ゴドの家。

「さあ、入って入って」

「はい、ではお邪魔します」

 そう返すとリビングに皆を案内し、ゴドという男は、すぐにお茶を持ってくるといってキッチンにたった。

 地下での事とはいえ、この街にきてから人に歓迎される事はなかったので、妙な気分と不安を抱えながら、3人は彼の家に招かれた。思えば地下にきてからあるき通しで、ちょうど昼食どきだろうか、これがおわったらどこかで食事をとろうと考えていると、クラノの腹が鳴ったので、ぷっと吹き出しながらそう説明した。

「おまたせ、散らかってってすまねえな」

「ああ、すみません気を使っていただいて」

「長居するつもりはないので、本当におかまいなく」

 とクラノも遠慮気味に答える。

「いや、いいんだ、俺としても少しあの二人の事について頼みたいことがあってさ」

「二人?」

「ああ、そうだな、説明してなかったな……多分こんな事を話している事がばれたらきっとあの二人に嫌われるだろうが、俺のせがれと、ルノって子がな、恋人同士なんだ、もっとも公にそういっているわけではなくこそこそとした関係なんだが」

「!?」

 ルノに恋人がいたなんてことは、情報として入ってきていない。特段意味のある情報でもないし、気にする事ではないが、問題は“亜人同士”という関係性だ。

「それは……もめごとになる可能性大ですね……」

「??どうしてです?」

 クラノがぽかんとしていった。エラノは頭をかるくかいて、小声で説明に回る。

「もともと亜人は仲間意識が強く、そして種族としての誇りも強い、一族としてまとまっている場合は特に、その上他の人間から厄介もの扱いされたり、ねたまれたりすることもあるのよ、そんな種族同士が子供をつくってごらんなさい、お互いの種族もそうだけど、人間からも疎まれる存在になるだろうって、警戒するのは当然で、昔から敬遠されるものなのよ」

「ああ、きにせんでいいよ、俺はもう“ソレ”は経験済みだから」

「ふむ……“ソレ”というと、つまり」

「ああ、ワシのせがれは、他種族、オニツノ族の母との子だ、彼女は若くして死んだが、美人だったよ」

「おおー」

 感慨深げに無遠慮にクラノが感動すると、その頭の天辺をエランがチョップする。

「それで、お願いというのは……」

「いや、わかるだろう、彼女と別れさせてほしいんだ、俺たちが味わった苦労をあいつらに味合わせたくない、それで、何か工夫してだな……金ならいくらでも……」

 ゴドはそこで少し悪い顔をするのだった。

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