのしんでんだよ」

一同「ギャハハハハ」

 エランはまったく無表情で、その数人をみつめていた。

「あなたたち、ユーモアのセンスがないのね、だからそうして、人を傷つけることで全くない才能をごまかそうとしている、けど、すべってるわよ」

A「!!?」

 リーダーらしきAは一瞬とまどうと、舌打ちをして、エランの肩をつかんだ。その時だった。

「やめてください!!」

 その時、少女は顔を上げて、嘆願する。

「私が標的になれば、私のクラスのみんなをいじめないって約束です」

A「いや、こいつお前のクラスじゃねーだろ」

「いえ、でも……」

B「きいたか?おい、あんた、こいつと私らは契約して、いじめていじめられる関係なんだ、わかったら指図せず消えろ」

 エランは右手を大きくかかげて言い放つ。

「じゃあ、こうしよう、私がいじめられたら、私が標的、それでいいよね」

A「???」

B「!!?」

C「ぎゃはは、こいつアホですよ」

 だがエランは連中のしぐさにめもくれず、右手の手袋をとった。

 「弱きものを救う、それが祖母の教え」

 次の瞬間エランの右手から翼のようなものがはえ、そして手は鱗におおわれたその姿をあらわした。

A「やべえこいつ、亜人だ!!」

B「にげろ!!」

C「うおおおお」

A「おい!!ばか、何やってんだ!!」

 Aが制止するものの、Cは勢いよくエランにつっこんでいく。エランは、まるで動じずタックルされ、少しつんのめった。

C「!?」

A「なぜ抵抗しない?なぜ戦わないんだ?亜人なのに」

 エランは表情を変えずに言い放った。

「あなたたちはとてもよわい、弱い人間に、ツメをたてることができないからよ」

A「……」

B「……?」

一同「ぎゃははははは」

 やがて、Aが近づいていき、エランの肩に手を伸ばす。

「お前、おもしれーな、おい、望通りにしてやるよ……」

 そういってエランの頬をなぐった、しかしエランは戦おうとせず、ただ殴られる攻撃を右手のみでガードした。たしかに攻撃はきいていないようだったが、それを客観的にみれば立派ないじめにみえた。

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