収集

 とっさにクラノを助けようとするエランだったが、それよりも早く彼女をかばった人間がいた。ゴドだった。

 《ドサッ》

 ゴドは頭をこん棒でうたれ、そこに横たわる。イナが叫んだ。

「父さん!!何で!!!」

 目をつりあげ、殴った人間と、囲む大人たちをにらむイナ。

「な、なんだよ、もとはといえばお前が……」

 先にイナともめていた二人は、流石に焦りを顏にうかべた。

「まさか、ゴドをこんな目に合わせるなんて!!」

「に、逃げよう……ワシらも疑われたらたまらない……もうここには住めなくなるぞ!」

 そういって注クソ逃げてしまった。

「この野郎!!!ふざけやがって!!」

 ゴドを殴った男に殴りかかるイナ。それをクラノが制止する。

「私のせいです、やめてください、ここはなんとか、私たちの顔に免じて、ゴドを介抱したらすぐに地上に戻りますし、もし種族内のいざこざがあるなら、私たちも力になりますから、今は争わないで、ね?」

「!!!」

 イナは、顔をあからめて怒りに狂っていたが、諭されると、ため息をはいて、倒れた父親にかけより、頭に手をやった。

「とりあえず、傷は深くない、頭を殴られたことで害がなければいいが……ソーナ先生のところに運ぼう、亜人局のお二人、手伝って」

「はい!」

 クラノが勢いよく返事をすると、皆は意識をうしなったゴドを、医者の所へ運んだのだった。

「大丈夫だ、軽いけがですんだ、後遺症もないだろう」

 ソーナという医者が皆にそう告げると、イナは一番深いため息をついて、安心した。

「ありがとうございます!亜人局の皆さん」

「いえ……」

 無表情にエランが答える。その表情をよみとって、すこし困ったように笑うイナ。その視線を、ルノに向けた。ルノはため息をついて、両手を肩の位置にかかげてひらひらとさせ

「わかったわよ、邪見にしない、それに、もしかしたら手助けしてくれるかもしれないしね」

「じゃあ……」

 ルノに、イナの期待をこめた視線がそそがれた。

「ええ、亜人局の調査にちゃんと対応するわ、けれどこの街の人々は皆口が堅いから、苦労するわよ」

「……」

 クラノがびっくりして目を丸くしていると

「何よ、調査したくないの?」

 と不服そうに、ルノは腕組をするのだった。

「いえいえ」

 と訂正し、クラノは小声でエランに話しかける。

「これで地上に戻れますね……」

「ええ……問題がなければ地下に来る必要もなくなるわ」

「なければ……?」

「亜人と地下、あらゆる都市でそれらは深く結びついている、旧文明の“記憶”を持っているのは亜人だから」

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