事件

「イナ、私、いってくる」

「ルノ?まて……」

 慌ただしくソファから立ち上がるルノ。

「彼女には一度助けられたけれど、この街のことをあれこれ探られたくない、この街は、絶妙なバランスで保たれている、私がここにくるまでどんなに苦労して、一つの場所で信用を得ることがどれだけ大変か、よその何もしらない、私の事や私の人生を何もしらない部外者に、勝手に正義だの何だのもちこまれてひっかきまわされたくない……」

「おちつけよ……いって何をするんだ、相手は話をきくか?国の機関だぞ」

「あの人、クソマジメすぎるのよ、だって今まであんなに私のこと詳しく調べようとした人なんていなかった、この国は、建前と本音をうまくごまかしてやってるのに、あの人はまるで……をその調和を崩すみたい」

「なんだってそんなに毛嫌いするんだい?今だってかくれている必要なんてなかったんじゃないか?何か後ろめたいことでもあるの?」

「ないわよ」

 いいずらそうに、イナは口をおおってから、決意した用に尋ねる。

「でも、《あの時》の話なんて僕だってきいてない、一体何があって、皆が君を認めるようになったか、僕は……いまだに地位は低いが君はあのときまで―」

「いわないで……いいのよ、それは」

 少し気まずそうにしたあと、ルノは話をそらす。

「とにかくあの人達の仕事は、中途半端なのよ、面倒みるわけでもなし、親でもない、ただ体面上贖罪をしているだけ、この国だってそう、本当に後悔しているかなんてわからない、そんな中で私は、そんな世界で、味方をみつけるまで、過ごしやすい環境で味方を見つけるのにどんなに苦労したか、ある程度仲間意識がある空間じゃないと、人の意識はかわらない、ここはいいところよ、問題もあるけれど」


《ゴドン!!》

 エランたちのいる、ゴドの家の外ですさまじい音がした。

「何だ!!」

 ゴドが立ち上がり、玄関をひらく、エランたちもそちらに目をやると、玄関先で、もめている人影がみえた。

「やめて!!離して!!」

「ここは、我々ドワーフ族のとちだ、別の種族がのこのこときていい場所じゃない」

「そんな古い事ばっかりいってるから、いつまでも地下暮らしなのよ」

「なんだと!この小娘が!!」

「痛い目見せてやろうか」

 二人の男がルノの身動きを封じている。ルノは必至で抵抗している。

「やめろ、彼女を離せ!!」

 イナがきて、二人になぐりかかろうとする。

「おい!!いくらゴドのせがれだからって、仲間になぐりかかるとは」

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